久遠の神話
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第十九話 高代の力その三
「それをするつもりか」
「ははは、偵察か」
「俺の闘いを見てその剣や術を見るつもりか」
「それは見るさ」
「ではやはり偵察だな」
「いや、偵察じゃないな」
無表情な広瀬に対して中田は微笑んでいる。
そしてその微笑みからだ。彼は言ったのだった。
「見学だな」
「偵察と見学はどう違う」
「なら鑑賞か」
「観て楽しむ、か」
「そう言っていいかもな」
「俺の闘いを観て楽しむか」
「剣はその人間を出すからな」
その動き全体からだ。出すと言われている。中田が今言うのはこのことだった。
「だからさ。あんたを見せてもらうぜ」
「好きにするんだな」
広瀬は断らなかった。そうしてだ。
にこりとはせず無表情のままでだ。彼は中田に告げた。
「ただしだ。その教師を倒した後でだ」
「俺と闘うっていうんだな」
「剣士がそこにいれば闘う」
広瀬は中田に話す。
「そうするからな」
「だからその時は俺と闘うんだな」
「それでいいか」
「ああ、いいさ」
構わないとだ。中田も平然として返す。顔はずっと前を向いている。
「好きにするんだな」
「話は受けた」
「じゃああんたもそれでいいんだな」
「俺は闘う。剣士達ともな」
「だからそれでいいんだな」
「そうする。そして最後まで生き残る」
こうした話をしながらだ。彼等は。
高等部に向かう。そうして高等部の門を潜りその中に入る。その中でだ。
中田は目で周囲を見回してだ。温かい、懐かしむ笑みで言ったのだった。
「いいもんだな、やっぱりな」
「君はこの高校の卒業生か」
「ああ、普通科のな」
「そうか。そうだったのか」
「そう言うあんたはどうなんだよ」
「俺も同じだ」
同じくだ。八条学園高等部の卒業生だというのだ。
「やはり懐かしい」
「そうか。確か同学年だったな」
「そして普通科だった」
「それで何で御互い知らないんだろうな」
「数が多かったからだな」
それ故にだとだ。広瀬は自分で分析して述べた。
「そのせいだな」
「それでか。俺達は御互いに知らなかったか」
「おそらくはそうだ」
「成程な。しかしその時に知り合っててもな」
「何にもならなかったかな」
「友達にはなってから?」
中田はその可能性について言及した。
「ひょっとしたらな」
「どうだったろうな、それは」
「友人同士が闘うってか」
そうしたドラマチックな展開をだ。中田はふと口にした。
「それも面白いか」
「面白くはないな。当事者同士だとな」
「まあそれはそうだけれどな。物語だとな」
「それなら面白いか」
「読んだり観たりする分にはな」
あくまでだ。そうしたケースに限るというのだ。
「そう思うけれどあんたはそうした話には興味がないんだな」
「好きじゃない」
これが広瀬のこのことに関する返答だった。
「そういう話がだ」
「実際にあったらな」
「嫌なことになる」
声に嫌悪感を込めて言う広瀬だった。
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