八条学園怪異譚
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第四話 ターニングポイントその五
その存在だと聞いてだ。愛実は言った。
「ちょっと」
「怖い?」
「そういうのは駄目?」
「ちょっと」
実際に顔を曇らせて言う愛実だった。またこの言葉を出して言ったのだった。
「そういうのは」
「まあ。一人で行くのはよくないわね」
「お勧めしないわ」
「そうよね。悪霊とかって」
不吉に過ぎた名前だった。今は特に。
それでだ。また言うのだった。
「勘弁して欲しいわ」
「だから。一人では行かないこと」
「そして何の備えもしないで行かないこと」
「このことは気をつけてね」
「何があるかわからないから」
「じゃあどうしようかしら」
愛実は考えだした。腕を組み難しい顔になってだ。
そのうえでだ。こう言ったのだった。
「まず神社に行ってお守りでも買おうかしら」
「あっ、それは必須ね」
「ちゃんとしないと駄目よ」
クラスメイト達もそこは言う。
「お経とかも持って行かないと」
「そうした備えはしないとね」
駄目だというのだ。こうした霊的な備えは必要だというのだ。
「流石に吸血鬼とかはいないと思うけれどね」
「十字架とかが必要になるとは思わないけれど」
「それはないわよね」
ここは日本だ。だからだとだ。
愛実もそうした西洋の妖怪等については懐疑的にだ。こうクラスメイト達に言った。
「狼男とか。そういうのは」
「ああ、銀の弾丸でないと死なないっていうあれね」
「ああいうのね」
「そういうのはいないわよね」
愛実はそのことをクラスメイト達に確認した。
「幾ら何でも」
「ううん、狼男とかはね」
「流石にいないと思うわ」
「ここ日本だからね」
「それはないわね」
「吸血鬼もね」
それもいないだろうというのだ。
「いないわよ」
「日本でよかったわ」
吸血鬼や狼男の様な桁外れの恐ろしさを誇る西洋の妖怪達がいないことにほっとしている愛実だった。そのうえでの言葉だった。
「本当にね」
「いるとしたら河童?」
「それよね」
「あとろくろ首とかからかさとか」
「そんな妖怪よね」
日本ならばだった。出て来るとすればそうした妖怪達が考えられた。
「まあ学校だったら花子さんとか?」
「この学校にいるかどうかはわからないけれどね」
「そんな妖怪位よね、学校にいるのって」
「普通はそうよね」
「うん、私妖怪のことには詳しくないけれど」
それでもだとだ。愛実は怪訝な顔になって首を捻りながらクラスメイト達に話した。
「学校にいる妖怪っていったら花子さんとかよね」
「絵が動くとかね」
「鏡とかね」
「それか幽霊ね」
「そんなところよね」
「そうよね。幽霊の話が多いわよね」
愛実は学校の怪談というと第一に幽霊を思いついた。そしてそれは今もだった。
その兵隊の幽霊についてだ。クラスメイト達に真剣に聞いたのである。
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