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久遠の神話

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第二十話 ハヤシライスその十五


「待ってるから」
「それじゃあ僕の方もね」
「上城君のお家にもなのね」
「うん、何時来てもいいよ」
 笑顔で述べる彼だった。そうしてだ。
 その話を受けてだ。樹里もだ。
 にこりと笑いだ。そして彼に返した。
「その時は美味しいお菓子持って来るからね」
「じゃあ僕はお茶を用意しておくから」
「ええ、その時もね」
「宜しくね」
 こうした話をして別れたのだった。この日はこれで終わりだった。
 そして次の日だ。また二人は一緒になってだ。
 そうしてだ。こんな話をするのだった。
「昨日のハヤシライスね」
「ああ、あれね」
「実はあの後お父さんにレシピ教えてもらったの」
 樹里は楽しそうに上城に話す。
「それで今度ね。私もね」
「ハヤシライス作るんだ」
「御料理は好きなの」
 樹里の趣味の一つなのだ。それもだ。
「もっともそれ以上にお洗濯好きだけれど」
「洗濯ね。確かに好きだよね」
「けれどそれでもね」
「そのハヤシライスをだね」
「作ってみるわ」
 微笑んで述べる樹里だった。そしてだ。
 上城にだ。こうも述べた。
「ただね」
「ただ?」
「隠し味で聞いたんだけれど」
「ハヤシライスの隠し味っていうと」
「赤ワインね。それだけれど」
「赤ワインがどうしたの?」
 その赤ワインについてだ。上城は樹里に尋ねた。
「やっぱりワインの種類とか?」
「そう、それが大事みたい」
「ううん、赤ワインっていっても色々だけれどね」
「その中でもハヤシライスに合う赤ワインが大事みたい」
「そういうことなんだ」
「そのワインも教えてもらったけれど」
 父のレシピにだ。それが書かれていたというのだ。
 その話からだ。樹里はこんなことを言った。
「安いワインでいいみたいなのよ」
「市販のあの料理用の?」
「そう、それ」
 そのワインでだ。いいというのだ。
 そしてだ。そのことからまた言う彼女だった。
「お父さん安くて美味しいっていうことにこだわってるじゃない」
「うん、そのことも話してたよね」
「それでなのよ。隠し味のワインもね」
「安いのでいいんだ」
「御料理は安くて美味ものでないといけない」
 こんなことも言う樹里だった。
「お父さんの信条だからね」
「それで隠し味のワインもなんだ」
「そういうことなの。それでね」
「うん、それでそのワインを使ってだね」
「ハヤシライス、作ってみるわ」
「頑張ってね」
「それで作る時はね」
 どうするか。笑顔で話す樹里だった。
「またお家に来てね」
「ええ、それじゃあね」
 こうした軽い話もしてだった。上城は樹里との時間を過ごしていた。戦いの合間の休息は今の彼にとって得難いものになっていた。まるで宝石の様に。


第二十話   完


                    2012・1・4 
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