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八条学園怪異譚

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第一話 湧き出てきたものその二十一


 だがそのことには自分では、話を聞く聖花も気づかないままだ。愛実は言うのだった。
「だから。いつもね」
「一緒にいたいわよね」
「高校ではね」
 本来の自分の心でだ。愛実は言っていく。
「一緒のクラスになりたいから」
「そうよね。中学の時は一緒になれなかったから」
「だからね」
 それでだというのだ。
「高校ではね」
「一緒のクラスになれたらいいね」
「そうね。いえ」
「いえ?」
「絶対にね。一緒になれるから」
 愛実は彼女にしては珍しく前を向いた言葉で答えた。
「そう思えばね。絶対にね」
「そうね。思えばね」
「一緒のクラスになれるから」
「そうよね。お願いすればね」
「テストにも一緒に合格して」 
 それでだというのだ。
「一緒のクラスになってね」
「一緒に楽しくやっていけるわよね」
「私、やっぱり」 
 色々とくよくよしてもだった。自分の考えの根元にあるものは今は自然に出てきた。そしてその出てきたものに従ってだ。愛実はこう言ったのだった。
「聖花ちゃんと一緒にいたいからね」
「私達ってお友達だからね」
「だからね」
 それ故にだとだ。また答える愛実だった。
「一緒に合格して」
「一緒のクラスで楽しくやろうね」
「それじゃあ」
「それじゃあよね」
「テスト、頑張ろうね」
「お互いにね」 
 二人で笑顔で言い合う。そしてだった。
 聖花は愛実にあるものを渡した。それは。
 ミサンガだった。それは七色のミサンガだった。それを二つ出してだ。
 一つは自分の右手に、そしてもう一つは愛実に渡してだ。こう言ったのである。
「これね。願掛けでね」
「あっ、これが切れた時に」
「そう。お願いが適うから」
 ミサンガで言われていることをだ。そのまま言った聖花だった。
「だから。二人でね」
「うん、二人でね」
「これ着けよう」
「それじゃあ」
 愛実はにこりとしたままそのミサンガを受け取った。そのうえでだ。
 自分も右手にミサンガを着ける。そうしてこう言うのだった。
「私ね。このミサンガにね」
「テストの合格と、よね」
「ええ、聖花ちゃんと一緒にクラスになれるように」
 このこともお願いするというのだ。
「そうお願いするから」
「ええ。あとこのテストの後に」
「何処に行くの?」
「何処がいい?」
 このことは愛実が問うた。相談だtった。
「二人で合格したらね」
「何処かに行くにしても何処がいいかしら」
「八条テーマパークでどうかしら」
「八条テーマパーク?ああ、遊園地の」
「そう。そこにしようと思うけれど」
 愛実はこう聖花に提案したのである、
「どうかしら」
「いいわね。それじゃあね」
「ええ、八条テーマパークね」
「あそこってデートスポットでもあるけれど」
 それでもだとだ。今度は聖花が話す。
「それでもね」
「そうよね。女の子二人で行ってもね」
「デートになるわよね」
「えっ、そうなるの?」
「ええ。お友達同士でもね」
 そうなるとだ。愛実に言う聖花だった。
「そうなるじゃない」
「そうなるのね」
「デートする?あのテーマパークで」
「楽しみね」
 これが愛実の返事だった。
「それもね」
「そうね。じゃあ合格したらね」
「二人でテーマパークに行こうね」
「絶対にね」
 笑顔で話す二人だった。そうしてだった。
 二人は無事合格して入学、卒業のお祝いを兼ねて一緒にテーマパークに行った。そうして二人で楽しんだのである。
 それが終わって家に戻ってだ。愛実は愛子に笑顔でこう述べた。
「二人でいるとね」
「やっぱり楽しいでしょ」
「ええ、本当にね」
 こうだ。満面の笑顔で姉に言ったのである。
「よかったわ。高校にも合格したし」
「聖花ちゃんと一緒によね」
「うん。色々な場所で遊んだわ」
「よかったわね。ただね」
「ただって?」
「聖花ちゃん今度は。お家を出る前に携帯のメールで連絡して確かめたけれど」
 聖花のうっかりしたところを知っているからだ。事前にそうしたのだ。
「お弁当忘れかけたのよ」
「えっ、お弁当を?」
「そうなの。聖花ちゃんのお母さんが作ってくれたお弁当をね」
 それをだ。忘れそうになったというのだ。
「お家出る時に私が連絡したらね」
「そこでわかったのね」
「そうなの。聖花ちゃんってそうしたところはどうしても」
「昔からよね。だから愛実ちゃんがね」
「私が?」
「高校でも助けてあげないといけないわよ」
 愛子は笑顔で家に帰ってきた妹に話す。
「そうしたところはね。愛実ちゃんだってお勉強とかで助けてもらってるわよね」
「実際。高校に合格できたのって」
 姉に言われて気付くこと、それはというと。
「聖花ちゃんに色々教えてもらったからね」
「それでよね」
「やっぱり私達って」
 どうかというのだ。姉に対して言っていく。
「お互いにいないと駄目なのかしら」
「友達ってそういうものよ。だからね」
「うん。これからもよね」
「仲良くしなさいね。二人で」
「ええ、そうするわ」
 今は笑顔で頷くことができた。愛実は本来の彼女になっていた。
 そしてその笑顔で卒業、入学を迎えるのだった。そしてそれが彼女にとって運命のはじまりになるのだった。自分自身で招いてしまった。


第一話   完


                   2012・7・5 
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