魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者
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最終話 平凡な日常をいつまでも………
前書き
済みません、投稿し忘れてました………
「零治は加奈の事をどう思ってるんだ?」
神崎に言われた一言。
前にも加奈に直接聞かれた。
「俺は………」
「ふぅ、いい湯でした………っと何か取り込んでましたか?」
そんな中、風呂に先に風呂に入っていた女性陣がリビングにやって来た。
「何でも無い、ゆっくり出来たか?」
「良かったです。………レイ、体調はどうですか?」
「ああ、何でか一日で動けるようになってるわ。………何でだろ?」
「我等が知るわけなかろう………」
そんな零治の質問に少し呆れ気味に答える夜美。
「まあそりゃそうだ」
「レイも神崎も風呂に入ってきたら?」
星の後ろからライが声を掛けた。
「いや、俺は失礼させてもらうよ、自分の部隊にもそろそろ戻らないと隊長に心配させるだろうし………」
「待て、神崎!!」
そんな神崎を止める夜美。
「大丈夫だよ、ここの事は絶対に言わないから」
そう言って神崎は出ていった………
「お兄ちゃん、神崎さんってここから一人で出られるの?」
「あっ………」
キャロに言われ、慌てて神崎を探す俺達。結局、神崎をルーテシアが見つけ、出口に案内してもらい、管理局へと戻っていった………
「ここにいたのか………」
「桐谷?」
事件解決と新たな家族、イクスヴェリアの加入により、パーティを始める事になった。
イクスヴェリアについてだが、取り敢えず異常は見られなかったらしい。
それには大変シャイデが嬉しがっており、抱きつかれたイクスはとても照れながらもされるがままになっていた。
まだぎこちなさがあるけど良い親子になれると思う………
パーティもチビッ子ダメっ子を中心に楽しく進んでいる。
しかしそんな中、神崎の言葉が頭から離れず、中々楽しめなかった俺は、酒があったのでそれを持って、静かに部屋から抜け出した。
月夜の夜に一人酒。
カッコイイ男なら絵になるのかもしれないけど、頭の中ではそんな考えも無く、加奈の事を考えていた俺。
そんな中、外で飲んでいた所に桐谷がやって来た。
「どうしたんだ?何か悩み事か?」
「ああ、まあ………」
グラスに入ってる酒をひと飲みし、 空を見上げた。
「俺さ、加奈をどう思ってんのかな………?」
「いや、俺が知ってるわけ無いだろうが………」
桐谷の言う通りなんだが………
「俺が見た感じだと昔のお前は重度のシスコンだったよな?」
「うるせえ」
確かにそんな気もする。
………ぶっちゃけ妹にしちゃ勿体ない位可愛かったし。
そんな妹を持って鼻が高かったのも、妹の才能に嫉妬したこともあったけど………
「まあ今もキャロや優理にはかなりシスコンだけどな」
「やかましいわ」
それは自覚してるが直す気はねえ!!
「………まあそれはともかく、あの時のお前は加奈が好きだったよな」
不意にそんなことを言われ、零治の目が点になった。
「長年付き合ってる俺だから分かるが、お前達は両思いだったよ確実に」
「俺と………加奈が………?」
「じゃなかったらいくら妹だからってあそこまで面倒見ないだろ普通。それに時々カップルみたいな事もしてたし………」
全く見に覚えが無い………
「そのせいで、加奈は彼氏を作ろうとはしなかったしな」
そう言えばアイツ、彼氏が出来たって話聞いたこと無いな………
「まあお前はともかく、加奈は孝介の事が好きだった。それは確実に言える」
全然気がつかなかった………
だけど昔の俺は、加奈をどう思ってたんだ………?
