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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―恐竜との決闘―

 
前書き
テスト(色々と)終了 

 
 ナポレオン教頭による、三沢のタレント化計画は三沢本人が苦笑いと共にお断りした為に終焉を迎えた。
……いや、元々無理がある企画だったしな。

 たまに三沢をからかう為のネタを提供しただけで、この件は忘れられていった。
ナポレオン教頭は読みが外れてご愁傷様、というかまずは人選ミスだろう。

 閑話休題。

「……《ターボ・シンクロン》か」

 遂にシンクロ召喚と、それに関係するチューナーなどが収録された新しいパックを買ってみたところ、思いっきり持っているのを引いた。

 ……時に、シンクロ召喚が実装され、充分以上のデータが集まったことにより、俺のテスターとしての仕事は終わりを告げた。
セブンスターズやら何やらで、俺が気絶していたことも手伝ってあまりシンクロ召喚のテストなどが出来なくて、《機械戦士》を送ってくれたペガサス会長には、正直言って申し訳なかったのだが、明日香と三沢に手伝ってもらってなんとか報告書を作り上げたものだ。

 しかし、一応テスターであったからか、シンクロ召喚に関係する物を見ると妙に感慨深かったりする。

 ターボ・シンクロンを始めとして、あまり狙ったのは出なかったものの、五枚のカードを大事にポケットに入れる。

「さて、と」

 これから十代にちょっとした用事がある。
十代ならオシリス・レッドの寮の近くにでもいるだろうし、いなくても翔あたりにでも聞けば分かるだろうと当たりをつけ、俺はオシリス・レッド寮に向かった。



 ……相変わらず、デュアル・アカデミア本校舎から無駄に遠い道のりを歩き、赤色だらけのところから十代がいないかを探しだした。

「おーい! 遊矢!」

 ……どうやら、こちらが先に見つかったようだ。
寮の階段の近くで、大声を出して手を振る十代を見つけ、そちらの方へ小走りで駆けだした。

「よっ、遊矢」

 いつもと変わらず元気に笑いかけてくる十代に、その隣にいるのもいつもの通り……

「誰ザウルス?」

 ……じゃなかった。
改造してあるラー・イエローの制服姿に、 黒い肌の巨漢……翔が最近ラー・イエローに昇格したとしも、断じて突然変異したとしても、翔に似ても似つかぬ男だった。
……お前こそ誰だ?

「ああ、そういや遊矢は初めてだったな! こいつはティラノ剣山って言って、かなりデュエルが強いんだぜ!」

「へぇ……俺の名前は黒崎遊矢。名前で呼ばれる方が好きだから、遊矢って呼んでくれ」

 十代の紹介に習って、俺もそのティラノ剣山に挨拶をする。
同級生にも先輩にもこんな奴がいた記憶は無いので、恐らくは後輩だろう。

「オレは十代のアニキの真の弟分、ティラノ剣山だドン。こっちこそよろしくザウルス! ……ん?」

 その特徴的な口癖を遺憾なく発揮しつつ、十代の真の弟分だという自己紹介をされ、なんとなく、十代がまた面倒くさいことをしたのだと悟った。
翔が最近、機嫌が悪そうだったのはこいつが原因か。

「アニキ。黒崎遊矢ってことは、十代のアニキが強いって言ってた黒崎遊矢かドン?」

「おう、あのカイザーに《機械戦士》で勝つぐらい強いんだぜ!」

 人のことを、尾ひれを付けて勝手に話すなよ十代。
亮とデュエルしての勝率なんて、たかが三割ぐらいだ。

「またまたアニキ。流石にそれは冗談が過ぎるドン! 《機械戦士》であのカイザーに勝つなんて、無理に決まってるザウルス!」

 ……なんだと?
十代の話を笑い話だと受け取ったティラノ剣山は、そのまま同じ勢いで語りだした。

「シンクロ召喚があるならまだしも、去年カイザーがこの学園にいた時にはまだ発売して……」

「おい」

 ティラノ剣山の肩に手を起き、十代との話を中断させる。
もっとも、話し相手の十代は冷や汗を流すだけだったが。

「何ザウルス?」

「デュエルしろよ」


 そんなわけで、用事が済んだら十代とデュエルでもしようとデュエルディスクを持って来ていたのが幸いして、俺とティラノ剣山は、オシリス・レッドのデュエル場で向かい合っていた。

