久遠の神話
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第十二話 一人ではないその十三
「俺はあの人の訳が好きだ」
「私も。日本語の方はね」
「福田さんか」
「あの人の訳も後書きも好きだから」
福田の凄さはその後書き、分析にもある。そこに彼一流の学識があるのだ。
「だから読んで参考にしてて」
「そして英訳もか」
「してるわ。原文だと余計にわかるのよ」
「シェークスピア独特のものがか」
「そう、シェークスピア節ね」
まさにそれがわかるというのだ。原文だとだ。
「それがいいのよ」
「成程な。励んでいるのだな」
「頑張ってるわよ」
彼女は笑みを浮かべて広瀬に答えた。
「お勉強にもね」
「そしてだな」
「そう、スポーツもね」
笑みでそのことも話した。
「バスケ頑張ってるわよ」
「バスケか。あれはな」
「友則君も好きよね」
「俺は乗馬なんだけれどね」
ハンバーガーを手にだ。広瀬は少し気恥ずかしそうに述べた。
「だがバスケも」
「好きよね」
「身体を動かすことはいい」
今度は笑みで言う広瀬だった。
「とてもな。それに」
「それに?」
「鍛えるとだ」
身体を動かす、即ち鍛錬としての言葉だった。
「生き残れるからな」
「生き残れるって?」
「あっ、いや」
自分の失言にだ。気付いてだった。広瀬は彼女にこう言うのだった。
「体力があると」
「ああ、体力なの」
「それがあるといざという時頑張りが利く」
「そうよね。身体が資本だからね」
「だからいい」
こう言い繕ったのだった。
「体力があるとな」
「そうよね」
「そうだ」
広瀬は言い繕っていく。
「そういうことだ」
「体力っていうと」
「食べることも大事だ」
それもだとだ。実際に食べながら言う広瀬だった。ハンバーガーを食べつつだ。
「だから今はな」
「そうよね。それにしてもこのハンバーガーって」
「美味いな」
「もう一つ頼もうかしら」
「そうだな。じゃあ俺も」
「二人でね」
「ハンバーガーをまた頼むか」
「そうしましょう」
二人でだ。笑顔で話してだった。実際にハンバーガーを食べるのだった。広瀬も一人ではなかった。こうして共に食べる人がいるのだった。
第十二話 完
2011・10・23
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