妹………それとも………
「そんなに悩む事か?………まあ人の事は言えないのかもしれないけどな………」
そう言ってアジトに戻っていく桐谷。
「………まあそんなに悩む事は無いだろう。今のお前と前の孝介だったお前は似てるが違うんだから………今は有栖零治として生きているんだろ?………ただ加奈は一人の男としてお前の事が好きだぞ」
そう言い残して桐谷は部屋に戻っていった………
「俺が加奈をどう思ってるか………」
再び一人になり、考えるのはやはり加奈の事。
確かに言われてみれば前の世界では告白された女の子と加奈を知らない内に比べていたし、加奈に近づいて来る男を見るとイラっときた。
ただそれが好きな女の子だからなのか、大事な妹だからなのかがよく分からない。
「だけど加奈は俺の事を………」
だから義理を強調してたのか………
ただ、情けない兄と決別したいと思っていた………
「でもそうじゃなかったんだな………」
何でも完璧にこなす妹に劣等感を抱いた時もあったが、加奈はそんな事気にしてなかったんだな………
「だったら素直に言えば………駄目か、“兄妹”だもんな………」
行き着く先は兄妹という壊せない壁。
そんな壁があったら確かに素直になんか言えない。
「だからこそ加奈は………」
そんな加奈の一途な心がとても嬉しい。
………だけど、
「俺は………」
「そんな………加奈が………」
レイと桐谷が静かに出ていくのを見た私達。
トイレと言って抜け出し、隠れて付いていくと、外で2人で大事な話を話していた。
ほんの興味があったのと少しお酒が入っていた影響で、私達3人は盗み聞きしました。
それがあんな話だったなんて………
「レイも確実にあの時は加奈の事を………」
あの時とはどんな時なのかは私には分からない。だけど確かにレイは私達には見せない顔で加奈と話す事があった………
「星………夜美………」
「ああ、だが我等にはどう頑張っても超えられない関係でもある………」
あっちは兄妹の壁、私達はかりそめの家族と言う壁。
後から義理だって事が分かって更に関係は深くなったのでしょう………
「嫌だよ僕………」
「我も嫌だ………だが………」
「家族ごっこもここまでなのかもしれませんね………」
そんな発言に怒った表情で星をにらめつけるライ。
「ライ、我らのせいでレイが幸せになれないのが一番辛い………」
「でも………!!」
「私達は充分にレイに幸せを貰いました。後は私達がレイを送り出さないと………」
「でも………僕達だって………」
「駄目ですよ、いつまでもレイに甘えちゃ………私達は充分甘えたんですから………」
「星………そうだね………」
「ならば我等は………」
そう話合い、私達は顔を洗ってから部屋に戻りました。
帰ったら色々と準備がかかりますね………
「しかし今まで色々とあったな………原作介入しようとして、失敗して、魔法を使いたくて傭兵を初めて、予想以上に過酷で、でもそんな中先輩と会って、その後シャイデと会って、そして半年位一緒に過ごして………」
そう呟き、酒を口に含む。
「そして星達と出会った」
あの時は奇妙な感覚だった。
原作にはもう関係無く、傭兵として過ごしていき、先輩とこれからもずっとこんな感じで生きていくんだと思っていた矢先の出来事だった。
「そして家族として迎えた」
本当はそんなつもりは無かったけど何か流れでそうなってしまった。
「そして先輩が死んだ………」
その後自暴自棄になった俺を救ってくれたのがあの3人だ。
その事には今でも感謝している。
「そして平凡な暮らしをアイツらと過ごそうと思った」
それがこの世界の俺。
前の世界の俺との相違点。
「なのは達、管理局に見つからない様に、ブラックサレナだけにし、いつ何が起きてもアイツらを守れるようにお互いに戦闘訓練して………」
もちろん他のフォームも。
そう全ては………
「アイツらの為だ、大事なアイツらと平凡だけど毎日が楽しくていつまでも一緒にいたいとそう思ったからそう決めたんだ。それは………家族だからって理由だけじゃない」
