戦国異伝
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第三十八話 砦の攻防その一
第三十八話 砦の攻防
遂にだ。今川の先鋒がだ。
佐久間盛重達の守る鷲津の砦のある山に至った。そのことはだ。
鷲津の砦にだ。すぐに伝わったのだった。
「そうか、遂に来おったな」
「その数五千」
「今川のおよそ五分の一ですな」
木下兄弟がすぐに佐久間盛重に述べてきた。
「その殆んどで砦を攻めに来るでしょう」
「おそらく四千です」
「四千か」
四千と聞いてだ。佐久間盛重は腕を組んだ。そのうえでだ。
彼はだ。こう言うのだった。
「残り千で丸根を囲みか」
「そうしてその四千の全てでこの鷲津を陥落させんと来るでしょう」
「間違いなく」
「そうじゃな。来るな」
間違いなくと言う佐久間盛重だった。そしてだ。
彼はだ。こうも言うのだった。
「しかしじゃ」
「はい、我等は充分に戦えます」
「何の憂いもなくです」
いけるという彼等だった。そうしてだ。
彼等はだ。その敵を待ち受けるのだった。するとすぐにだ。
砦の四方八方からだ。彼等が来るのだった。
「攻めよ!」
「このまま陥とせ!」
こう言ってだ。その四千の軍で砦に襲い掛かるのだった。その指揮にあたるのは。
松平元康だった。彼は自ら馬を降り刀を抜いてだ。
指揮にあたりだ。こう言うのだった。
「よいか、四方から砦を取り囲みだ」
「そのうえで、ですな」
「あの砦を」
「陥とす」
まさにだ。そうするとだ。三河武士達に告げるのである。
「よいな、そうするぞ」
「わかりました。それでは」
「このまま取り囲み」
「そのうえで弓を放て」
城や砦を攻めるうえでの基本だった。
「よいな」
「火矢をですね」
「それを」
「左様、それを放て」
元康の指示は迅速だった。
「あの砦は木。やはり火がよい」
「そうですね。それでは」
「今より」
こうしてだった。まずは火矢が放たれようとしていた。
今川の兵達は砦にさらに迫る。それを見てだ。
木下がだ。砦のその簡易な櫓の上からそれを見て言うのだった。
「火矢ですな」
「それで来るか」
「はい、火攻めですな」
こう己の前に立つ佐久間盛重に話すのだった。
「それで来ます」
「ふむ。そうか」
「それでなのですが」
木下はだ。すぐに言うのだった。
「一つ考えがあります」
「火に対してじゃな」
「その為に置いておきましたので」
「水か」
「はい、井戸の水です」
それをだ。使うというのである。
「まず敵が火矢を放ってきます」
「それに対して井戸の水をどう使うのじゃ?」
「空いている布、何でもいいですがそれを水に点けて火矢が落ちた場所にかけます」
「そして火を消すか」
「随時そうしていきましょう」
「わかった。それではだ」
こう話してだった。そのうえでだ。
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