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戦国異伝

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第六十七話 将軍の最期その四


 末期の宴を楽しみだ。そのうえでだ。
 剣に弓矢を手にした。義輝はというと。
 これまで集めた刀をだ。己が陣取る部屋の畳に全て突き刺しだ。 
 そのうえで刀達の前に立ちだ。敵を待っていた。
 その彼にだ。既に刀や槍を手にしている幕臣達がだ。怪訝な顔で問うたのだった。
「あの、その刀達は一体」
「何故そこまで突き刺されるのでしょうか」
「刀をそこまでとは」
「知れたこと。刀で人を斬ってもじゃ」
 人を斬ることが刀だ。しかしだというのだ。
「何人かで終わりじゃな」
「確かに。刀は数人斬ればです」
「それで血糊や脂が付いて斬れなくなりまする」
「だからこそですか」
「そうして刀をそれだけ」
「このわしの剣の腕を見せてやる」
 こんなことも言う義輝だった。
「だからこそじゃ」
「では公方様思う存分にですな」
「戦をされますか」
「無論じゃ。これで最後じゃ」
 それならばだ。余計にだった。
 敵を一人でも多く斬ろうと決意していたのだ。その義輝がいる御所にだ。
 遂に三好と松永の軍勢が来た。彼等はすぐにだ。
 御所を取り囲みだ。そのうえでだ。
 攻めんとする。その中でだ。松永が三人衆に話してきた。
「さすればです」
「今よりじゃな」
「御所を攻め落とし公方様を」
「そうするのじゃな」
「左様です。我等の敵を」
 怪しい笑みを浮かべてだ。言う彼だった。
 そうしてそのうえでだ。三人衆にこうも囁くのだった。
「では」
「うむ、火矢を放て」
「そして御所の中の者達を皆殺しにせよ」
 三人衆がこう兵達に告げる。彼等は御所を十重、二十重に取り囲んでいる。最早蟻一匹通れぬ様な状況だ。その状況でだ。
 三人衆は命令を下した。それを受けてだ。
 兵達は火矢を放つ。するとだ。
 御所に次々に火が点きだ。忽ちのうちに燃やしていく。しかしだ。 
 御所の者達は怯まずにだ。敵に弓矢を放つ。それでだ。
 三好の兵を何人か射抜く。それを受けて倒れる者もいる。
 だがそれを見てもだ。松永は馬上からこう言うのだった。
「ではこのまま」
「はい、それではです」
「全軍を挙げて」
「幾ら死のうとも」
「公方様の首を取れば褒美は思いのまま」」
 三人衆に対するのと同じ様にだった。松永は言いだ。
「さすればよいな」
「はっ、では」
「今より」
 こうしてだった。火矢の後はだ。普通の矢も放ちそのうえでだ。
 斬り込む者もいた。しかしだった。
 その彼等にだ。幕臣達は決死の顔で向かいだ。
 次々に倒していく。そして義輝もだ。 
 敵を待っていた。彼等が来るのを。そして遂にだった。
「おられたぞ!公方様じゃ!」
「公方様を倒せば褒美は思うのままぞ」
「その首わしが貰った!」
「いや、わしじゃ!」
 こんな話をしながらだ。彼等は一斉にだ。
 義輝のいる部屋に向かう。そして襖を開け。
「おられたぞ。ここじゃ!」
「よし、わしじゃ!」
「いや、わしが!」
 欲丸出しでだった。
 義輝に襲い掛かる。しかしだった。
 義輝はその彼等にだ。剣を振るう。
 まずは一人だ。首を半分断ち切られだ。
 血を噴出し背中から倒れる。そしてだ。
 一人が唐竹割りにされる。陣笠ごと斬られたのだ。 
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