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八条学園怪異譚

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第九話 職員室前の鏡その二


「博士って」
「どうかしら、直接お会いしたことないけれど外見もね」
「どんな感じなの?」
「マルチーズっていうかブリヤードっていうか」
「毛で顔が隠れてるのね」
「そう。ぼさぼさの白髪と白いお髭でね」 
 まさにそうした種類の犬の様にだというのだ。
「凄い感じだって」
「そうなの」
「お歳のせいか背は縮んでかなり小さいらしいけれど」
「そうしたお顔なのね」
「凄く目立つ方らしいわ」
「っていうか百二十歳で普通の大学に来てるのね」
「講義も持ってるらしいわ」
 常識では有り得ない話だ。とっくの昔に定年を迎えているどころではない。
「信じられないけれどね」
「というか今私凄くびっくりしてるけど」
 愛実は実際に引いた顔になっている。
「百二十歳でまだ大学で講義してるって」
「けれどそういう人だから」
 明らかに常人離れした人物だからだというのだ。見れば聖花の顔も信じられないものを語る顔になっている。
「噂だけれどね」
「噂って。百二十歳って噂なの」
「少なくとも百歳はいってるらしいけれど」
「それって普通に凄いわよ」
 愛実もびkっくりすることだった。百歳でもだ。
「何時ぽっくりとか。言葉は悪いけれど」
「若し百二十歳だったら?」
「もっと凄いから。百歳と百二十歳ってあまり違わない様に思えても」
 それでもだった。この辺りは。
「二十年も違うから」
「二十年って成人式よね」
「そう、だからね」
 それでだとだ。愛実はさらに言う。
「この学校で信じられない話が多いわよね」
「妖怪に幽霊も一杯いて」
 それこそ数えきれない位いる。日下部にキジムナーに屋上の宴会に。
 そしてそれだけではなく人間もだというのだ。
「仙人みたいな人もいるのね」
「今度大学の方行ってみる?」
 聖花は目をしばたかせてから愛実に提案した。
「そうしてみる?」
「大学に?」
「そう、どっちにしても愛実ちゃんも八条大学に行きたいのよね」
「商業学部っていうか経済学部ね」
 ここが愛実の今の進学希望先だった。食堂の娘なので経営のことを勉強したいと考えているのだ。店の経営の為なのは言うまでもない。
「そこにね」
「そうよね。私は法学部でね」
「学部は違っても志望大学は一緒だし」 
 それでだというのだ。
「見学ついでにどうかしら」
「見学っていっても」
「そういっても?」
「あれじゃない。私達まだ一年生で」
 そしてさらにだった。
「一学期よ。まだ入学したてだから」
「速過ぎるかしら」
「そう思うけれど」
「そうかな」
「見学するのはね。ただね」
「ただ?」
「うちの大学設備が凄いし」
 その充実度はかなり有名になっている。図書館は世界屈指のものがあり博物館に美術館もある。体育館もグラウンドも幾つもある。
 おまけに農学部の為の牧場もある。とにかく色々なものがある。
 そうした大学だから愛実も言うのだった。
「色々見るのも面白いわよね」
「そうでしょ。動物園や水族館もあるし」
「殆ど全部あるわよね」
 愛実はまた言う。 
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