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久遠の神話

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第三十話 二対一その八


「しかしそれでもだ」
「貴方程ではない」
「そうだというのですね」
「そうだ。だがそれでも私は戦う」
 二人とそうするというのは変わらなかった。
「そして生き残るのは私だ」
「では。次までにです」
「私達も強くなっておきますので」
「強い相手を倒せば倒すだけだ」
 どうなるかというのだ。
「剣士は強くなるからな」
「しかしなのですね」
 広瀬がその権藤の声に言った。
「貴方は強くなることは目的ではないですね」
「私は首相になる」
 この野心をだ。権藤はここでも言ったのだった。
「だからこそだ」
「勝ち残られますか」
「そうですか」
「そうだ。だが今はもう戦わない」
 それは守るというのだ。
「私は言ったことは守る」
「それが一流の政治家だからですか」
「一流の。英雄となる政治家はだ」
 どうかというのだ。そうした政治家ならば。
「嘘を言う時をわきまえているものだ」
「では今は嘘を言う時ではない」
「先程のお話の通りですね」
「そういうことだ。ではだ」
 それではと言ってだ。権藤の声は。
 完全に消えた。後は夕暮れの体育館の中で広瀬と高代だけが残った。
 二人はまだ戦おうと思えばできた。だが、だった。
 二人共その手の剣を消してだ。そのうえで話すのだった。
「では、今日は」
「終わりですね」
「俺は力を使い過ぎました」
「私もです」
 どちらも同じだった。限界が来ているという意味では。
「ですからこれで」
「帰りますか」
「しかし今度は違います」
 広瀬は高代の穏やかな笑顔のその目を見ながら言った。
「今度はです」
「私を倒すというのですね」
「何度も申し上げている通り」
「わかりました。それならです」
「貴方も俺と同じことを言いますね」
「私もまた戦う理由があるので」
「理想の学園を築き上げる為に」
「教育とは何か」
 こうした話もだ。高代はした。
「それは国家の心です」
「国のですか」
「つまり日本のです」
「では日本を正しくする為にも」
「はい」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「その為にもです」
「貴方は理想の学園を築かれるのですか」
「日本の教育は間違っています」
 確かな顔でだ。高代は言うのだった。
「日本の為になるかといいますと」
「なりませんね」
「はい、全くです」
 そうならないというのだ。
「だからこそです」
「その教育を正されるのですか」
「そうしたいと思っています」
「俺も今の日本の教育は間違っていると思います」
 広瀬にしてもだ。そう考えているのだった。
「あれはとてもです」
「日本の為にならず」
「何よりも学生の為にもなりませんね」
「はい、何もかもがおかしいと思います」
 広瀬もだ。そう見ているのだった。 
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