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八条学園怪異譚

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第十三話 理科室のマネキンその十二


「泉の可能性が」
「君達ならそれを確かめられるが」
「具体的にはどうすればいいんだ?」
「触ってみればいい」
 日下部はこう二人に告げた。
「君達が触れてみてだ」
「触れてそれで、ですか」
「何が起こるんですか?」
「若し我々が出入り出来る泉なら君達も通れる筈だ」
 それが可能だというのだ。
「おそらくだが」
「それじゃあ私達が通った記憶は」
「なくなるんですか?」
「そうかも知れない」
 妖怪や幽霊がそうなるなら人間もだというのだ。
「だがそれでもだ」
「行き来することは出来るんですか」
「それなら」
「そうだと思う。まだ泉が確かにあるかどうかはわからないが」
「ううん、どうしてこの学園に妖怪さん達が一杯いるのか気になりますし」
「それが泉から出入りできてるとしたらどんな泉が何処にあるか知りたいですから」
 純粋な知識欲、探求欲からのことだった。二人は言うならば冒険心やそういったものから泉の場所を知りたいのだ。どういった泉かも。
 だから日下部にもこう言うのだ。
「だからやっぱり」
「それじゃあ」
「では確かめることだ」
 日下部は二人に確かな声で告げた。
「自分達でな」
「はい、わかりました」
「この鏡に触ってみます」
「そうしてみるといい」
 二人を背中から推す形になった。そして。
 二人は実際にその鏡に触れてみた。それぞれの右手を差し出して目の前にある鏡に触れてみた、だがその鏡は。
 そのままだった。触れたが手は鏡の中に入らない、普通の鏡と同じだった。
 それを見て二人は首を少し傾げさせてこう言った。
「この鏡は泉じゃないみたいですね」
「そうみたいですね」
「そうだな。普通の鏡だ」
 日下部も二人に応えて言う。
「その鏡はな」
「ですね。それにしても触ってわかるんですか」
「泉かどうかは」
「あくまで私の推察だが」
 そうだというのだ。 
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