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八条学園怪異譚

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第十六話 柴犬その七


 愛実は真剣な顔で聖花に提案した。
「じゃあ今度はね」
「今日にでも行く?」
「そうね。今日のうちにした方がいいわよね」
 愛実は聖花の今の言葉に頷いた。やはり真剣な顔だ。
「今晩農業科に行って」
「絶対にそこにいるからね」
「それで若し揚げを盗み食いをしてるのなら」
「ちょっととっちめないとね」
「確か狐とか狸って結構弱点あったわね」
「犬苦手よ」 
 聖花が言う狐狸の弱点はこれだった。
「それもかなりね」
「ふうん、犬なのね」
「そう、狐とか狸って実際に犬に狩られることが多いから」
 山で野犬の餌にされることもある、かつてはニホンオオカミも天敵だった。
「だから犬が苦手なのよ」
「じゃあチロ連れて行けばいいわね」
 愛実は掃除をしながら決断を下した。
「そうすればいいわね」
「チロ連れて行くのね」
「学校の中に動物連れて行くのはどうかって思うけれど」
「今回は、なのね」
「ええ、見過ごせないから」
 やはり食堂の娘だからである。
「そうしようかしら」
「いいんじゃない?それで」
 そして聖花もパン屋の娘として愛実にこう答える。
「チロちゃんなら別に狐や狸を殺すってこともないでしょ」
「柴犬だからね」
 日本人に深く愛されている小さめの犬だ。勿論愛実も大好きである。106
「そこまで大きくないから」
「そうよね。チロちゃん気性も大人しいし」
「土佐犬みたいなことはないから」
 闘犬に使われる。大型で気性の荒い犬である。
「それはね」
「というか柴犬って闘犬じゃないわよね」
「元々は狩りの為の犬らしいわ」
「そうよね、小さい獲物を捕まえるね」
 この点では秋田犬等と同じだが狩りの対象が違う。
「そういった犬だったわね」
「今では番犬だけれど」
 若しくはペットだ。
「そういった目的でできた犬だからね」
「小さいけれど形は狼だし」
「でしょ?だからチロ連れて行ってもいいわよね」
「自転車の籠に乗せて行くの?」
「そうしようかって思ってるけれど」
 愛実は考える顔で聖花に話す。
「どうかしら」
「いいんじゃない?チロちゃんそういう時はじjっとしてるし」
「でしょ?じっとするべき時はじっとする子だから」
 そうした大人しく賢い犬なのだ。だから愛実にとっても自慢の犬なのである。
「だからいいかしらって思うけれど」
「じゃあ連れて行こう」
「うん、それじゃあね」
「さて。狐と狸ね」
 聖花はあらためて言った。
「悪戯で有名だけれど」
「化かすのよね」
「そう、それだけれど」
「それってチロでどうにかなるかしら」
「みたいよ。狐も狸も犬が嫌いだから」
 それでだというのだ。
「その吠える声でびっくりして化かしたりしているのが解けるんだって」
「そうなのね。じゃあ余計にいいわね」
「行きましょう、すぐにね」
「悪い妖怪じゃなくても悪戯とかも過ぎるとね」
「ちょっとどうにかしないと駄目だからね」
 聖花も愛実に言う。
「ここはチロちゃんと一緒に」
「行こうね」
 こうした話をして二人はまた夜の学校に入ることにした。学校に入る時は制服だが今は二人共自転車に乗っていた。
 どちらも家で使う所謂ママチャリだ。愛実の自転車の籠には。
 柴犬が前足を籠に乗せている姿勢でちょこんといる。聖花はその柴犬を横から見てそのうえで愛実に言った。 
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