魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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後日談1 加奈の決意
「はあ………」
暗い自室でベットで毛布にくるまり、何度も繰り返し溜め息を漏らし続ける。
「私、振られたのよね………」
もう流す涙も無くなった。
実際私なんかよりも星達から強い絆を感じていたし、兄さんも彼女達の事が好きなのではないかとは感じた事がある。
星達に何かあると人が変わるもの………
でも、それでも私は兄さんが好きだった。
「佐藤孝介じゃない、有栖零治だ……か」
その言葉が一番私の心に突き刺さった。
私が好きだった兄さんは今の兄さんなのか?
確かに名前が違うだけで同一人物ではある。だけど確かに前と今とでは違う所があると思ったときは度々あった………
第一に思ったのは極端な程の家族愛。
「あんなに家族を大事にする人じゃなかったんだけどな………」
自分の事よりも優先して家族の方に………
前の兄さんだと考えられない。
だってそんな姿を見せたことがなかった………
確かに私の為に動いてはくれた。だけど今の兄さんは前以上に一生懸命だ。
「それもこれもこっちに転生してきたときからの生活が原因なのよね………」
兄さんが先輩と呼ぶウォーレンさん。その人が一人ぼっちだった兄さんを救い、ウォーレンさんが亡くなって自暴自棄になってた兄さんを救ったのがあの3人。
「ははっ、勝てるわけ無いじゃない………」
本当に………
せめてウォーレンさんが亡くなった時に私が側に居たら………
「本当に、割り合わないわね………」
そう呟いて、私は眼を閉じた………
「本当ですか、隊長!?」
「ああ、正式に発表するのは今の復旧作業が終わってからだろうが、俺達も鼻が高いよ」
スカリエッティのアジトから本局武装隊の隊舎に行き、そのまま隊長の部屋に行くと、早々にとんでもない事が告げられた。
「俺がエース・オブ・エース………」
実際なら高町なのはが受け継ぐはずの称号。
何で俺が………
ましてやバルトマン捕獲にも失敗しているのに………
「何だよ、もっと喜べ!!」
「ですけど、俺はバルトマン捕獲に失敗しているんですよ?」
「だが、あのバルトマンを退かせただけでも充分だ。それに上の話だと、本局を守った功績も評価してくれてるみたいだ!!」
オメガブラスターの事か………
「近いうちに授賞式もあるらしいからそのつもりでな。今日は疲れたろ、ゆっくり休め」
「はい………」
そう言われ、俺は渋々隊長室を出た………
「はぁ………」
一日休んだ次の日。
学校にやって来た俺は、目の前に零治ファミリーがいることに気が付いた。
一昨日のエース・オブ・エースの件を一応報告するべきか………
………しかし、何かいつも以上に星達との雰囲気が甘い気がする。
「零治!」
「ああ、神崎。管理局の方は良いのか?」
「取り敢えず本局は何とか稼動を始めたよ。っと、そんなことより休み時間ちょっと時間あるか?」
「ああ、俺も話しておきたい事があるから」
そう言ってとりあえず、零治と離れた………
あの様子からするともしかして………
「うん?神崎、どうした?」
「加奈は?」
「ああ………加奈は休みだ………」
「休み?」
って事はやっぱり………
「神崎、お前は………」
「ありがとう桐谷!」
先ずは零治から話を聞くのが先だな………
2時間目休み時間………
「そうか………」
「なあ零治、どう思う?」
零治を連れ出し、屋上へ上がる階段に2人座って話をする。
「そんな難しく考えなくていいんじゃないか?お前をエース・オブ・エースにするって案はよく分かるし」
「だけど、もしあのクレインが絡んでいたら………」
「それは無いと思うぞ。もうクレインに管理局へのツテは無いだろうし、今現在のトップはあの伝説の三提督だろ?」
「まあそうだけど………」
「俺は原作をちゃんと知っている訳じゃないから、何とも言えないけど良い人達なんだろ?」
「そうだけど………」
「なら喜んで良いんじゃないか?ミッドの守護神さんよ」
零治は気楽に俺の肩を叩くが、俺にとってはかなりのプレッシャーだ。
バルトマンだって結局零治が倒したし、俺はバルトマンに言われ放題のまま負けてしなった。
『魔力だけに頼ってるからこうなる』
そう、俺には武術の心得なんか無い。
戦い方も魔力に頼った攻撃ばかり。
それがいかに通用しないのかを痛感した………
「本当に俺で良いのかな………?」
「ああ、やれるだけやってみろよ」
………そうだな、取り敢えずやれるだけやってみよう。
俺に期待してくれてる人もいるし、何よりもう負けたくない。
「………で、零治。加奈が休みな理由知ってる?」
「ああ、むしろ俺のせいなんだよな………」
やっぱりか………
「詳しく聞いていいかい?」
「………じゃあ零治は星達に告白したんだね」
