戦国異伝
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第百話 浅井の活躍その六
彼はいぶかしむ目でだ。こう言ったのである。
「何処に逃げるのかのう」
「終われますか」
「そうされますか」
「忍の者はおるか」
信行は周りの者達に問うた。
「今ここにおるか」
「いえ、おりませぬ」
「申し訳ありませんが今は一人もおりませぬ」
「そうか。では仕方ないか」
難しい顔で言う信行だった。
「今はな」
「はい、あの者達を追うのもです」
「それも難しいですな」
「追いたいができん」
実際にそうだと言う信行だった。
「残念だがな」
「三好ですか」
「あの者達を追うべきですな」
「うむ。我等の敵は三好だ」
まさにだ。彼等が主な敵だというのだ。
「今の織田家の第一の敵でもあるからな」
「では今からですな」
「すぐに追いましょう」
「そして戦いましょう」
彼等も言ってだ。そしてだった。
彼等はすぐに本国寺から逃げ去ろうとしている三好の兵達を追いにかかった。無論都の外にいる彼等もだ。
その進撃中にだ。浅井の兵達とも合流し信行は長政の馬の横に己の馬をやってだ。彼にこう言うのだった。
「かたじけない」
「いえ、お気遣いなく」
長政はこう信行に返した。
「このことは」
「そう言って頂けますか」
「はい、我が浅井家は織田家の盟友」
「それ故にですか」
「盟友を助けるのは当然のことです」
これが長政の言葉だった。
「ですから」
「左様ですか」
「そうです。それよりもです」
長政はここであらためて言ってきた。
「三好ですが」
「そうですな。追ってそのうえで」
「倒しましょう」
こう言うのだった。
「少しでも兵を減らしておけば」
「後々楽になりますな」
「だからです」
「では今より」
「はい、行きましょう」
二人で言い合いだ。彼等は馬を走らせた。青い軍勢も藍色の軍勢も彼等に続く。そうしてだった。
彼等は進む。そのうえで三好の兵達を散々に破る。その三好の軍勢の状況は。
三人衆は何とか軍の形を保とうと動き回っていた。そして言うのだった。
「耐えよ!今は耐えるのじゃ!」
「よいな、船着場まで向かうぞ!」
「そこで船に乗って川を下って進む!」
「四国まで下がるぞ!」
こう指示を出すのだった。彼等も必死だった。
そして三好の兵達もだ。後ろをしきりに振り向きながらも何とか逃げていた。そのうえでこんなことを言っていた。
「まさかのう」
「ここで浅井が出て来るとは」
「しかも強いぞ」
「動きも速い」
その追い立ててくる彼等の方を振り向く。実際に浅井の軍勢の足は速い。馬に乗っている者は少ないがそれでもなのだ。
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