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久遠の神話

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第十四話 水と木その八


「ただ。どう見ても外見は」
「ライオンよね」
「毛とか鬣が黄金でやけに大きいけれど」
 しかしそれでもだった。その姿はどう見てもだった。
「ライオンだよね」
「ええ、絶対に」
「怪物なのかな」
 剣を構えながらだ。彼は首を傾げさせて言う。
「本当に」
「ううん、どうなのかしら」
 樹里は首を捻る。しかしだった。
 ここでだった。不意にだった。あの声がしてきたのだった。
 声はこうだ。二人に対して言ってきた。
「あれも怪物です」
「また!?」
「声が急に」
「私のことは声と御考え下さい」
 かなり強引にだ。声は二人をこう納得させにかかってきた。
 そして実際にそれで話を進めていきだ。こう話すのだった。
「それで御聞き頂きたいのですが」
「はい、それでなんですか」
「そうです。あの獅子もまた怪物です」
 また言う声だった。
「ネメアの獅子といいます」
「ええと、ネメアの獅子っていうと」
「確か」
 その名を聞いてだった。二人は首を傾げさせながら声に対して言う。
「あれですか。ヘラクレスが倒したっていう」
「あの獅子ですか」
「そうです。まさにあの獅子です」
 その通りだと話す声だった。
「テューポーンとエキドナの間に生まれた」
「怪物なんですね」
「外見は獅子でも」
「その通りです。ですから容易な相手ではありません」
 声は明らかに警告を送ってきていた。
「用心して下さい」
「わかりました」
 上城は彼に向けられた言葉を受けてだった。
 そのうえでだ。こう声に返したのだった。
「じゃあ僕はこの獅子を倒します」
「そうされますか」
「怪物を倒せばそれだけ強くなりますね」
「はい、なります」
 その通りだと答える声だった。
「それを望まれているのですか」
「ええ。戦いを終わらせる為に」
「戦いを終わらせるにはです」
 どうするべきかとだ。声も述べてきた。
 その主張はだ。上城とは違いだ。こうしたものだった。
「他の剣士達を倒すことです」
「それは嫌です」
 声に対してもだ。はっきりと答える彼だった。
「絶対にです。そうしたことは」
「そう仰るのですか」
「駄目ですか、それは」
「これまでそう言われる方もいました」
 声のその言葉は過去を振り返るものになっていた。そのうえでだ。
 声はこうだ。上城に諦める様に言ってきたのだった。
「ですがそれはです」
「無駄だっていうんですね」
「はい」
 その通りだというのだった。
「僕は絶対にです」
「諦めないのですね」
「人と人が戦うなんて間違っています」
「ですがそれは人の歴史ですが」
 戦争、そうしたものも含めての言葉だった。
「しかしそれを否定されるのですか」
「僕はそもそも戦争自体が嫌いです」
「そうなのですか」
「理想とか言われてもそれでもです」
 人と人が争うこと、それ自体が嫌いだというのである。
 そのことをだ。声にもはっきりと言うのだった。そしてだった。
 彼はさらにだ。声に対してこうも言った。 
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