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八条学園怪異譚

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第四話 ターニングポイントその七


 やはり一緒に帰る聖花に話した。聖花はそれを聞いてこう言うのだった。
「その兵隊さん海軍の人じゃないの?」
「海軍?」
「そう。今で言う海上自衛隊」
 この微妙な立場の組織の名前も出た。
「そこの人じゃないかしら」
「ええと。どうしてわかったの?」
「水産科よね」
 聖花はここから話す。
「海での授業が多いじゃない」
「ええ。そういえば」
「陸軍だと海とはあまり縁がないから」
 特に戦前の陸軍はそうだ。海軍とも犬猿の仲であったことはあまりにも有名だ。その対立はかなり深刻なものだった。
「それにね」
「まだあるの?」
「うん。軍服の話を聞いたら」
 聖花はその兵隊が着ている軍服のことからも愛実に話した。
「海軍のだから」
「陸軍と海軍で軍服違うの」
「そうなの。あっ、愛実ちゃんそのことは」
「はじめて聞いたわ」
 少し呆気に取られて答える愛実だった。
「そうだったの」
「そうなの。今だってそうよ」
「陸自さんと海自さんで制服違うの」
「空自さんもね」
「三つの自衛隊でそれぞれ違うの」
「まず。陸自さんは緑色でね」
 聖花は愛実にそのことを話す。彼女は自衛隊に関する知識は愛実よりある様だ。
「空自さんが青で」
「草にお空ね」
「そうそう、それで海自さんはね」
「青とか」
「黒なの。夏は白で」
「あれっ、海だから青じゃないの」
「元々は青だったらしいのよ」
 これはイギリス軍の軍服だ。所謂ネイビーブルーというかなり濃い青だったのである。ネルソンの頃の話だ。
「それがさらに濃くなって」
「黒になったの」
「それで白は夏とか暑い場所だと辛いから」
「あっ、日光を反射するから」
「そう。それで白なのよ」
「そういえば」
 ここで愛実は映画や漫画で観たことを思い出して聖花に話した。
「何か白い詰襟の格好いい軍服あるけれど」
「それが海軍、今も海自さんの軍服、制服なの」
「ううん、そうだったの」
「古いけれど白ランよね」
「白ラン!?それは知ってるけれど」 
 愛実はそれは知っていた。
「三十年位前の不良の人が着ていた学生服じゃない」
「まあ。多分海軍の軍服が元になったみたいだけれどね」
 その白ランはだというのだ。
「とにかく。それぞれの軍隊で制服が違うのよ」
「成程。そうだったのね」
「そう。で、その幽霊のことだけれど」
 軍服のことから幽霊のことがあらためて話される。
「海軍の人ね」
「ううん、そうなのね」
「ただ。どんな人かっていうと」
 そのことについては聖花は首を捻って言った。
「それはわからないわ」
「自殺した人って噂があるわよ」
「自殺ね。学校の怪談じゃよくあるけれど」
 屋上から飛び降りたり首を吊ったりしてそうして自殺した生徒や教師が幽霊となって出て来る、そうした話は確かにある。
「実際にあったら」
「記録に残ってるかしら」
「まずは学校の歴史から調べてみる?」
 聖花は考える顔で愛実に提案した。 
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