「お前、さっき『シンクロ召喚があるならまだしも』って言ったよな?」

「あ、ああ……言ったドン」

 何か怒らせるようなことを言ったかと、対面のティラノ剣山は頭を捻っている様子だ。
確かに俺が《機械戦士》使いと知らないのだから、悪口を言っても仕方ないだろうが、これはもう意地の問題だ。

 エクストラデッキからシンクロモンスターを全て抜き出し、ポケットに入れる。
これで、今回はシンクロ召喚は無しだ。

「これで俺のエクストラデッキには、融合モンスターが一枚きりだ」

「……まさか、本当に《機械戦士》使いだったドン?」

 見た目に反して意外と察しが良いようだったが、ティラノ剣山もすぐにデュエリストの顔になる。

「だったらカイザーに勝ったって言うその実力に、勝たせてもらうドン!」

 あちらもデュエルディスクを展開させ、双方デュエルの準備が整った。

『デュエル!』

遊矢LP4000
剣山LP4000

 デュエルディスクに『先攻』と表示され、珍しさを感じながらデッキに手を伸ばした。

「俺の先攻。ドロー!」

 なんとなくデッキタイプは予想出来るが、まずは様子見といこう。

「俺は《ターボ・シンクロン》を召喚!」

ターボ・シンクロン
ATK100
DEF500

 さっきエクストラデッキからシンクロモンスターを抜いてしまった為に、ただの壁にしかならないが、様子見には充分だ。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「オレのターン、ドロー!」

 さて、どんなデッキだ……って、名前からして分かるのだが、期待を裏切ってくれないだろうか。

「オレはフィールド魔法、《ジュラシックワールド》を発ドン!」

 ティラノ剣山が発ドン……違う、発動したフィールド魔法により、辺りがオシリス・レッド寮から恐竜たちの世界に変化する。
……期待を裏切ってくれなかったな。

「このフィールド魔法により、恐竜さんの攻撃力と守備力は300ポイントアップするドン! 更に、《暗黒ステゴ》を召喚するザウルス!」

暗黒ステゴ
ATK1200→1500
DEF2000→2300

 恐竜にはあまり詳しくないが、ステゴザウルスと言えば比較的有名な恐竜である。
どんな恐竜かは知らないが……

「バトル! 暗黒ステゴで、ターボ・シンクロンに攻撃だドン!」

「リバースカードオープン! 《くず鉄のかかし》! 相手の攻撃を一度だけ防ぎ、再びセットする!」

 俺のカードから現れたくず鉄のかかしが、暗黒ステゴの突進を防いで再びセットされる。

「防がれたザウルス……ターンエンドン」

「俺のターン、ドロー!」

 エンドンって何だエンドンって。
さて、相手は予想通りの恐竜族デッキであった。
ハイパワーに惑わされなければ、やれる……!

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 三つ叉の槍を持つ機械戦士とターボ・シンクロンが揃ったため、戦闘破壊耐性を持っているスカー・ウォリアーといきたいところだが、あいにくとエクストラデッキには入っていない。

「マックス・ウォリアーに装備魔法《ファイティング・スピリッツ》を装備する!」

マックス・ウォリアー
ATK1800→2100

 装備魔法からマックス・ウォリアーに闘志が流れ込み、その攻撃力を300ポイントアップさせる。
そんなわけで、頼むぜアタッカー!

