久遠の神話
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第二十一話 聡美と高代その一
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第二十一話 聡美と高代
ふとだ。中田はだ。部活を終えてからだ。
何を思ったか乗馬部に向かった。そしてそこでだ。
広瀬のところに来た。丁度彼も部活を終えシャワーを浴びて帰路につくところだった。
その彼にだ。彼は微笑んで声をかけた。
「よお、元気そうだな」
「何の用なのかな」
少し怪訝な顔でだ。広瀬は彼に問い返した。
「俺に用ということはだ」
「闘うかっていうんだな」
「それなのかな」
闘いなら、と。言外に込めてだ。
そのうえでだ。彼は中田に問い返すのだった。
しかしだ。中田はだ。その広瀬に気さくな笑みで返して言うのだった。
「ああ、そっちはどうなんだよ」
「コンディションは今一つ」
あまり浮かない顔で返す広瀬だった。
そしてだ。彼はこう中田に告げた。
「だが君が望むならだ」
「闘うってんだな」
「そうするが。君はどうなのかな」
「いや、俺も昨日怪物の相手をしてな」
「それでか」
「少し力を使い過ぎてな」
それでだとだ。あっけらかんとして述べるのだった。
「今日は剣士同士の闘いは遠慮したいな」
「いざという時に備えてだな」
「ああ、そう言うあんたも調子が悪いのは」
「今朝だ」
彼の場合はだ。その時にだというのだ。
「今朝怪物と闘った」
「それでか」
「今は力があまり残っていない」
「それでなんだな」
「俺も今はできるなら闘いは避けたい」
「いざという時に備えてだな」
「そういうことだ」
その通りだとだ。広瀬は中田の様子を探りながら述べた。
そしてそのうえでだ。あらためて彼に問い返したのである。
「それでだが」
「俺がここに来た理由な」
「闘いでないなら」
それならばだと問うのだ。
「何の用なのかな」
「あんたと話がしたくてな」
それでだとだ。中田は笑って彼に述べた。
「それで来たんだよ」
「変わってるな、君も」
その中田にだ。広瀬はじろりとした目を向けて述べた。
「俺と話がしたいのか」
「それが変わってるっていうのかい?」
「俺達は敵同士だ」
尖ってはいない。だがはっきりとした拒絶があった。
その拒絶を見せてだ。彼は中田に告げたのである。
「それで何故話がしたい」
「気が向いてな。あんたこの前の闘いだけれどな」
「あの先生との闘いか」
「あの時あんた礼儀正しかったよな」
「当然のことだ」
具体的には敬語を使った。そのことだった。
「人としてな。当然のことだ」
「年長の人にはっていうんだな」
「先輩には礼儀を払うものだ」
この辺りはしっかりと述べるのだった。
「だから俺はああいう態度だったのだ」
「成程な。けれどな」
「けれど。何かな」
二人は何だかんだで横に並んで歩いている。そうしつつ校門に向かっている。
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