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八条学園怪異譚

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第十三話 理科室のマネキンその九


「可愛い娘達だね」
「この学園の生徒さんかな」
「ええ、そうよ」
「商業科の一年生よ」
 二人が模型達に答える。
「はじめまして、よね」
「会ったことはないから」
「君達ひょっとして飲み会とかには出てるのかな」
 人体模型が挨拶をしてきた二人に尋ねた。表情は変わらないがその左半分が肉の顔は慣れないと結構不気味だ。
 しかも表情がない、その顔で二人に問うてきたのだ。
「工業科の屋上とか大学の博士の研究室とかで」
「そうしてる?」
 今度は骸骨が歯を鳴らしながら尋ねてきた。
「僕達最近どっちも言ってないけれどね」
「ダンスに専念してるからね」
「だからはじめて会ったのね」
「というか二人共博士とお付き合いあったの」
 二人はこのことに気付いた。
「そうなのね」
「じゃあこれからも時々会うかしら」
「まあね。最近お酒やお菓子よりダンスだから」
「それに専念してるからね」
 だから宴や博士のところには顔を出していないというのだ。そうした話をしてだった。
 日下部がまた愛実と聖花に対して話した。
「工業科の屋上での宴会も博士の研究室に行くのも自由だ」
「どっちも自由参加だったんですか」
「そうだったんですか」
「妖怪には強制というものはあまりない」
 それが妖精の世界の決まりの一つだというのだ。
「ない訳ではないがだ」
「人間の世界程はですか」
「あまり強くはないんですか」
「そういうことだ。あまり強くはない」
 日下部は幽霊の立場から話す。尚幽霊達も妖怪達と同じ世界にいるので強制されることはあまりないというのだ。
「だから彼等もだ」
「最近はダンスに夢中になって」
「宴会とかにはいなかったんですね」
「うん、ダンスが楽しくてついついね」
「こっちの方に夢中になってて」
「それだったんだ」
「また気が向いたら参加させてもらうよ」
 模型と骸骨は声を笑わせて愛実と聖花に話す。
「僕達は飲んで食べても太らないし」
「この辺りは便利だしね」
「というか食べて何処に入るの?」
 愛実はこのことがまず不思議だった。それで真剣に眉を顰めさせて言ったのである。
「特に骸骨さんは」
「僕がだね」
「日下部さんは食べても何処にも入らないって仰ってたけれど」
「実際にそうだよ」 
 骸骨はまさにその通りだと愛実に答える。
「僕は実際にね」
「飲んで食べても何処にも入らないのね」
「あと出ることもないから」
 それもないというのだ。
「僕には内臓もないから」
「うん、どう見てもないわね」
 愛実は骸骨の身体をまじまじと見る。内臓はおろか肉や脂肪といったものすらない。あるのは骨だけである。
 だからこう言うのだった。
「飲み食いの必要ないわよね」
「けれど飲んだり食べたものは消えてね」
 そうなるというのだ。
「出入りみたいにはなるよ」
「どうしてそうなるのかしら」
「つくも神独特のことだけれど」
 つまり彼等もつくも神だというのだ。
「飲んで食べて味わえるけれど」
「それがどうなっているかは」
「わからないんだよね」
 実に奇怪だがそうなるというのだ。
「僕なんか特にね」
「本当にどうなってるのかしらね」
「この辺り博士に聞いてみましょう」
 聖花が提案する解決案はこれだった。 
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