そう俺は………
「あの3人に惚れてんだよな………だから離れたくもないし、命がけで守りたいと思う」
それが今の俺の気持ち。
「だから俺はお前の気持ちに答えられないよ加奈………」
そう言った俺の後ろには涙を目に一杯溜めた加奈がいた………
「何でよ………何で!!」
「俺はやっぱりあの3人じゃないと駄目なんだ俺は………」
「私はずっと兄さんの事を思ってきたのに………!!」
「ごめん………」
「転生の時だって兄さんを追ってきたのに………!!」
「ごめん………」
「私は、私は………兄さんの事がどうしても好きなの、変になりそうなのよ………」
「加奈………」
フラフラになりながら零治に近づく加奈。
その姿はいつもの加奈じゃなく、とても弱々しい………
「兄さん………」
そのままキスをしようとする加奈。
俺は近づいてくる加奈の肩を手で抑え、止めた。
「なんで………なんでよ!?私じゃ駄目なの!?私、頑張って兄さんの好きな女になるわ!!性格だってもっと良くなってみせるし、星達よりも兄さんに尽くすわ、だから………」
「加奈!!」
混乱している加奈に大声で怒鳴る零治。
「俺はあの3人が好きなんだ。いつも気が利いて、怒るとマジで恐いけどお化けが大の苦手な星。無邪気でいつまでも子供っぽいけどいつも楽しませてくれるライ。基本冷静だけど、少し口下手で、2人っきりになると途端に緊張して慌てたりする夜美。加奈はこの3人には成れない。なって欲しくも無いし、なってくれた所で嬉しくない」
そう、加奈とあの3人は違う。真似したところで所詮真似だ。
そんな加奈になって欲しくない。
「兄さん………」
「加奈、俺はお前のしっかりしてて、自分にちゃんと芯があって、気高い所が好きだ。だけど俺はそれ以上にあの3人の事が好きなんだよ………」
「兄さん………でも!!」
「加奈、俺は佐藤孝介じゃない、有栖零治なんだ。昔の俺とは似ているが違う。俺も随分と変わったんだ」
そう言って加奈を抱きしめる零治。
「俺を好きで居てくれてありがとう。これからは俺以上の男を見つけて、俺を羨ましくさせるほど幸せになってくれ」
そう言って離れた。
「兄さん………」
「それが兄として妹に思う事さ」
そう言ってグラスに入ってる酒を全て飲み、その場を離れた………
次の日………
「頭痛ぇ………」
朝早く、地球に戻った俺達は直ぐに学校へ登校。
ただ、イクス(これからはリンスと呼ぶらしい)とチビッ子とギアーズ姉妹はスカさんのアジトにいる。
リンスは身体の検査の為だが、チビッ子とギアーズ姉妹は何だかスカさんが作りたいものがあるから協力してもらうとか何とか………
本当は休んで手伝いたい所だけど、流石に1日無断欠席した後にまた欠席なんて事になったらマズイ………
「星達は大丈夫か………?」
「はい、私達は大丈夫です」
「レイこそ学校で吐かないでね」
「流石に我らも引くからな………」
「ああ、それは何とか耐えるさ」
何だがそっけ無い気がするけど………気のせいか。
ちなみに家にはアギトと優理が仲良く寝ている。
羨ましい………
「フェリアは………ってそうか、桐谷の家に行ってるんだっけ………」
朝早く、『桐谷と加奈だけじゃ妹達の面倒は大変だろうから手伝ってくる』と早めに出ていったっけ?
セインが特に酷かったから大丈夫か少し心配だけど………
それに加奈も………
「っと、人の心配なんかしてる場合じゃないか………」
そう思いながら少し早足で学校へ向かった………
「れ〜い〜じ君!」
学校へ着くととても素晴らしい笑顔で立ち塞がっている管理局の魔導師娘達が。
マジで嫌な予感しかしないんだけど………
「ちょっとお話ししない?」
そんな地獄の誘い。
しかし同じお話しでもオハナシでは無いと感づいたクラスメイトの男共は羨ましそうに見ている。
代わって欲しいならいくらでも代わってやるけどな………
「分かった、取り敢えず場所を変えよう」
