八条学園怪異譚
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第十一話 池の怪その四
「読むわよ」
「そうよね。読むジャンルは?」
「私も色々」
一つのジャンルにはこだわらないというのだ。
「読むわね」
「まあ色々読んだ方がね」
「いいからね」
「それでも私は」
愛実は自分でどうかと言う。
「そういった純文学の系列はね」
「読まないのね」
「教科書に出る本とかっていいの?」
「堅苦しいだけってイメージあるのね」
「何かね。太宰治とかも」
「太宰も結構色々書いてるから」
「暗くない?太宰って」
「走れメロスがあるじゃない」
人間失格と並ぶ太宰治の代表作だ。人間失格とは全く違いその作風は人間性信頼を前面に押し出した健全なものだ。
「他にも富嶽百景とか」
「あっ、それ覚えたわ」
テストに作者の代表作を幾つか書けというのは国語の問題の定番だ。特に太宰や芥川では必ず出ると言っていい。
「他にも津軽とか」
「そうした作品は明るいから」
「そうなの」
「太宰の作品は初期と後期が暗くて」
聖花は太宰の作風の以降にも話す。
「中期は明るいのよ」
「じゃあ走れメロスとかは」
「明るいのよ」
「そうなのね」
「そう。だからよかったら読んでみる?」
「太宰の作品になると」
愛実は図書館の中を見回した。そこには多くの本がありそしてその中には太宰の禅宗もあることは容易に予想された。
「あるわよね」
「太宰とか芥川の全集ともなるとね」
「あるのね」
「高校の図書館だったらまず絶対にあるわよ」
聖花もこう愛実に答える。
「ましてやここの図書館普通の図書館よりずっと大きいから」
「図書館だけで校舎になってるからね」
「うん、ちょっと探せばね」
その太宰治全集もあるというのだ。
「勿論他の作家もね」
「純文学も充実してるのね」
「他の作家の全集もあるわよ」
「夏目漱石とか森鴎外も」
文学の定番だ。尚森鴎外は医師でもあったことで有名だが脚気において多大な悪影響を残したことは最近知られる様になった事実であろうか。
「あるのね」
「普通はあるからね」
高校の図書館にはというのだ。
「だから興味があったら探してみたら?」
「そうね。それじゃあね」
愛実も聖花の話に頷いた。そうした話をしてだった。
二人はあらためて妖怪図鑑を見た。見ればそこには他の色々な水棲妖怪のことも載っていた。
その色々な妖怪達を見て愛実はこうも言った。
「色々いるのね」
「そうね。河童とかその濡れ女だけじゃなくて」
聖花もその図鑑を見て言う。
「一杯いるわね」
「そうね。ただ」
「ただって?」
「濡れ女が一番怖いわね」
愛実が見たところそうだった。
「これ本当にいて欲しいないわね」
「そうね。磯女もね」
その妖怪のことも図鑑に載っていた。これも海にいる妖怪だ。
「船の碇からあがってきて漁師の人を襲うって」
「これも吸血鬼よね」
「七人みさきとか」
これは悪霊だった。
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