八条学園怪異譚
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第十六話 柴犬その八
「本当jにチロちゃんって大人しいよね」
「でしょ?こうした時に動かれるとね」
「怖いからね」
「よく猫ちゃんとかでこんな時動くじゃない」
「そうそう、籠の中に入れてるとね」
「犬は普通は犬以上に動くけれど」
犬はおおむね猫以上jにテンションが高い、だからよく動くのだ。
「それでもチロは賢いから」
「こうした時有り難いわよね」
「本当にね。それに自転車って」
「結構いいわね」
聖花も実際に自転車に乗りながら応える。
「これで登校するのも」
「バスだと信号待ちの時間が結構あるけれど」
「自転車ってそれもないしね」
「ひょっとして登校時間も自転車の方が短いかしら」
「ちょっと後で計ってみる?」
「そうしてみよう。バスより短く済むのなら」
それならというのだ。
「自転車の方がいいわよね」
「ただ雨だとね」
今は梅雨だ。それならだった。
「自転車は辛いから」
「その時はバスね」
「そっちの方がいいわね」
このことも話される。
「雨の自転車は悲惨よ」
「合羽着るやり方もあるけれどね」
「あれ着る前と着る時が大変だから」
「畳まないといけないしね」
「だからちょっとね」
愛実は少し難しい顔になって聖花に話す。話すその間も自転車の前の籠の中のチロから目を離さない。
「雨だとそもそも自転車自体をね」
「止めた方がいいわね」
「そう思うわ。けれど雨じゃないと」
普通の晴れの日はというと。
「こうして自転車で行くのもいいわね」
「今度から自転車で通学するのもいいわね」
「手軽で快適だし」
「運動にもなるし」
自転車通学のいいところは他にもあった。
「それに如何にも高校生って感じだし」
「そうね。青春っていうかね」
「商業科の女の子って日照りやすいけれどね」
男子生徒の数が少ないからだ。となると女子が余るものだ。
「それでもこうした青春ってね」
「いいわよね」
「だから自転車もいいわね」
「そうね」
夜だが朝にする様な話もした。そうした話をしているうちにすぐに学校に着いた。
自転車はとりあえず農業科の自転車置き場に置いてチロを連れて農業科の畑のところに向かおうとした。だが。
ここで後ろから彼の声がしてきた。
「今日はここに来たのか」
「あっ、その声は」
「いらしてたんですか」
二人が振り向くとそこには日下部がいた。ただ服は黒の詰襟から白の詰襟に変わっている。
聖花はまずはその白い詰襟を見て言った。
「夏服になったんですね」
「如何にも」」
日下部もその通りだと答える。
「海軍の礼服だ」
「ですよね。見栄えがいいですね」
「海軍の軍服はデザインがいい」
陸軍のものと比べてである。
「特に夏はこれに限る。実体はなくなったから寒暖は感じないがな」
「つまりお洒落ですか」
「そうなる。正直夏でも冬服のままで構わないが」
寒暖は感じないから別にそれでもいいのだ。だが、だったのだ。
「やはり夏はこれだ」
「白ですね」
「そういうことだ」
「ううん、格好はいいですけれど」
愛実は聖花とは違うことを言った。
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