「ああ、ちゃんとOKも貰った」
加奈………
俺的にはとても嬉しい結果の筈なのに全く喜べない。
むしろ加奈の思いを踏みにじった零治を………
いや、零治も悩んで決めた事だもんな………
「だから加奈の思いには答えられないと言ったんだ」
零治の目から迷いは無かった。
「そうか………なら俺は応援するよ………だけどちゃっかりハーレムを築いたね零治」
「そんなつもりは全く無えよ、ただ、俺はあの3人が良いだけだ」
「そう………だけどね………」
俺だって我慢できない事がある。
俺はそのまま零治の右頬を思いっきり殴った。
「っ!?何だいきなり!!」
「加奈を泣かせた分だ。零治の気持ちも分かるが、それでも許せないものがある」
「お前………もしかして………」
「じゃあ俺は教室に戻るな。ああ、別に零治の考えに反対って訳じゃないから勘違いしないようにな」
そう言って俺はその場を後にした………
「やっぱり返信無しか………」
桐谷に加奈の連絡先を教えてもらい、メールを送っているけど返信が無い。
期待していた訳じゃないけど、せめて今何をしているのかくらいは教えてほしい。
「加奈、いつまでそうしているつもりなのか………?」
加奈はお節介で優しいだけでなく、いつも真っ直ぐで、気高くてかっこいい。
そんな加奈に憧れていたし、優しさに好きになった。
出来ればいつまでも悲しみに耽って引きこもんないでほしい。
「こういうときはどうすれば良いのかな………」
恋愛経験なんて皆無だけど絶対に何かできることがあるはずだ………
そう思いながら学校でずっと過ごしていた………
夜………
「なあ桐谷、また加奈全然食事採ってないぜ」
「ああ、流石に問題あるな………」
俺達が学校に行っている間に何か口にしているのかと思っていたけど、食器棚は綺麗で、トイレ以外部屋から出てこないとエタナドに言われた。
いい加減無理矢理部屋から引きずり出すか………?
「桐谷、無理矢理は絶対に駄目だよ!もう一日だけ待とう?」
そんな俺の考えが読めたのか、慌ててセインが止めた。
「セイン………だが………」
「こういうのは女の子の判断の方が正しいっス」
………まあそうだな。
「桐谷、コーヒーは?」
「ああ、頼むよノーヴェ」
取り敢えず今日は大人しくしとくか………
深夜………
「何しに来たのエタナド?」
いつもリビングに置いているエタナドが私の部屋に入り、デバイスになった。
『いえ、私もマスターの事が心配でしたので………いい加減出てくれば良いのでは?ただ引きこもっていても何も変わりませんよ?』
そんなの分かってる。
だけど体が動かない………
いいえ、もう何も考えたくないんだ………
『マスター………!?封鎖結界!?』
「え!?」
エタナドの声の後に私も物凄く高い魔力を感じた。
だけどこれって………
「神崎!?」
あのバカ、何を考えて………
「エタナド、行くわよ!」
『!?はい、マスター!』
私はセットアップして窓から飛び上がった。
「………来たね」
「神崎、一体何を考えてるのよ!?」
「加奈、勝負だ」
「勝負?」
「うん、一騎討ちでね」
「バカじゃないの!?何のために………」
「ジルディス、バレットスタイル」
神崎は私の事を無視し、双銃を展開した。
「さあ、行くよ加奈」
そう言って私に魔力弾を放ってきた………
「くっ、エタナド!」
フェアリーを展開するも、魔力弾に易々と貫かれてしまう………
「何て魔力………」
『マスター油断しては駄目です!!』
「チャージバレット!」
神崎は通常より、大きな魔力弾を私に向かって放ってきた。
「フォースフィールド!」
球状のバリアーで魔力弾を消し去った。
「何で、何の為にこんな事!!」
「何でって死ぬつもりなんだろ加奈?」
「死ぬ?私が?」
「だって2日も何も食べずに部屋にこもってたんだろ?」
確かにこもってたけど、別に死ぬつもりなんか………
「桐谷達に気を使わせて、心配させて………こうやっとけば零治の気を引けると思ったのか?」
別にそんなつもりじゃ………
「気高くて、真っ直ぐで、芯のあるのが加奈じゃないのか?俺はお節介で優しい加奈も好きだけど、そういう加奈憧れていたんだ。なのに今の加奈は酷い、とても見てられないよ。だったら………」
そう言って神崎は私に右の向けて右手の銃を向ける。
「今、楽にしてあげる」
そう言って魔力を発射してきた………
「何で………!!」
そう呟きながら、側にフェアリーを展開し、何とか魔力弾を避ける。
神崎は私を舐めているのか、単発でしか撃ってこない。
『ですが、私には神崎様の気持ちも分かる気がします』
「エタナド、何言ってるのこんな時に!!」
『今のマスターを見て確かに零治様は何て言います?』
「兄さんが………」
そう思うと確かにこんな私を見たら兄さんが何と思うかな………
「どうした?諦めたのか?」
そして神崎はそんな私に憧れていてくれた。
だったら兄さんも今の私を見たら神崎の様に失望するのかな?