「バトル! マックス・ウォリアーで、暗黒ステゴに攻撃! 《スイフト・ラッシュ》!」

 マックス・ウォリアーがその三つ叉の槍を振りかざし、暗黒ステゴに狙いをつける。

「マックス・ウォリアーは、相手モンスターとバトルする時、攻撃力が400ポイントアップする!」

マックス・ウォリアー
ATK2100→2500

「だけどこっちも、暗黒ステゴの効果が発動するドン! 暗黒ステゴはその防衛本能によって、相手に攻撃された時に守備表示になるザウルス!」

 暗黒ステゴがその防衛本能(らしい)に従い、マックス・ウォリアーに攻撃される前に守備の態勢をとる。
だが、マックス・ウォリアーの攻撃力は、装備魔法《ファイティング・スピリッツ》によって暗黒ステゴの守備力を超えている。

 守備力が下がった暗黒ステゴに、マックス・ウォリアーの攻撃は防げず、そのまま戦闘破壊された。
代わりに、相手モンスターを戦闘破壊したことによって、マックス・ウォリアーの攻撃力・守備力は半分になってしまうが。

「暗黒ステゴの効果ぐらい知ってる。これで俺はターンエンドだ」

「オレのターン、ドローザウルス!」

 ドローザウルスって何だ、新しい恐竜みたくなってるぞ。

「くっ……《暗黒プテラ》を守備表示で召喚するドン」

暗黒プテラ
ATK1000→1300
DEF500→800

 ここで守備表示で出て来たのが、鳥獣族であるようなプテラノドンと呼ばれるタイプの恐竜だった。
ステータス自体は貧弱だが、なかなか面白い効果を持っている。

 ジュラシックワールドの効果によって、暗黒プテラの攻撃力はマックス・ウォリアーに勝ってはいるが、リバースカードに《くず鉄のかかし》があるために攻撃は出来ない。


「更にカードを二枚伏せ、ターンエンドだドン」

「俺のターン、ドロー!」

 これで剣山のフィールドは、守備表示の暗黒プテラとリバースカードが二枚。
どうやら守りを固めてきたようだ。

「元々の攻撃力を1800にすることで、《ドドドウォリアー》を妥協召喚!」

ドドドウォリアー
ATK2300→1800
DEF900

 妥協召喚される、斧を持った機械戦士。
ターボ・シンクロンをリリースして召喚しても良かったが、ここは壁に残しておく。

「バトル! ドドドウォリアーで、暗黒プテラに攻撃! ドドドアックス!」

「トラップカード《攻撃の無力化》を発動し、バトルを終了させるドン!」

 先陣を切ったドドドウォリアーの攻撃は、残念ながら時空の渦に巻き込まれて防がれてしまう。
攻撃のチャンスだったんだが、そうそう上手くはいかないか。

「このままターンエンドだ」

「オレのターン、ドローザウルス!」

 勢い良くカードをドローしたティラノ剣山が、引いたカードを見て顔を輝かせた。
何だ、そんなに良いカードを引いたのか?

「行くドン! 魔法カード《大進化薬》を発ドン!」

 ティラノ剣山が出した魔法カードから薬が中に入った注射器が飛び出し、暗黒プテラを刺した。

「大進化薬は、自分フィールドの恐竜さんをリリースすることで、レベル5以上の恐竜さんをリリース無しで召喚することが出来るドン! 進化せよ、《ダークティラノ》!」

ダークティラノ
ATK2600→2900
DEF1800→2100

 ただのプテラノドンに過ぎなかった暗黒プテラが、その名の通りに黒色に染まったティラノザウルスに進化する。
恐竜の中で、おそらくもっとも知名度があるだけあり、ティラノザウルスが目の前にいるというのは、それだけで凄い迫力だった。

「暗黒プテラは戦闘以外で墓地に送られた時、手札に戻るザウルス。更に通常魔法《テールスイング》を発ドン! 選択した自分フィールドの恐竜さん以下のレベルのモンスターを二体、持ち主の手札に戻すザウルス! いけぇ、ダークティラノ!」

 ダークティラノが勢い良く尻尾を振り仰ぎ、マックス・ウォリアーとドドドウォリアーの二体を吹き飛ばした。
その二体はそのままカードに戻り、俺の手札に帰還する。

「これで遊矢先輩のフィールドには、雑魚モンスターしかいないザウルス! バトル!」

 俺のフィールドには、守備表示のターボ・シンクロンがいる……が、確かダークティラノの効果の前では無意味……!

