八条学園怪異譚
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第四話 ターニングポイントその八
「そうしてみる?」
「それから?」
「本当に自殺した人がいたら記録に残ってると思うから」
「事故とか言って隠蔽されてないかしら」
愛実は直感的にその可能性を指摘した。
「そういう話って」
「言われてみれば」
聖花も愛実の話を聞いてふと考えを止めた。それから。
愛胃にあらためてこう答えた。
「そうした話って事故とかで隠されるわよね」
「そうよね。あまりいい話じゃないけれど」
愛実は怪談から現実の話に戻って述べた。
「いじめの自殺とかってよくね」
「最初は事故死とかで処理されるわね」
「裏の世界じゃいつもみたいだし」
「あっ、よく聞く話ね」
「うん。だからこうした話って」
「公じゃ事故死扱いになるのね」
「そうなってないかしら」
愛実も考える顔になっている。二人で話してだ。
聖花はこう愛実に答えた。
「じゃあ。事故死もね」
「調べるのね」
「自殺がなくても事故死の記録があったらそれになるわね」
即ち自殺になるというのだ。
「しかも海軍の人が死んでると」
「記録として残ってるわよね」
「ええ。じゃあ」
それならとだ。聖花はまた言ってだった。愛実に対してこうも言った。
「学校の。戦前の記録調べてみましょう」
「戦前の何時頃?」
「そうね。昭和の」
聖花は腕を組んで確かな顔になって考えながら話す。
「大体十四年から二十年辺り?」
「太平洋戦争前から調べるの?」
「こうしたことって広く調べた方がいいと思うから」
だから戦争が起こる前から調べるというのだ。
「そうした方がいいと思うけれど」
「戦争が起こってからじゃなくて」
「軍隊が学校に入る時期からでいいけれどね」
具体的にはその時期も確かめるというのだ。
「それからね」
「調べればわかるのね」
「ええ。そうしてみましょう」
「まずは調べることね」
「幽霊の存在は否定しないけれど」
「あれ、しないの?」
「人には心があるじゃない」
聖花が言うのはこのことからだった。
「心って魂じゃない」
「魂だから?」
「そう。身体があるかないかだけだから」
そしてそれがだというのだ。
「だから幽霊っていうのはね」
「ただ身体がなくなっただけ?」
「そう思ってるから」
だから幽霊もいるというのだ。
「身体があるかないかだけだからね」
「ううん、そうなの」
「幽霊っていっても生霊と死霊がいてね」
「あっ、それは知ってるわ」
愛実も生霊と死霊のことは知っていた。両者の違いもだ。
「生霊は生きている人から心、魂だけが出て」
「そう。生きている人の身体からね」
源氏物語や吉備津の釜等に出て来る。こうした霊魂もかなり恐ろしいものがあるのはその古典においても書かれている。
「出て来るもので」
「死霊は死んだ人の心で」
「どっちも。それなりのものがあって出て来るものだから」
それが生霊、死霊だというのだ。
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