そう言って3人を連れ出した………
「先ずは俺の今までの事を説明から始めるか………」
俺の過去話を先輩とシャイデの事、バルトマンの前の事件の事、もちろんブラックサレナと一応、リンスの事を抜きにして話をした。
「………じゃあシャイデ先生は復讐の為に………?」
「ああ、それは何とか思いとどまらせたけど、その時に既にバルトマンは抜け出してて、後は神崎と一緒に撃退したんだけど………」
「捕まって無いってことは逃げられたんか?」
「ああ、俺達も満身創痍だったんでな………」
「そうなんだ………まあそうだよね、生きているだけでも凄いもんね………」
まあ実際は勝っちゃったんだけど………
「でもあの女の人達はどういう事?シュテル達はレイがやってくれたって言ってたけど………」
「さあ?戦うのに精一杯で全然覚えが無かったんだけど………もしかしたらバルトマンが関係あったのかも………」
そう言ってマリアージュの事はいかに分かりませんよアピールをする俺。
「そうなんだ………じゃあ零治にも誰が黒幕かはハッキリしないんだね………」
………フェイトさん、あなたは少しは疑う事を覚えたほうが俺はいい気がするけどな。
「まあお疲れって事やなぁ………だけど零治君、ちょっと聞きたい事があるんやけど………」
「何だはやて?」
「あの子達に何吹き込んだん?私かなりブロークンハートなんやけど………」
「あっ………」
取り敢えず、はやてに軽く説教された後、今度何か奢ることで落ち着いたのだった………
2時間目休み時間………
「そうか………加奈はやっぱり休みか………」
「ああ、部屋にこもってセイン達が話しかけても何も言ってこない………」
屋上に上がる階段に並んで座りながら加奈の話を聞いたが、やっぱり学校に来なかったか………
「だけど決断したんだな………」
「ああ、俺はあの3人が好きだ、あの3人じゃないと駄目なんだ………」
「そうか………」
そう言って桐谷はその後は何も言わない。
ただ黙って何かを考えてるみたいだ。
「分かった、だったら俺からは何も言うことは無い、加奈の事は任せて、お前はノータッチでいろ」
そう言って立ち上がる桐谷。
「おい、良いのかよそのままで………」
「決めたのなら中途半端な優しさは逆効果だ。優しすぎるのも考えものだぞ零治………」
桐谷はそう言って行ってしまった。
「だけどあのままじゃ駄目だろ………」
そう思うが俺にはどうにも出来ないよな………
今、桐谷に言われた様に俺が何を言っても駄目だろう………
「一体どうすれば………」
そんな事を結局チャイムが鳴るまで考えていた………
3時間目休み時間………
「アリサちゃん、良いの?」
「零治もなんか大変みたいだったらしいし、文化祭の片付けしてないからって怒れないじゃない………」
何か考え事をしているのかずっとボーッとしている零治。
それなのに、星達の様子もおかしい。
何かあったのかしら………?
「何だか悲しいね………」
「えっ?」
「なのはちゃん達もそうだけど、私達とは住む世界が違うんだなって………」
そう言われると悲しくなる。
零治はあっちの世界とは関わりたくないと言ってたけど結局事件に巻き込まれてるし………
私達にも何か手伝えれば良いんだけど何も出来ない………
「私達も魔法が使えたら………」
「そうだね………」
私達はそんな事を話しながら零治達の様子を見ていた………
「零治君、ボーッとしてるね〜」
「はい………」
今日の放課後、俺一人だけ会長室にお呼ばれされたのだが、結局加奈の事が頭から離れず、それどころじゃ無かった。
一体どうすればいいんだろう………
「ねえ零治君、次の生徒会選挙に立候補にしとくからそのつもりでね」
「はい………」
「あら?今日は素直ね」
「はい………」
どうすれば………
「本当にどうしたのかしら………こんなんだったら桐谷君かはやてちゃん呼んでおくべきだったわ………」
「はい………」
俺に本当に出来る事無いのか?