そんなの………嫌だ!!
「別に良いか………じゃあね、加奈」
双銃に魔力を込める神崎。
そして一斉に魔力弾が放たれた………
「加奈………」
悲しそうな目で、巻き起こった煙を見る神崎。
「………駄目ね、私は………兄さんに振られはしたけど、私を好きだって言ってくれたのに………」
加奈は分厚いシールド、オーガシールドを展開して防いだ。
「確かに想いは敵わなかったけど嫌われたわけじゃない。逆にいつまでもウジウジしてたら本当に嫌われちゃう………そして神崎にも………」
「加奈………」
本当に駄目な女ね、私は………
「ありがとう、神崎気づかせてくれて………」
「いや俺は特に何も、加奈が気がついたんだよ。だけどこうなったらとことんやろうぜ加奈!今まで溜めたものを一気に吐き出せ!!」
「言ったわね、神崎!だったら私の本気の一撃、耐えてみせなさい!!エタナド!!」
『フルドライブ!!』
加奈の身体が光輝く。
そして、杖を目の前に構え、集中し始めた。
「裁きの光を此処に!!闇を消し去る創世の光………輝け!!」
神崎の上空に光が差し込む。
夜空なのに神崎の上空は神々しく輝いていた。
「うそっ!?流石にそこまでは予想してな………」
「行くわよ神崎!!ディバインジャッジメント!!」
光輝く上空から神崎目掛けて光が降り注いだ………
「いてててて………そんなの有りかよ………」
「私の最大の技を受けてそれで済むなんて流石ね………」
そう言いながら私は神崎に回復魔法をかける。
神崎はプロテクションを張って防ごうとしたが、降り注ぐ光を完全に防ぐことは出来ず、地上に落ちていった。
「だけど、良かったよ。いつもの加奈に戻って」
「………ごめんなさい」
「いいや、元気になってくれて良かったよ。いてて………」
「こら、まだ動かない!」
そう言って叩くと涙目で頭を抑える神崎。
全く、少しはかっこいいところあると思ったのに………
「私、頑張ってみるわ。まだ完全に吹っ切れたって訳じゃないけど、これからもこの世界で生きていくわ。そうしたら兄さんみたいに変わるきっかけを得られるかもしれない」
「そうだね、俺みたいに………」
「そう言えば神崎もそうだったわね」
「うん、加奈と零治のおかげでね。だから今度は俺が加奈の変わる手伝いをするよ」
そう言って笑顔で加奈に言う神崎。
「!?………全く、アンタも兄さんと案外同じかもね」
「うん?零治と?」
「気にしないの!!それじゃあ私は帰るわ、また明日ね」
そう言って慌てて立ち上がり、後ろを向く加奈。
「ああ、また明日な加奈!」
「ええ、|大悟!!」
そう言って加奈はそのまま家へと帰るのだった………
「大悟………?うそ?」
そんな中神崎は暫くその場から動けないでいた………
「兄さん!!」
加奈が休んだ2日後、加奈は学校に来た。
しかも妙にスッキリした顔で。
「加奈!?お前………」
「ありがとう兄さん、私、この世界で兄さんや大悟みたいに変わってみせるわ。だから………」
そう言って耳元に向かってくる加奈、そして………
「だからこれからも見守っててねお兄ちゃん」
そう言って離れていった。
「………全く」
だけど、元気になって良かった。
だが、大悟と名前で呼ぶの事は神崎に直接問い詰めるべきかな………
「レイ………?」
「何だせ………」
そこで次の言葉が出なかった。
何故なら鬼の形相で睨む俺の大好きな3人が仁王立ちしてたからだ。
「ちょっとオハナシしましょうか?」
「そうだね、ちゃんとしつけないとね」
「我等の目から離れ、浮気しないようにな」
「ちょっと………3人共?」
「「「さあ、オハナシしようか?」」」
そう言われなすがままに引きづられていく零治。
「加奈、覚えてろよ………」
加奈が走り去った方を睨み、零治は3人に連行されていった………
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