戦国異伝
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第百話 浅井の活躍その五
「助かります」
「はい、。どうやら何とかなりそうですな」
「なります」
明智はその彼等を見て言った。
「では少しだけです」
「ここを守ればいいですな」
「そうかと」
また言う明智だった。
「ではこのまま」
「はい、凌ぎましょう」
和田も応えてだ。そうしてだった。
彼等は浅井の援軍に意気あげた。その浅井の軍勢の先頭において馬を駆っていたのは。
長政だった。彼は槍を手に後ろに続く兵達に告げていた。
「半分はわしと共に本国寺に向かう!」
「そして後の半分はですか」
「織田殿への援軍ですな」
「それに向ける」
まさにそうだとだ。答える長政だった。
「よいな。そうするぞ」
「はい、それではです」
「そのままです」
「進みましょう」
兵達も応えてだ。そのうえでだった。
彼等は雪崩の如く突き進み本国寺に届いた。そうしてだった。
三好の兵達を蹴散らした。それは瞬く間だった。
それを見てだ。義昭は目を丸くさせて言うのだった。
「あの藍色の兵達は確か」
「はい、浅井殿です」
「あの方の兵です」
「そうじゃな」
義昭は幕臣達のその言葉に頷いた。
「まさかあの者達が来るとは」
「近江から都は近いですから」
ここで言ったのは和田だった。
「それ故にでしょうか」
「左様か。そういえば浅井長政の室はあれじゃったな」
「はい、織田殿の妹君です」
「何でも市といったな」
義昭もその名前は知っていた。
「何でも背は高くかなりの美女だそうじゃな」
「その様ですな」
「そうか。あの者が来てくれたか」
「織田殿の盟友ですから」
「そうじゃな。助かったわ」
ここまできて胸を撫で下ろす義昭だった。そうしてだ。
蹴散らされていく三好の者達を見てだ。こう言うのだった。
「都から追い出せるな」
「はい、間違いありませぬ」
「このままいけば」
いけるとだ。幕臣達も答える。
「全ては順調にいっております」
「ですから」
「よかったわ。助かったわ」
ここでも胸を撫で下ろす顔だった。
「全く。どうなるかと思ったわ」
「そうですな。とにかくです」
「これでこの戦いは終わりました」
「織田殿も来られるでしょうし」
「後は」
「三好をどうするのじゃ」
義昭は次はこのことについて言及した。
「信長はどうするのじゃ」
「さて。どうでしょうか」
「織田殿も今兵をこちらに向けておられますが」
「まずは都に着いてからですな」
「どうされるかですな」
「そうじゃ。そのことしかと聞くぞ」
義昭は口を尖らせて言う。
「信長自身にな」
義昭はこれで終わった。だが、だった。
信行はあの僧兵達が退くのを見ていた。彼等は整然と、傷を負った者はおろか死んだ者まで担いで去っていく。それを見てだった。
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