「………まあ好都合か。私の後任なんて零治君しか任せられないし」
駄目だ………もうこうなったら………
「会長………」
「ひゃい!?」
「?大丈夫ですか?」
「う、うん大丈夫だけどいきなりどうしたの?」
「実は………」
そう言って俺は加奈との出来事を仮名で簡潔に説明をした。
「なるほどねぇ………」
「相談されたけどどうすれば良いか分からないし、それでいて気まずいままっていうのも嫌なので………」
「う〜ん………」
先輩ならこういった相談も受けてそうだし、良い答えを出してくれると思ったけど………
「私から言えることは1つ、ほっときなさい」
「えっ!?でも………」
「確かに相手の女の子は辛いでしょうね。だけど女の子って男の子が思っているより強いのよ」
「ですが………」
「ここで男の子が優しくしちゃったら未練が残っちゃって吹っ切れなくなるわよ」
「………」
「零治君、優しすぎるのは逆に非情な事になるの。覚えておきなさい」
………桐谷と同じ事を言われたな。
「さあ、私の用は終わり!!もう遅いから気をつけて帰りなさい」
そう言われ、俺は渋々帰路についた………
「ただいま〜」
夕方6時ちょっと前。
時間的にはまだ陽が残っていても良い気がするが、すっかり暗くなってしまっている。
そんな事を思いながら家に着いたが、部屋の中が暗い。
「あれ?誰もいないのか?星?ライ?夜美?フェリア?キャロ?アギト?優理?」
全員の名前を呼ぶが反応が無い。
「どこいったんだ………?」
そう思い、カバンから携帯を取り出すと一通のメールと着信履歴があった。
「あちゃあ、連絡入ってるじゃん」
そう呟き、取り敢えず先にメールを開いた。
差出人は星だ。
『レイ、突然で済みません、私とライ、夜美は有栖家を出ます。いつまでもお世話になってる訳にはいきませんから。レイは私達の事は気にせず、加奈と幸せになってください………今までありがとうございました』
「は?」
俺は暫くメールの意味が分からなかった。
俺と加奈が?
星達が出ていく?
ブーブーブー!
携帯が震え、慌てて出る。
電話の相手はフェリアみたいだ。
『やっと出たか!!零治、大変だ!!星達が………』
「ああ、今メールを見た!!どこに行ったか知らないか!?」
『私も桐谷の家に寄っていたので帰るのが遅かったからな………キャロは友達と、アギトと優理は丁度少し家を出ていた時みたいだ』
くそっ、一体何処に………
『今アギト、キャロ、優理と一緒に探している所だ、零治も………』
「ああ、当然だ!!」
俺は慌てて家を出た………
「星ー!!ライー!!夜美ー!!」
フェリアの話だと家にある転移装置は使った形跡が無かったのでまだこの町にいるだろうって話だ。
今、俺は海鳴市にある高台を目指しながら探していた。
くそっ、何でこんなことに………
「星ー!!ライー!!夜美ー!!」
もう一度叫ぶが反応が無い。
魔力で探そうにもあいつらも基本リミッターをしているので探せないし………
携帯も切っているみたいで繋がらない。
「くそっ!!」
怒り任せに電柱を殴る。
手に痛みがあるがそれも気にならなかった。
「何で俺は………!!」
加奈の事ばかり気にして星達の事なんて頭から完全に離れてた。
確かにそっけないと感じたのに………自分の事で一杯一杯になって………
「俺はあいつらが一番なのに………」
走り続けていたせいか、息が続かず、足が止まる。
「星………ライ………夜美………」
情けないが、3人が居ない生活なんてとても考えられない。
自分の中で悪い方向の想像が膨らんでいく。
「どこだ………」
それでも歩みを止めず探し続ける。
「はあはあ………あれ?ここは………」
今まで気が付かなかったが、探している内にどうやら俺は懐かしい場所にやって来てしまったらしい。
「ここであいつらと会ったんだよな………」
五年前、学校帰りに感じた僅かな魔力を感じて向かった場所。大きな木が一本ある空き地、あの時はその場所で消えそうになっていた。
そんな事を思ってると、俺の探し人3人の姿が見えた。
今すぐにでも抱きつきたい気持ちを抑え、ゆっくり近づいた………
「思えばここが最初の出会いだったんだぜ、3人共」
木の下で寄りかかっている3人、星、ライ、夜美にそう言った。
3人共旅行バックが足元にある。
「そうだったな、我等はここで零治に助けられた」
「僕達の名前もここで付けてくれたんだよね?」
「そうだよ」
そう言って俺は3人に近づく。
「あれからもう5年ですね………」
「ああ、色々あったな………」
そんな事を言いながら4人ですっかり星空になった空を見る。
「なあ何を考えてこんな行動に出たのか分からないけど、家に帰らないか?」
優しくそう言うと3人は寂しそうに下を向いた。
「私達は………帰れないです………」
は?
「だって僕達が一緒にいたらレイと加奈の邪魔になっちゃうから………」
邪魔………?
