八条学園怪異譚
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第二話 嫉妬その一
第二話 嫉妬
愛実は朝にだ。まずはだった。
チロの散歩の後でシャワーを浴びる。そしてだった。
そのうえで八条高校商業科の制服の一つを着た。赤いブレザーに緑と赤のタートンチェックのミニスカート、そして黒いタイと白いブラウスの制服だ。その制服を着てだ。
家のちゃぶ台に座る。そこにいたのは姉の愛子だけだ。姉は私服を着ている。その楚々とした春の制服を見てだ。愛実はこう言った。
「今日の服もいいわね」
「有り難う。似合うのね」
「似合ってるよ。お姉ちゃんって白が似合うけれど」
「今の服は草色だけれどね」
草色の軽やかな感じのワンピースだ。スカートの丈は長い。その上から緑のカーディガンを羽織っている。その彼女を見て言うのである。
「似合ってるのね」
「そう。似合ってるの」
「ええ、本当にね」
こう言うのだった。姉に対して。
「お姉ちゃんって何でも似合うのよね」
「それはないと思うけれど」
「ううん、本当にね」
似合うとだ。愛実は笑って愛子にまた言う。
言いながら御飯を自分で入れてそうしてだ。その上にかき混ぜた納豆をかける。それを食べながら姉に笑顔で話した。
「ううん、朝に納豆はね」
「好きでしょ」
「たまにはお洒落な朝食もいいかなって思うけれど」
「それはね。ちょっとね」
「ないっていうの?」
「うちじゃ似合わないわよ」
愛子はこのことは慰める感じで愛実に言った。
「残念だけれどね」
「ちゃぶ台にパンとかは?」
「トーストが似合うと思う?こうした純和風の場所に」
「似合わないわよね」
「そうでしょ。紅茶とかもね」
「全然似合わないわよね」
愛実も自分で言う。このことを。
「だからね。そうしたことはね」
「望まない方がいいのね」
「ステーキが出てもね」
輸入肉のだ。そのステーキでもだというのだ。
「やっぱりね。ウスターソースかお醤油が似合うからね」
「そうなのよね。それでフォークやナイフは使っても」
「お箸でしょ」
ちゃぶ台といえばそれだ。やはりだ。
「洒落た食べ方なんてね」
「トンカツも海老フライもコロッケも」
そうした洋食系でもだ。それでもなのだ。
「そもそもうちって食堂だから」
「そんな洒落た感じは似合わないのね」
「そう。まあそれでもね」
「それでもって?」
「美味しいからいいじゃない」
このことは笑顔で話す愛子だった。
「そうでしょ。美味しいから」
「ううん、確かに」
「その納豆だって卵焼きだって」
見ればおかずは納豆だけではない。卵焼きに胡瓜の漬物、それに味噌汁がある。どれも朝の和食の定番だ。
そうしたものを食べながらだ。愛子は自分と同じものを食べている愛実に話すのだった。
「美味しいでしょ」
「お父さんとお母さんが作ってくれたのよね」
「ええ、そうよ」
「それでお父さんとお母さんは?」
「今はお店でお掃除してるわ」
「朝のお掃除ね」
弊店した時もするが朝もするのだ。この店は清潔なことで知られているがそうした努力の賜物なのである。
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