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八条学園怪異譚

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第十三話 理科室のマネキンその十一


「それなら可能性は高いな」
「うん、何でも日韓併合の年に買った鏡らしくてね」
 人体模型が話す。本朝の歴史において神武開闢以来の失政が行われた年に来た鏡だというのだ。
「あれならひょっとしたら」
「僕達が出入り出来るかもね」
「そうなのね。それじゃあ」
「案内してくれる?」
 二人は模型達に願い出る。
「妖怪さん達が出入りするのにその場所がわからないのもおかしな話だけれど」
「お願いするわ」
「だって気付いたらここにいるから」
「僕達は最初から学校にいる組だけれどね」
 彼等はそうだというのだ。
「まあ赤鬼さんとかぬらりひょんさん達とかね」
「日下部さんもだけれど」
 彼にしろだというのだ。
「他の場所からこの学校に来た人はね」
「どうした来たか皆知らないから」
「それが考えれば考えるだけ不自然だけれど」
「そういうものなのね」
「妖怪と人間って違うから」
 このことは二人も既に聞いていたがそれでも首を傾げさせることだった。人間とはそこが全く違うからだ。
 だがそれでも模型達は二人に好意的な態度で話す。
「じゃあ今からね」
「案内するけれど」
「まあとにかくね」
「妙に思うところはあっても」 
 二人は妖怪についてわからないことを心に引っ掛けながら二人で話した、そしてだった。
 二人は日下部と共に模型達に案内されてそして職員室の鏡の前に来た。鏡は二メートルはあるかなり巨大な鏡だ。
 その鏡の前に来るとだった。
 日下部は鏡には映っていない、模型達は映っていてもだ。
「模型さん達はですか」
「大丈夫なんですね」
「だって僕達には身体があるから」
「この身体ね」
 模型達はそれぞれの半分皮膚がなかったり骨だけの身体を自分達で指差しながらこう二人に対して話す。
「だから鏡に映るんだよ」
「実体があるからね」
「そうなのね。ちゃんとあるから」
「だからなのね」
「模型さん達は鏡に映るのね」
「そういうことね」
 二人は模型達が鏡に映ることには納得した。そしてこうも言うのだった。
「つまり妖怪さん達は鏡に映るのね」
「ちゃんと実体があるから」
「けれど幽霊さん達だと実体がないから鏡に映らない」
「日下部さんみたいに」
「その通りだ。鏡に映るのは実体だ」
 日下部自身も言う。
「魂は映らない。そして」
「そして?」
「そしてっていいますと」
「実体は正真正銘の姿だ」 
 鏡にはそれが映し出されるというのだ。
「化けていてもだ」
「じゃあ狐さんや狸さんが化けていても」
「本来の姿が映し出されるんですね」
「それが鏡ですか」
「そうなんですね」
「これはどんな鏡でも同じだ」
 学園にあるその安い鏡でもだというのだ。
「私達幽霊は映らず狐や狸達の本来の姿も出るのだ」
「じゃあその鏡に」
 聖花が言う。
「特別な力が備わって」
「泉になっているのかも知れない
「で、この鏡がですね」
 聖花は日下部に身体を向けて右手でその大きな鏡を指差しながら問うた。 
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