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八条学園怪異譚

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第九話 職員室前の鏡その八


「言論統制は確かにあったがな」
「収容所とかなかったですよね」
「そうしたのは」
「なかった」 
 確かになかった。ついでに言えば従軍慰安婦も強制連行もなかった。
「それに一人の人間があそこまで贅を極めるというのもだ」
「なかったですよね」
「将軍様だけがああした贅沢をするのは」
「なかった」
 そうだったというのだ。
「陛下はそうした方ではなかった」
「有り得ないですよね、そんなの」
「普通はやっぱり」
「そうした国を賛美して自衛隊や戦前の日本を罵倒する」
 日下部は話を戻してきた。
「やはりおかしい」
「そうした先生もいるんですね」
「それも多いんですね」
「私は戦後の教師の多くは好きではない」
 日下部はまた言う。
「戦後教師の世界はおかしくなった」
「いじめを見ても見て見ぬふりですしね」
「北朝鮮とかをいい国だっている先生も多いですし」
「共産主義にかぶれてからだ」
 それからだというのだ。
「戦後の教師はおかしくなった」
「共産主義ってあのソ連の」
「あの思想ですよね」
「そうだ。戦前から入ってはいたがな」 
 非合法であったが共産党はその頃から存在していた。小林多喜二が当時の党員達の生活を書き残している。尚彼はその共産党員だ。
「戦後はその共産主義でもだ」
「でも?」
「でもっていいますと」
「かなり歪な考えが主流になった」
 純粋な共産主義ですらなかったというのだ。
「社会党に近いだろうか」
「今の社民党ですよね」
「そっちですよね」
「そうだ。共産主義と社会主義の違いは急進的か穏健的かに分けられるだろうが」
 イギリスで生まれた革命ではなく徐々にそうした社会にしていき複数政党や君主制を認める、それが社会主義と考えていいだろうか。
 だが戦後の我が国のそうした思想はどうだったかというと。
「社会主義と言っているが革命を考え」
「あれっ、それって共産主義じゃないんですか?」
「社会主義じゃないですよね」
「そこに矛盾がある」
 日下部も難しい顔になっている。
「革命を謳い自分達以外を認めない」
「それってですから」
「共産主義なんじゃ」
「もっと言えば全体主義だ」
 それが戦後日本の社会主義の一部だというのだ。
「昭和四十年代の学生運動だが」
「何か聞いたことあります」
「身内で殺し合ってたんですよね」
「そうしていた」
 実際にそうだったというのだ。これは歴史にある通りだ。
「それで北朝鮮を賛j美していてだ」
「北朝鮮を理想にしていたとか?」
「まさかって思いますけれど」
「まさか。ですよね」
「あそこ社会主義でも共産主義でもないですから」
 まだ高校生でわからないことも知らないことも多い高校生である二人から見ても北朝鮮はそうしたことではない。ではどういう国家かというと。
「特撮に出て来る悪役みたいな国じゃないですか」
「そのままですよね」
「全体主義じゃないですか」
「個人独裁っていいますか」
「そうだ。しかしだ」
 彼等はその北朝鮮、個人独裁のその国家をだというのだ。 
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