八条学園怪異譚
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第八話 屋上の騒ぎその十二
それは五本指だ。その指を見て言うのだった。
「三本にならない様にしないとね」
「そうね。絶対にね」
「そうするべきだ。それでだ」
日下部は二人の話を聞いたうえであらためてこう声をかけた。
「これからだが」
「あっ、どうするかですか」
「この屋上で」
「そうだ。どうする」
二人に宴に参加するかどうか尋ねたのである。
「美酒に馳走を楽しむか」
「僕達と一緒にね」
「どうするの?」
妖怪達もまた二人に尋ねてきた。これからどうするのかを。
「参加するなら大歓迎だよ」
「色々なお酒があるよ」
「美味しいものもね」
「あっ、そういえば何か」
「一杯あるわね」
二人もそれに気付く。見れば酒は日本酒だけでなくビールや焼酎、ワインまである。本当に色々とある。
それにつまみもだった。豆腐もあれば干し魚にナッツ類、後は枝豆やインスタントラーメンの類もある。高価なものはないが色々と大量にある。
二人はそうしたものを見て言うのだった。
「ううん、トンカツもあるし」
「サンドイッチもね」
二人の好物も当然あった。
「もう結構仮眠取ったし」
「それならね」
二人はここでも顔を見合わせて話す。そしてだった。
「じゃあお願い」
「参加させて」
「うん、じゃあ何飲むの?」
「何食べるの?」
「食べ物はまずはトンカツね。それとコロッケ」
「サンドイッチお願い。あとスパムも」
二人はその好きな食べ物をそれぞれ頼む。
「あとお酒はビール」
「私は赤ワインね」
「よし、じゃあね」
「今から」
二人で微笑んで話す。そうしてだった。
愛実と聖花は妖怪達の宴に入った。すぐにその前に二人が頼んだトンカツやサンドイッチ、コロッケにスパムといったものが置かれた。そして。
ビールに赤ワインもだ。妖怪達はその二人を囲んでめいめい言ってくる。
「飲んで食べて」
「楽しんでね」
「うん、明日も学校だから派手には飲んだり食べたりできないけれど」
「宜しくね」
女の子らしく丁寧に座って言う二人だった。
二人はその日はじめて妖怪達と共に遊んだ。それは二人にとっては忘れられない実に楽しいものになった。
第八話 完
2012・9・3
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