「ダークティラノは、相手モンスターが守備表示しかいない時、相手プレイヤーにダイレクトアタックが出来るドン! ターボ・シンクロンを無視して、遊矢先輩にダイレクトアタックザウルス!」

「くず鉄のかかしを発動!」

 一ターンに一度だけ攻撃を防ぐかかしが現れるが、剣山はこれを知っているはず。
ならば、もちろん対抗策もとっているに違いない。

「甘いザウルス! カウンタートラップ《魔宮の賄賂》を発ドン!」

 どこかから金を貰ったおっさんが、部下に命令させてくず鉄のかかしの発動を中断させた。
魔法・罠を両方止められる良カードではあるが、代償に相手に一枚ドローさせてしまうマイナス効果がある。
それをたがが一枚と考えるか、されど一枚と考えるか。

「前にパックで当てたレアカードだドン! くず鉄のかかしを無効にし、ダークティラノでダイレクトアタックを続行するザウルス!」

 ……魔宮の賄賂のことを考えている場合じゃなかった! ……ああ、どうせ俺は持ってねーよ!

「ぐあああッ!」

遊矢LP4000→1100

 ダークティラノの手痛い一撃に、初ダメージとしてはかなり痛い一撃を貰う。

「これが恐竜さんの力ザウルス! ターンエンドン!」

「俺のターン、ドロー!」

 さて、先輩たるもの後輩のライフを1ポイントも削らないまま負けて良いものか……いや、それはない。

「速攻魔法《手札断殺》を発動し、二枚捨てて二枚ドロー!」

 テールスイングでマックス・ウォリアーとドドドウォリアーが戻されたおかげで、ムカつくものの手札はまだ潤沢にある。
ありがたく手札を交換させて貰う……よし。

「墓地に送られた《リミッター・ブレイク》の効果を発動! デッキから守備表示で現れろ、マイフェイバリットカード! 《スピード・ウォリアー》!」

『トアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 相変わらずのコンボによって、デッキから守備表示で現れるマイフェイバリットカード。

「更に《ドドドウォリアー》を妥協召喚する!」

ドドドウォリアー
ATK2300→1800
DEF900

 これで俺のフィールドのモンスターは三体。
……これならば、あのダークティラノを倒してお釣りが来る。

「装備魔法《団結の力》を、ドドドウォリアーに装備する!」

 ターボ・シンクロンとスピード・ウォリアー、その二体がドドドウォリアーに力を集結させ、ダークティラノの攻撃力を遥かに超える。

ドドドウォリアー
ATK1800→4200
DEF900→3300

「ダークティラノの攻撃力を超えたザウルス!?」

「バトル! ドドドウォリアーでダークティラノに攻撃! ドドドアックス!」

 剣山の驚きの声をよそに、ドドドウォリアーが力が増したおかげで片腕でぐるんぐるんと斧を回し、遠心力をつけてダークティラノを一刀両断にした。

「ぐあっ……!」

剣山LP4000→2700

 剣山の恐竜族デッキも攻撃力が自慢のようだが、基本的に装備ビート気味である自分の《機械戦士》も攻撃力では負けていない。
まったく、ただの殴り合いのデュエルになってしまうようで気が進まない。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「ダークティラノの仇をとるザウルス! オレのターン、ドローザウルス!」

 さて、ダークティラノを破壊したが、未だ剣山の手札に高レベル恐竜族はいるか否か。
いなければいないにこしたことは無いのだが……手札的には、攻勢に出てくれたらとても嬉しいね。

「まだ恐竜さんは負けないドン! 通常魔法《大進化薬》の効果を発動!」

 前のターンで暗黒プテラをリリースして発動された大進化薬は、発動してから三ターンまでフィールドに残る。
最大三回までに使い回すことが出来ることが、他の進化薬に勝る最大の長所だろう。