「我等はもう充分レイに幸せを貰った、今度はレイが幸せになる番なのだ………」
何を言ってんだコイツら………?
「私達の事は気にしないで………でも優理達の事はお願いします………」
「あのな、さっきから何を言ってるんだ、お前ら?」
「えっ!?だってレイは加奈の事が好きなんでしょ………?」
「まあ好きだよ」
「だったら我等の事は………」
「だけどそれ以上にお前らの事が好きだ」
そう言うとポカンとビックリした顔で硬直する3人。
「えっ………でも私達は家族だって………」
「ああ、家族としてもだが、俺自身がお前たち3人に惚れてるんだ」
そう言うと驚いた顔でポッと顔が赤くなった。
っていうか俺自身も顔が赤いと思う。こんな感じに堂々と告白したのは人生で初めてだ。
「でも、でも………」
「でもじゃない。俺は3人じゃないと駄目なんだ………」
そう言って3人を抱き寄せた。
「最初の時とは違う、俺には3人がいないと駄目になるんだ………さっきも3人が居なくなると思うと心が折れそうな位苦しかった、辛かった………こんな思いを抱くのはお前逹だけだ………だから頼む、これからも俺と一緒に居てくれ、俺には3人が必要なんだ!!駄目な俺を支えてくれ!!」
真剣な顔で言ったことに信憑性が増したのか、まだ信じられないって顔で、
「はい………」
「うん………」
「ああ………」
3人は気の無い返事をした。
「ありがとう………帰ろう、俺達の家へ。そして皆でこれからも………」
そう言って俺達は歩きだした………
「星!ライ!夜美!」
「お姉ちゃ〜ん!!」
さて、見つかったと連絡し家に帰ると、優理が怒った口調で、キャロが涙目でタックルした。
小さい2人だったが、不意のタックルだった為、星達3人はそのまま背中から倒れた。
「痛たたた………いきなりは無しだよ………」
「うるさい!!勝手に3人で何処かに行こうとして………」
「済まなかったな優理」
そう言って夜美が優理を優しく撫でる。
「キャロもごめんなさい、もう何処にも行きませんから………」
「本当に?」
「うん、約束するよ!!」
ライの言葉に安心するキャロ。
「やっぱり有栖家にはお前達が欠かせないんだよ………」
「よかったな零治」
「本当にだ、いきなりで心配したぞ………」
「だな、2人共もありがとな」
「いいって」
「当たり前の事をしただけだ………しかし今日の夕飯どうする?」
「あっ………」
時刻は既に午後21時。
「軽く何か作るか」
そう言って俺は星を呼び、一緒にオムライスを作るのだった………
「ふう………」
深夜1時過ぎ。
ベランダに出て空を眺める。
家の中は静かで他のみんなは夢の中だろう。
俺は中々眠れなかったので、ベランダで黄昏ていた。
「風が気持ちいい………」
「そうですね」
いきなり声をかけられ、少しびっくりしながら後ろを見るとそこには星、ライ、夜美がいた。
「なんだ、まだ起きてたのか」
「はい、どうしても眠れなかったので………」
「実は僕も………」
「我もだ………」
「そうか、まあ俺もだけど………」
そう言った後暫く無言で風を感じていた。
というのは嘘で、3人がかなりモジモジしていて気になっていた。
「あ。あのねレイ………」
一番最初に話しかけてきたのはライだ。
だけどいつもの元気な所は無く、モジモジしながら話しかけてきた。
「ぼ、僕もね………レイと同じで………」
とそこまで言うと顔を真っ赤にしてモゴモゴし始めた。
「顔真っ赤だけど大丈夫かライ?」
「大丈夫、大丈夫だから!!」
そこは力を込め言うライ。
「分かった、だけどボリューム下げてな」
「う、うん………」
『じゃんけんでトップバッターになったのはライだろうが、覚悟を決めろ』
『でも実際に言うとなると緊張しちゃって………』
『ならば先に私が言います』
『待って!言うから、言うから!!』
今度は俺に聞こえないようにこそこそ話している。
もう部屋に戻って寝ようかな………
『いや、やはりここは3人で言うべきではないのか?』
『えっ!?ですが………』
『1人ずつ順番だなんて必要ないだろう。我等は3人いつも一緒だしな』
『うんそうだね、そうしよう星!』
『………分かりました。逃げているような気がしますが、そうしましょう』
ん?やっと話し合いが終わったか?
