八条学園怪異譚
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第十三話 理科室のマネキンその十
「そうしましょう」
「そうね。私達だけで考えてもね」
「答えは出ないから」
知識が限られているだからだ。
「そうしましょう」
「じゃあそういうことで」
「後は」
聖花はここで彼女達の捜していることについての話をはじめた。
普通科の校舎の廊下、理科室の前のそこにいながらこう言ったのである。
「妖怪さん達や幽霊の人達が出入りする泉だけれどね」
「あっ、それね」
「普通科にあるかしら」
「可能性は零じゃないわね」
愛実はこのことについてはこう答えた。
「実際のところね」
「そうよね。じゃあ見回ってみる?」
「それがいいわね。けれど」
「問題はその泉が何処かよ」
聖花は考える顔で校舎を見回しながら愛実に話した。
「どういったものかもね」
「泉ね」
泉といってもそれが文字通りの形とは限らない、だから愛実もまた考える顔になりこう聖花に述べたのである。
「例えばお池なり他には」
「他には?」
「鏡とか?」
次に話に出したのはこれだった。
「鏡ってよくそうした人達が出入りするっていうし」
「それは鏡による」
また日下部が話してきた。
「妖怪や幽霊が出入りできる鏡はな」
「どの鏡っていう訳にはいかないんですね」
「それは」
「古く霊力が備わった鏡なら出入りが可能だ」
そうした鏡ならばというのだ。
「だが。新しい鏡はだ」
「無理ですか」
「そうした鏡は」
愛実だけでなく聖花も言う。
「鏡も色々なんですね」
「霊力とかが関係するんですか」
「実はある」
そうだというのだ。
「安い鏡には霊力も備わることはない」
「それなりの鏡ならですか」
「備わるんですね」
「そういうことだ。学校の普通の鏡程度ならだ」
それこそトイレや手洗い場にある大量に作られて置かれている様な学校用の鏡ならばどうかというのだ。
「普通はそこまでだ」
「妖怪さん達が出入りする様な鏡はですか」
「ないんですね」
「その通りだ。だが」
例外の話になる。どんなものでも例外は存在する。
「そうではない場合もある」
「大量生産の中でたまたまあるですか」
「霊力のある鏡ですね」
「それがある可能性もあるんですね」
「ひょっとしたらにしても」
「そうだ、あるのだ」
日下部は愛実と聖花に淡々と話す。そして模型達も二人に対して言う。
「何なら案内するけれど?」
「普通科の鏡で怪しいものね」
「どんなのが怪しいの?」
愛実がその模型達に少し探る様な感じの顔で尋ねた。
「それで」
「あるとしたらあそこだね」
「そうだね」
人体模型と骸骨は貌を見合わせて話した。
「本校舎の一階職員室の前の」
「そこだよね」
「あの大鏡だね」
「普通科だとそこしかないね」
彼等はその鏡について話していく。
「あの鏡特注らしいし」
「それも百年前の鏡らしいしね」
「特注で百年か」
日下部はその鏡の事情を聞いて述べた。
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