「リリース無しで、《究極恐獣》を召喚するザウルス!」

究極恐獣
ATK3000→3300

DEF2200→2500

 究極恐竜ではなく、究極恐獣という名が示すように、自らを進化させ続けた為に、もはや恐竜には見えない……どちらかと言えば、化け物にも見えてしまうような外見をしている恐竜族の切り札級カード。

「更に《死者蘇生》を発ドン! 墓地から、《超伝導恐竜》を特殊召喚するザウルス!」

超伝導恐竜
ATK3300→3600
DEF1400→1700

 今度は姿形はまだ恐竜に近いものの、いたるところに機械を埋め込んであり、超伝導というシステムで動いているようだ……これはこれで、究極恐獣とは違う意味で普通の恐竜とはかけ離れている。
「これで攻撃力が3600と3300の最強の恐竜さんが揃ったドン! バトル! 《機械戦士》なんて踏み潰すザウルス! 究極恐獣は、まずはこのモンスターしか攻撃してはいけない代わりに、相手モンスター全てに攻撃が出来るんだドン! ターボ・シンクロン、スピード・ウォリアー、ドドドウォリアーの順番で攻撃! アブソリュート・バイト!」

 主の言うことを忠実に聞き、ターボ・シンクロン、スピード・ウォリアー、ドドドウォリアーの順番で食いちぎる。
ドドドウォリアーに装備されている《団結の力》も、他のモンスターから倒されてしまっては攻撃力が下がる他無い。

「くっ……」

遊矢LP1100→400


「これでトドメだドン! 超伝導恐竜で、遊矢先輩にダイレクトアタックザウルス!」

「それは通さない! 《ガード・ブロック》を発動し、戦闘ダメージを0にして一枚ドローする!」

 超伝導恐竜から放たれたレールガンは、俺の直前でいきなり消失する。
……なんとも心臓に悪い演出だな。

「トドメはさせなかったザウルスが、次のターンで超伝導恐竜の効果を使えば俺の勝ちだドン! ターンエンド!」

「俺のターン、ドロー!」

 超伝導恐竜は、自分フィールドのモンスター一体をリリースし、攻撃宣言を放棄することで1000ポイントのダメージを与える効果……確かに、引導火力としては充分以上の活躍が見込めるだろう。

「つまり……この俺のターンで決着をつければ良いんだな?」

「な……バカも休み休み言うザウルス! シンクロ召喚をして来るなら何が来るかわからないドンが、フィールドがスッカラカンの状態から《機械戦士》じゃ逆転なんて出来ないザウルス!」

 シンクロ召喚ならとは言うが、今この状況をシンクロ召喚でどうしろと言うのか。
まあ、シンクロ召喚を知らないみたいだし、仕方がないとはいえシンクロ召喚はそんな万能じゃない。

「なら見てるんだな……俺は、《スピード・ウォリアー》を召喚! ……来い、マイフェイバリットカード!」

『トアアアッ!』


スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 今度はリミッター・ブレイクの効果ではなく、きちんとした通常召喚……自身の効果が活かせるようにマイフェイバリットカードが現れる。

「スピード・ウォリアーに装備魔法《進化する人類》を装備! 俺のライフが下のため、スピード・ウォリアーの元々の攻撃力は2400となる!」

 なんとも久しぶりに、スピード・ウォリアーへ進化するエネルギーが集結する。
久しぶりとは言っても、この装備魔法はスピード・ウォリアーの効果を最大限まで活かせるカードだ……!

「バトル! スピード・ウォリアーは召喚したターンのみ、元々の攻撃力が倍になる! よって、攻撃力は4800!」

 スピード・ウォリアーの効果は元々の攻撃力を上げる効果のため、普段使ってもただ攻撃力が900上がるだけに過ぎない。
だが、進化する人類の効果によって、今のスピード・ウォリアーの元々の攻撃力は2400。
その倍で、4800……!