「………レイ、私達は助けられてからずっとレイと共にありました」
「レイはどんな時も僕達の事を考えて行動してきてくれた………」
「我等はその事にはとても嬉しかったし、感謝もしている」
「まあ俺が好きでやってきた事だけどな」
「それでも私達は嬉しかったですし、幸せでした………だけど………」
「だけど?」
「僕達がレイの幸せを奪ってるんじゃないかって思ったんだ」
そんなバカな………
「それを感じたのが加奈の話をたまたま聞いてしまった時だ。加奈以外でもそうだが、レイに好きな人が居ても我等が居てはレイはそれも簡単に手放すと思ったのだ………」
「だから私達はレイの家から出ようと思ったんです。………まあ私達もたいした考えも無く出ていったので家出みたいになってしまいましたが………」
「だけどね、僕達も簡単にレイやこの家を捨てられなかったんだ………」
「3人で歩いていても、どうしても此処の事を思ってしまうのだ………」
「レイの顔、フェリアの顔、キャロの顔、アギトの顔、優理の顔………みんなの顔が浮かんで、気が付けば一番大事な場所になっていたんです。どうしても離れたくないと思ったんです」
「そんな事を話しながら歩いてると、いつの間にかあの場所に居たんだ。レイと初めて会って家族として受け入れてくれた場所」
「我等にとって感慨深い場所に………」
「そしてあの場所でレイは私達の事が一番好きだって言ってくれた………一緒に居てほしい、支えてほしいって言ってくれた………」
「僕達も本当に嬉しかったんだ。そんな風に思ってくれたなんてってね」
「だから我等もレイに言いたいことがあるのだ」
そう言って3人は揃って深呼吸し、そして………
「「「レイの事が世界で一番大好きです!!」」」
そう俺に向かって3人で声を合わせて言った。
いや、直に改めて言われると何だか照れくさいな………
「俺の答えは言った通りだ。俺はお前逹に一生側に居て欲しい………いつまでも………」
そう言うととても綺麗な笑みを見せる星。
子供の様に無邪気に嬉しそうにするライ。
顔を真っ赤にしながらも嬉しそうにする夜美。
ああ、やっぱり俺はこの3人が好きなんだと実感した。
「レイ、不束者ですがよろしくお願いしますね………」
「僕も………ふつかもの?」
「不束者だ馬鹿者」
「馬鹿とは何だよ!!僕だってわざとなんだからね!!」
そんなライと夜美のやり取りに自然と笑みが溢れる。
「俺は幸せだよ………出来ればこの平凡な毎日が続きますように………」
俺はそう呟きながら風を感じた………
「で、どうです?いつになく忙しそうですが………」
「まあね、あの脳みそ達が死んでから管理局では未だに浮き足だってるよ………」
大きく広い部屋、そこに一人の男とその目の前に一人の男が椅子に座っていた。
「マリアージュシステムは使えそうか?」
「出来は70%と言った所でしょうか………やはり冥王抜きでは完璧なマリアージュは難しいので………」
「まあそこまでは期待していないさ。マリアージュとして動いてくれれば良い、それに面白い人材も引っかかったしね………」
そう言って男はディスプレイを操作し、そこには一人の男が写った。
「レジアス・ゲイス………面白い男だよ、私の事にも気がつき、その上で地上の為とマリアージュシステムの提供を願い出てきた」
「なるほど、確かに地上は相変わらず人材不足ですから、マリアージュを利用できればそれも無くなる………しかし信用出来るのですか?」
「ああ、彼は前はスカリエッティとも繋がっていたからね、地上はそれほど人材不足なのさ」
「なるほど………」
「これにより、研究も一段とやりやすくなるだろう。………クレイン、君は引き続き、マリアージュシステムの改良を」
「はい、ヴェリエ・マーセナル教皇、いや、ヴェリエ・マーセナル元帥………」
そう呼ばれたヴェリエは嫌な笑みを浮かべた………
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