戦国異伝
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第百話 浅井の活躍その八
「この度のことは猿夜叉あってのことじゃ」
「ではお礼の品をですか」
「浅井殿に」
「浅井家の家臣の者達にもじゃ」
お礼の品を渡すと言う信長だった。
「茶器も剣も弾むぞ」
「そうされますか」
「ここは」
「銀も金も用意する」
そういうものもだというのだ。
「他には何がよいかのう」
「お渡しするものに迷いますか」
「それ程までですか」
「嬉しい悩みじゃな」
「ですな。ではまずは」
「その浅井殿とお話をしましょう」
「猿夜叉と勘十郎を呼べ」
二人の弟達だった。一人は妹婿であり義理の弟、もう一人は同じ母から生まれた実の弟。この二人の弟達を同時に呼べというのだ。
「そうせよ。よいな」
「ではすぐここにお呼びします」
「それでは」
「馬上でよい。またすぐに動く」
信長は笑って言った。信長も周りの者達も馬に乗っている。今都に来たばかりなのでまだ馬からは降りていないのだ。
そのうえでだ、信長は毛利と服部に伝えるのだった。
「だからじゃ。よいな」
「ではその様にも」
「お伝えします」
「三好が動くのは待っておった」
信長は目を光らせて言う。
「そして動いた時にじゃ」
「はい、これからですね」
竹中が横からだ。信長に言ってきた。
「和泉に向かいそのうえで」
「四国に行くぞ」
「そして讃岐と阿波を手に入れますか」
「淡路もな。三好を完全に下す」
今ここでだというのだ。
「そうする。よいな」
「それでは」
「四国を手に入れれば瀬戸内の東も手に入る」
そうなるというのだ。
「よいことじゃ。じゃからな」
「今が好機かと」
竹中もそう思うというのだ。三好を倒す好機だとだ。
「それでは」
「そうじゃな。いよいよじゃな」
信長はこうした話をしたうえでだ。信行、そして長政と会うことにした。二人は馬に乗りながら並んで信長の前に出た。二人はすぐに馬から降りて下馬の礼をしようとする。だが、だった。
信長は微笑を見せてだ。こう二人に言ったのであった。
「よい」
「宜しいですか」
「馬から降りずとも」
「そうじゃ。よい」
こう言ったのである。
「すぐに進む。だからじゃ」
「進むといいますと」
「今より和泉から四国に向かう」
実際にだ。そうするというのだ。
「だからじゃ。挨拶は手早く済ませようぞ」
「それ故にですか」
「そういうことじゃ。それでじゃ」
信長はさらに言う。
「滝夜叉、今回は御主のお陰じゃ。よく来てくれた」
「話を聞いてすぐにでした」
都に兵を率いて上がったとだ。長政は答えた。
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