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戦国異伝

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第六十七話 将軍の最期その三


 そしてだった。三人衆にあらためて問うのだった。
「では。攻められますな」
「うむ。そうしようぞ」
「そうあるべきじゃな」
 三人衆は虚ろな声で答える。かくしてだった。
 彼等もだ。松永と共に御所に向かう。それを見てだ。
 兵達はだ。驚いて言うのだった。
「何っ、攻めるのか!?」
「公方様を攻めるのか」
「まことか。殿様達は」
「そうされるのか」
 彼等もまさかと思った。それでだ。
 半信半疑のまま都に向かおうとする。その彼等にだ。
 三人衆がだ。こう告げるのだった。
「皆の者遅れるな!」
「攻めるは御所ぞ!」
「御所を攻め落とせ!」
 やはりだった。兵達にもこう叫ぶ。
「公方様の首を取れば褒美は思いのままじゃ」
「しかし退く者は斬る」
「わかったら行くのじゃ」
「おい、斬られるらしいぞ」
 彼等の言葉を聞いてだ。兵のうちの一人が怪訝な顔になる。
 そうしてだ。こうも言うのだった。
「信じられんがじゃ」
「うむ、そうじゃな。どうも殿達も本気じゃな」
「ならば仕方がないか」
「御所にのう」
「攻めるとしよう」
 こうしてだった。彼等もだ。 
 都に入り御所に向かう。そのことはだ。
 すぐにその二条御所にいる義輝にも伝わった。それを聞いてだ。
 彼はだ。まずは不敵な笑みを浮かべだ。こう言うのだった。
「さすればじゃ」
「はい、今よりですな」
「戦の用意を」
「いや。それはもうしておる」
 こうだ。僅かに残った、親も兄弟も妻子もおらずだ。そしてあえて志願して残った臣の者達にだ。こう告げるのだった。
「ここに来るまではまだ時間があるな」
「はい、少しですが」
「それはまだ」
「さすればじゃ。宴じゃ」
「宴ですか」
「それを開かれますか」
「うむ、皆飲め」
 まさにだ。最後の宴だった。
 それをする様に命じてだった。すぐにだ。
 集められたその酒にありったけの馳走を飲み食いしながらだ。義輝は幕臣達に告げた。残っているのはほんの三十人程だ。
 その彼等にだ。義輝は言ったのである。
「わざわざ命を捨てずともよいだろうに」
「ははは、それは公方様も同じです」
「そうなるかと」
「ふむ。そうじゃな」
 そう彼等に言われてだ。義輝はだ。
 顔を崩して笑いだ。こんなことも言った。
「わしもあえて残るのじゃからな」
「我等も同じです」
「あえてです」
 残るとだ。返す彼等だった。
 そのうえで酒に馳走を楽しみながらだ。彼等はこんなことも言った。
「我等は三十程」
「それに対して三好と松永は幾らいるかわかりませぬ」
「この御所はすぐに囲まれましょう」
「ですがそれでもです」
「うむ、最後まで見せてやろうぞ」
 どうするかと語る義輝だった。
「我等の意地に戦をな」
「はい、さすれば」
「我等もそうさせてもらいます」
「最期の戦を」
 こんなことを話しながらだ。彼等はだ。 
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