久遠の神話
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第十七話 六人目の戦士その六
「この学園の中にです」
「えっ、六人目の人もですか」
「感じました。この学園の中に確かに」
「じゃあ一体誰なんでしょう」
「剣士は誰でもなれるものです」
聡美は剣士についても話した。その存在自体についてだ。
「選ばれれば。それが例え子供でも」
「子供の剣士もいるんですか」
「過去には存在しました」
上城達が戦っているだ、その前の時代にはというのだ。
「そして勝ち残ってもいます」
「子供の剣士が最後の一人まで」
「その子供はおもちゃで好きなだけ遊びたかったのです」
「そんな理由で他の剣士の人達を倒したんですか、子供が」
「子供は何も知りません」
最初は全くの白紙だとだ。聡美は子供についてこう話した。
「そしてそれが故にです」
「そうした理由で人と戦い倒すこともですか」
「何も拒否するものがないのです」
「それで勝ち残ってですか」
「おもちゃで。ずっと楽しみました」
「そうした戦いもあったんですか」
「そうです。あったのです」
過去の戦いのことも話す聡美だった。そしてだ。
そのうえでだ。上城にこう言ったのである。
「ですから。子供でもです」
「うちの学校って幼等部も初等部もあるから」
樹里も言う。この学園には大学院まで全て揃っているのだ。
そのことからだ。彼は言うのだった。
「だから。ひょっとしたら幼稚園の子供が剣士ってことも」
「あるのかもね」
「はい、有り得ます」
その通りだと答える聡美だった。
「そのおもちゃで遊びたくて勝ってきた剣士もです」
「まだ幼稚園に行く様な子供だったんですか」
「剣の腕はなかったですが術を使うことにかけては天才でした」
「子供だから。純粋だからこそ」
「その天才が余計に発揮されて」
その術の強さでだ。最後まで勝ち残ったというのだ。
「そうした剣士もいましたから」
「子供だからといって油断はできない」
「そういうことなんですか」
「そのこともご承知下さい」
聡美は上城と樹里にこのことも話した。これは上城達にとっては中々実感としてわからないことだった。それでなのだった。
樹里はだ。こう上城に言った。
「そうした子供が出て来てそうして」
「僕に向かって来たら」
「その場合もよね」
「うん、わからない」
その場合でもだった。彼の答えは出なかった。
それでだ。悩む顔でまた言ったのである。
「ましてやね。子供はね」
「上城君子供には優しいから」
「子供に酷いことするなんてね。酷いことだと思うよ」
「相手が誰であってもね」
上城は言い加えた。そもそも彼はいじめや虐待が嫌いなのだ。
それで言ったのだ。こうだ。
「しちゃいけないよ」
「本当にね。けれどとりわけね」
「うん、子供はね」
やはりだ。小さい相手にはというのだ。
「けれど子供もなんだ」
「剣士に選ばれ。剣を持てばです」
それだけでだと。聡美はここでも話してきた。
「戦うのですから」
「だからですか」
「そのことは覚えておいて下さい」
上城にだ。強く言った言葉だった。
「どの様な相手もいるということは」
「そのことは本当にですね」
「まだ子供の剣士がいるとはわかりませんが」
それでもだと。聡美は言うのだった。
「この学園にいることはです」
「感じたですか」
「そうです」
「わかりました。けれどよく感じることができましたね」
不意にだ。上城はだ。聡美が感じたことについて問うたのだ。
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