久遠の神話
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第十九話 高代の力その二
「一人倒してその力を手に入れる」
「そうするっていうんだな」
「そしてその力で強くなりだ」
そしてさらにだというのだ。
「君達を全員倒す」
「言うねえ。合理的だね」
中田は屈託のない笑顔で広瀬のその考えに応えてみせた。
しかしそれと共にだ。彼はこう広瀬に告げたのである。
「けれどそうそう上手にいくかな」
「俺がその先生に敗れるか」
「その可能性もあるだろ」
やはり屈託のない顔での言葉だった。
「違うかい?それは」
「ないな、それは」
真顔でだ。返す広瀬だった。
そしてそれは何故かもだ。彼は中田に話すのだった。
「俺は強いからだ」
「強いからっていうんだな
「強いからこそその教師にも勝つ」
そしてだ。その力を手に入れてだというのだ。
「さらに強くなり君達を倒していきだ」
「何処までも強くなってそしてか」
「最後まで生き残る」
このことはだ。彼の中では決まっていることなのだ。
そしてその決まっていることをだ。当然として中田に話すのである。
「そして望みを適える」
「そうなるっていうんだな」
「その通りだ。では行って来る」
高等部、高代のいるそこにだというのだ。
「吉報を待っているんだな」
「訃報じゃなくてか」
「俺の訃報はない」
このこともだ。自信を以て答える彼だった。
「相手の訃報はあってもな」
「そうなるか。まあ剣士が死んだらどうなるか」
具体的にはだ。その骸がだというのだ。
「それはわからないがな」
「そういえばそうだな。死んだ亡骸はどうなるのか」
「消えるのかね、怪物達と一緒で」
「そうかも知れないな。消えるか」
「存在自体がな」
「敗れ去るのならそれでいい」
消え去ってしまってもだ、それで望みが適えられないのならばと答える広瀬だった。彼の考えにはそうした刹那的なものもあった。
そしてその刹那についてもだ。彼は言うのだった。
「手に入れるか入れられないかどちらかだからな」
「ゼロサムなんだな」
「世の中はそうだからな」
そのどちらかがだ。世の中だというのだ。
「ならそれでいい」
「そうか。あんたの考えはそうか」
「ああ、間違ってるというのかな」
「いや、それも一つの考えだろ」
少し素っ気無くだ。中田は広瀬に返した。
「それもな。それじゃあか」
「言ってくる」
こう中田に言ってだった。広瀬は。
中田に背を向ける。そのうえで高等部に向かおうとする。しかしだ。
その彼の横にだ。中田は来た。それを見てだ。
広瀬は表情のない顔でだ。目だけを動かして彼に問うた。
「どういうつもりかな、一体」
「興味ができたからだな」
「その六人目の剣士に」
「それにあんたにもな」
「俺にも」
「ああ、あんたがその六人目の剣士とどう闘うのかな」
前を向いたまま微笑みつつの話だった。
「それに興味があってな」
「俺の闘う姿を見たいか」
「その通りさ」
「偵察か」
それではないかとだ。広瀬は中田に言ってみせた。
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