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八条学園怪異譚

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第九話 職員室前の鏡その三


「とにかく何でも」
「そうでしょ。だからね」
「大学行く?」
「見学抜きにしてね」
「ううん、どうしようかしら」
 愛実は腕を組み真剣に考える顔で話す。
「その博士のところ行こうかしら」
「具体的にどんな人かお会いしてみるのも面白いでしょ」
「そうよね。それじゃあ」
「二人で一緒に行こう、大学にね」
「何時行く?」
「何時でもいいんじゃないかしら」
 聖花は時間にはこだわらなかった。何時行くかは。
「気が向いたら。その前に高校の怪談調べてね」
「そっちの方が先よね」
「多いから、そっちも」
 高校の怪談もかなり多い。それこそ聞いただけで七不思議どころではない。その話になると愛実はこう聖花に話した。
「ポルターガイスト現象もあるわよ」
「何処で?」
「うちのね」
 つまり商業科である。
「体育館の倉庫。あそこでね」
「ものが勝手に動くの」
「そう。凄い勢いで嵐みたいに動き回って」
 体育館の中の跳び箱やマットがだというのだ。
「それで元に戻るんだって」
「ふうん、そうなの」
「そう、それで起こる時間はね」
「何時なの?」
「夜の十二時だって」 
 愛実は体育館倉庫のポルターーガイスト現象が起こる時間も話した。
「その時間になるとね」
「何か時間って」
「十二時多いわよね。こうした話って」
「そうそう、前から思ってたけれど」
 聖花はこのことを言う。ここでは。
「怪談の時間って夜の十二時に起こったり出たりって」
「後二時ね」
「その二つの時間よね。二時はね」
「二時に何かあるの?」
「あれよ。草木も眠る丑三つ時よ」
 この時間だというのだ。
「こう言うと凄く不気味に聞こえるでしょ」
「うん、如何にもって感じで」
「その時間が多いわよね」
「大体幽霊とか妖怪って夜に出て来るけれど」
 愛実はそうも思った。
「夜ってそうした人達の時間なのね」
「そうね。お昼に堂々と出て来る妖怪とか幽霊ってあまり聞かないわよね」
「というか殆どいないわよね」
「学校だと特にね」
 こう話す。夜はそうした存在の時間だという話になった。
 そしてその話から愛実はこんなことも話した。
「それで夜の十二時には他にね」
「他にもまだあるの」
「普通科の職員室、その前に大きな鏡があるけれど」
「あっ、その鏡から」
「そう。出て来るらしいのよ」
 愛実は楽しげに笑って聖花に話す。
「何かがね」
「ふうん、じゃあ今回は」
「どっちに行くの?」
 愛実は聖花の目を見て尋ねた。
「鏡?それとも大学?」
「ううん。迷うわね」
 愛実に問われ聖花は考える顔になった。首を捻る。
 そのうえで迷いを見せつつこう言うのだった。
「どっちかになると」
「答え出ない?」
「博士も気になるけれど」
 その百二十歳という仙人か若しくは本当に妖怪ではないかと真剣に疑うに足る博士もだと。しかしそれと共にだった。
「その鏡もね」
「気になるのね」
「十二時よね」
「そう、お決まりの時間よ」
 愛実はもうこの時間をこうした表現で言う様になっていた。 
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