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八条学園怪異譚

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第九話 職員室前の鏡その六


「礼儀作法も絶対に大事って」
「考えてみたら厳しかったわよね」
「ええ、けれど」
 それでも、とここで言う愛実だった。
「そうしたことを教えて貰ってるとね」
「後で助かるのよね」
「今だって。お客さんへの応対もね」
 ここでも店の話になる。やはり二人は何処までも店の娘だった。
「評判いいのよね」
「しっかりしてるってね」
「やっぱりね。礼儀作法がしっかりしていないと」
「そう、駄目よね」
 こうした話もかるたをしながらした。そしてだ。
 その日の夜もまずは水産科の校舎に行き日下部に話をした。日下部はその鏡の話を聞くとまずはこう言った。
「あの鏡か」
「あっ、御存知なんですか」
「その普通科の鏡のこと」
「よく知っている」
 そうだというのだ。
「我々の間でも有名だ」
「そうなんですか。そこまでですか」
「有名なんですか」
「そうだ。十二時になるとだ」
 どうなるかということも二人に話そうとしたが途中で言葉を止めた。
「いや、それはその目で見た方がいい」
「そうした方がいいんですか」
「私達が直接ですか」
「見ればわかる。それにだ」
「それに?」
「それにっていいますと」
 二人は水産科の校舎から普通科の校舎に日下部と一緒に歩きながら話をしている。もう夜の学校にも慣れてきている。
「何かあるんですか?」
「何が出て来るんですか?」
「出て来るというよりは」
「いうよりは?」
「っていいますと?」
「とにかく行こう」
 日下部は今は多くを語らなかった。二人にその目で見てもらおうというのだ。そうしたことを話しながらその普通科の校舎に来た。その校舎はというと。
「何処も同じよね」
「そうよね」
 愛実と聖花は普通科の校舎を見回しながら話をした。
「商業科も水産科もね」
「普通科も」 
 ビニールで覆われた廊下に白い壁と天井、そして蛍光灯がある。そうしたものが全て揃っている、この校舎でもだ。
「一緒よね」
「何か商業科にいるみたいよね」
「校舎って何処も同じ造りだけれど」
「これって何かあるのかな」
「あるのだ、これが」
 二人と一緒にいる日下部がこのことについて話した。
「実はな」
「えっ、そうなんですか」
「どの校舎も同じなのに理由があるんですか」
「元々校舎は隊舎を基にして造られている」
 ここでも軍隊からの話になる。
「軍のな」
「えっ、そうなんですか」
「校舎って兵隊さんのだったんですか」
「その関係だったんですか」
「初耳ですけれど」
「知らなかったか。実はそうなのだ」
 日下部は目を丸くさせた二人にさらに話す。
「制服もそうだがな」
「ええと。制服も?」
「制服もですか」
「制服、詰襟やブレザーをよく見るのだ」
 それを見ればどうかというのだ。
「軍服が基になっているのがわかる」
「ううん、そうなんですか」
「制服って軍服なんですか」
「軍服から出来たんですか」
「セーラー服とかも」
「君達が今着ているブレザーもそうだ」
 それもだというのだ。
「自衛隊の服だが」
「あの緑の服ですか?」
 愛実は日下部の言葉からこの色の軍服の名前を出した。 
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