戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十七話 二つの砦その十
「赤は火の色じゃな」
「はい、五行思想においての火です」
「それこそがまさに赤です」
「そうじゃ。織田にしてもじゃ」
そのだ。織田家についても話すのだった。
「青じゃな」
「はい、青です」
「木の色ですね」
「それですね」
「そうじゃ。青じゃ」
また話す宗滴だった。
「その青もある」
「そしてその他の色も」
「それもなのですか」
「何かあるのか」
彼は色についてだ。さらに話していくのだった。
それを考えていってだ。彼はだった。
「わからぬな。それを考えると」
「考えると?」
「といいますと」
「やはり我が家も色を備えるべきなのだろうか」
こう言うのだった。考える顔でだ。
「やはりな」
「我が朝倉も」
「それをしてみればというのですか」
「そうじゃ。どうじゃろうか」
宗滴は己の信じる家臣達に対して問うていく。
「それは」
「色は何の意味もないと思いますが」
「ただの格好付けにしか」
「それに傾奇にしか」
家臣達はだ。こう言うのだった。どうも賛成できないという感じだ。
その感じでだ。彼等は宗滴に言っていくのである。
「所詮そういうものではないですか?」
「やはり」
「そうかのう。傾奇か」
宗滴もその言葉に己の考えを止めた。
そのうえで腕を組んでだ。こう言うのだった。
「所詮はそれでしかないか」
「我が朝倉は傾奇には縁のない家でございます」
「そうしたものには」
「しかし色自体には意味がある」
またこのことについて話す宗滴だった。それはどうしてもだという感じでだ。
そのうえでだ。彼はまた話すのだった。
「しかしそれは我が家ではか」
「浅井殿はまだ興って新しいですし」
これはその通りだった。浅井はまだ三代だ。出自も朝倉と比べればよくはない。
だが、だった。ここでだ。家臣の一人がこんなことを言った。
「しかし武田殿、それに薩摩の話ですが」
「島津殿もですな」
「そうじゃ。その島津殿もじゃな」
島津はだ。どうかというのである。
「あの家も色が付いておるな」
「はい、あの家は橙ですな」
「その色になっております」
「どちらもかなり古い家じゃ」
武田に北条はそれこそ代々の守護大名だった。それは室町以前からの家でだ。かなり古くから存在している名門なのである。
そのことをだ。彼等は話すのだった。
「武田殿は甲斐源氏の名門ですし」
「島津殿はあの地に古来からおられますし」
「ですが両家共です」
「色を付けられています」
「では我が家もよいか」
宗滴はそちらに考えを戻した。揺れたと言ってもいい。
「色をか」
「どうしたものでしょうか」
「果たして」
「一度殿とお話してみようか」
宗滴は考える顔で述べた。
「そのことをな」
「そうされますか」
「ここは」
「そうするとしよう。少しな」
こんなことを話す彼等だった。そうしてなのだった。
彼等は織田とだ。色のことを考えていくのだった。織田は間違いなく大きくなる、宗滴はそのことをだ。確信しているのだった。
第三十七話 完
2011・4・16
ページ上へ戻る