「くっ……だけど、それじゃ恐竜さんは倒せても、俺のライフを0には出来ないザウルス!」

 究極恐獣と超伝導恐竜の背後にいる剣山がその事実に気づき、腕を振りながら叫びだす。
確かに剣山のライフは2700で、二体の恐竜を倒してライフを0にする程の攻撃力を、スピード・ウォリアーは持っていない……今は。

「スピード・ウォリアーで、超伝導恐竜に攻撃! ソニック・エッジ」

攻撃宣言を受け、スピード・ウォリアーは超伝導恐竜へ向かう。
先程、剣山は『遊矢先輩のフィールドはスッカラカン』と言ったが、それは間違っている。
あの時、俺のフィールドには……リバースカードが一枚あった。

「リバースカード、オープン! 《攻撃の無効化》! 行われる戦闘を無効にすることが出来る! 俺は、スピード・ウォリアーと超伝導恐竜の戦闘を無効にする!」

「このタイミングでトラップザウルス!? ……って、え?」

 俺の発動したリバースカードに従い、超伝導恐竜へと向かっていたスピード・ウォリアーが立ち止まる。

「オレにダメージを与えられないカードに、何の意味があるザウルス!」

「意味がないカードなんて存在しない。速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》!」

 スピード・ウォリアーはただ止まっていただけではなく、力を溜めていたのだ……超伝導恐竜と剣山を、一撃で倒しきるために。

「ダブル・アップ・チャンスは攻撃が無効になった時に発動でき、攻撃が無効になったモンスターの攻撃力を二倍にし、もう一度バトルが出来る!」

 スピード・ウォリアーの攻撃力は4800。
ダブル・アップ・チャンスの効果により、更に二倍になるのだから攻撃力はもちろん……

「攻撃力……9600ザウルス!?」

「スピード・ウォリアーで、超伝導恐竜に攻撃! ソニック・エッジ!」

 最大限まで力を溜めた蹴りに、超伝導恐竜は手も足も出ず、一片たりとも残さずに消し飛ぶ。
そして、剣山のライフを削りきれないどころではないオーバーキルが、剣山を襲う……!

「うわあああっ!」

剣山LP2700→0



「負けたザウルス……」

 スピード・ウォリアーの一撃によりデュエルが決着し、ずっと階段の近くで歓声を上げつつ眺めていた十代のところへ戻った。

「まあそう気にすんなって! 負けて勝てって言うだろ?」

 十代の励ましにて剣山は少し持ち直し、俺の方へ向き直り。

「すまんザウルス!」

 いきなり謝ってきた……キッチリ斜め45度の、素晴らしい角度での謝罪だった。
……いきなり何なんだ。

「《機械戦士》を馬鹿にしてすまなかったドン……オレも、恐竜さんを馬鹿にされたら怒るザウルス……」

 ああ、なるほど。
外見やデッキと違って、ずいぶんこの後輩は礼儀正しいというか、常識人というか。

「ああ、もう良いよ。気にすんな」

「そうそう。そんなことより、俺とデュエルしようぜ遊矢!」

 ……この同級生は、少しぐらい後輩を見習ったらどうだろうか。
そう思いつつも、俺は笑いながらデュエルを受けて立つための準備をするのだった。
 
 

 
後書き
剣山とのデュエルでした。
倍プッシュだ……!
時にこの剣山、GX一、二を争う不遇キャラかと思っているのは自分だけでしょうか。
三沢や明日香、レイのような不遇キャラはいますが、彼らはその不遇っぷりからネタにされて愛されるにも関わらず、彼にはそれがない……!

中途半端に強く、中途半端な時期に出て、中途半端なポジションで、中途半端な存在感で、中途半端な寮……彼は、この二次では救われるでしょうか。
……十代の出番が少ない時点で察せることは、密に、密に。
……そろそろシンクロ召喚を使わねば……
では、感想・アドバイスを待っています。  
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