八条学園怪異譚
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第九話 職員室前の鏡その七
「それですよね」
「あれは陸自さんの制服だ」
「陸上自衛隊ですよね」
「空自さんは青、そして私がいた海上自衛隊は黒だがな」
自衛隊だけでなく軍はその管轄により軍服の色が違う。国家によってその配色は違うが自衛隊ではそうなっているのだ。
「基本的なデザインは同じだ」
「あのスーツですか」
「海自は士、兵隊はセーラー服だがな」
これは海軍からの伝統だ。そのセーラー服もまただった。
「これはこれでだ」
「あっ、女の子の」
「あれが基になっているのだ」
「ううん、本当に軍服が基になってるんですね」
「そうだ。後トレンtコートやフロックコートもだ」
こうした日常の服もだった。フロックコートはいささか高価ではあるが。
「軍服が基になっている」
「そうした服って多いんですね」
「案外な。それでだが」
「校舎ですよね」
「戦前からだ。校舎は隊舎から造られていきグラウンドも軍、今は自衛隊の協力で造られていくことが多い」
「学校の先生ってよく自衛隊とか嫌うのに」
愛実が今言ったことは今も尚だ。日教組の害毒は容易には消えない。
「軍の影響多いんですね」
「実はそうなのだ」
「ううん、何か矛盾していますね」
「そうした教師は何も知らないか見て見ぬふりをしているのだ」
そのどちらかだというのだ。
「どちらにしても褒められたものではない」
「そうした先生もいるんですね」
「残念ながら多い」
いるどころではなかった。
「あの戦争の後の我が国の病だな」
「病気ですか」
「そうだ、病気だ」
日下部はこのことは難しい顔で述べた。
「中々な」
「そういう先生って北朝鮮を好きだったりしますけれど」
「自衛隊と北朝鮮、戦前の我が国と北朝鮮」
日下部はこの二つを北朝鮮と比較した。
「ましな方はどちらか」
「私でもわかりますよ」
「私もです」
愛実だけでなく聖花も言う。
「どう見ても北朝鮮って碌な国じゃないですから」
「最悪の国ですよね」
「最悪どころではない」
日下部は顔を曇らせて言い切った。幽霊なのでその顔は元々蒼白だがそこに怒りといった感情が加わっていた。
「戦前の日本なぞ裸足で逃げ出す国家だ」
「あそこまで酷くなかったですよね」
「確かに問題が多かったですけれど」
「君達に最初に言われたがな」
日下部は二人との出会いの時から話す。
「確かに海軍は予算編成能力がなかった」
「算盤勘定駄目過ぎますよ」
「もの創るのってコストを考えないといけないですから」
商売人の娘としての立場から話す二人だった。
「トンカツ一枚に千円どころか二千円かける様なやり方って」
「パン一個に二百円ですよね」
「そんな商売したらお店潰れますから」
「味以前の問題ですよ」
「陸軍は陸軍で人を見る目がなかったし」
「そっちも問題ですよね」
二人はあの帝国陸軍のことも話す。この軍にしても海軍とは違う点で極めて深刻な問題点を抱えていたのだ。
「バイトに変な人雇ったら大変ですよ」
「やっぱりお店が潰れますよ」
「そうした問題がありましたけれど」
「それでもですよね」
「北朝鮮よりは遥かにまともだった」
あそこまで非道でも無法でもなかったというのだ。
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