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久遠の神話

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第三十話 二対一その九


「そしてその教育をですか」
「正しくします」
「それはいいことですね。応援したいですが」
「それでもですか」
「俺には俺の夢がありますので」
 だからだというのだ。
「貴方のその夢は適いません」
「では貴方はその為にも」
「貴方に勝ちます」
 他ならぬだ。彼にだというのだ。
「必ず」
「では今度ですね」
「はい、次の戦いにはです」
 どうかというのだ。その時にだ。
「貴方を倒しますので」
「わかりました。それでは」
 こうした話をしてだ。二人は今は別れた。そしてだ。
 広瀬は体育館の鍵を閉めた。そのうえで大学を後にする。その時にだ。
 また携帯で連絡をした。その相手に言うのだった。
「今日は御免」
「どうしたの?今日は」
「少し高校の先生と合っていたんだ」
「高校の先生?」
「八条学園のね」
 高代の名前は出さないがそれでも言うのだった。
「その人と会っていたんだ」
「そうだったの」
「男の人だよ」
「それはわかるから」
 笑ってだ。電話の向こうの相手は彼に返してきた。
「それはね」
「そう。だったらいいけれど」
「それじゃあ今日は仕方ないね」
「御免、埋め合わせはするよ」
「いいわよ、そんなの」
「いいんだ」
「ええ、いいわよ」
 こう広瀬に言うのだった。
「だから。また明日ね」
「うん、明日また会おう」
「そうしましょう。ところでね」
「ところで?」
「最近部活の方はどうなの?」
 電話の相手は広瀬の部活、乗馬部について尋ねてきた。
「そちらは」
「ああ、そっちね」
「毎日通ってるわよね」
「部活のある日はね」
「馬って世話とか大変よね」
「うん、それはね」
 その通りだとだ。広瀬も答える。
「中々大変だよ。けれどね」
「けれど?」
「面白いからね。馬は」
「馬ね。私はね」
「馬は嫌いだったかな」
「嫌いじゃないけれど馬よりも」
 それよりもだというのだ。
「牛の方が好きなのよ」
「ああ、そちらの方が」
「だって牛って可愛いじゃない。あと犬も」
「うん、それはそうだね」
「それに猫も」
 相手はそうした動物を次々と挙げていく。
「そうした動物の方が」
「俺も牛は嫌いじゃない」
 広瀬は実際に牛も嫌いではない。そのつぶらな瞳に大きな身体、そして心優しい性格も好きなのだ。尚食べることも嫌いではなかったりする。
「そして犬も猫もな」
「広瀬君動物自体が好きよね」
「特に馬がな」
「私は特に牛が」
「馬と牛で別れるな」
「けれど。いいわよね」
「何度も言うが動物自体が好きだ」
 広瀬は実際に再びこう答えた。
「だからどちらでもな」
「じゃあ明日牛を見る?」
「この学校でか」
「ええ、そうしない?」
「わかった。では明日だ」
「明日農学部でね」
「牛を見ようか」
 広瀬は笑顔で電話の向こうの相手に言った。そしてだった。 
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