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八条学園怪異譚

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第八話 屋上の騒ぎその六


 その笑顔のキジムナー達がこう二人に言う。
「僕達日本の妖怪同士でね」
「夜はこうして飲んで食べて」
「そうして仲良くやってるんだよ」
「そうしているんだよ」
 二人に話していく。そしてだった。
 妖怪達の中から一人来た。大柄で全身が絵の具で塗った様に真っ赤だ。毛深く髪は茶色でちりちりになっている。虎の腰巻を身に着け左手には巨大な金棒を持ち頭の天辺には一本の角がある。それはまさに。
「鬼、赤鬼よね」
「向こうに青鬼もいるし」
 同じ外見で色だけ青いのも宴会の中にいる。
「鬼までいるのね」
「というか鬼っていったらね」
「そうよね。人取って食べるんじゃ」
「大丈夫なの?」
「安心しろ。わし等は人を食わない」
 赤鬼は二人を見下ろした状況で微笑んで述べた。
「決してな」
「えっ、そうなの?」
「鬼なのに?」
「鬼は鬼だが」
 それでもだというのだ。鬼という言葉には強いという意味だけでなく冷酷非情、残忍、そして悪という意味もあるからだ。
 しかし赤鬼はそれでもだというのだ。
「いい鬼と悪い鬼がいるのだ」
「そうなのね」
「ここの赤鬼さんと青鬼さんはいい鬼達なの」
「そういうことだ。わしの好物はだ」
 赤鬼は杯を右手に出してその中のものを飲みながら話す。
「葡萄だ」
「葡萄?」
「それ好きなの」
「それに豆腐だ」
 そうしたものが好きだというのだ。
「あと酒も好きだな。肉にワインもな」
「結構西洋的じゃない?」
「鬼って日本の妖怪なのにね」
「お肉とワイン好きって」
「日本の妖怪じゃないんじゃ?」
「そのことだが」
 元海軍将校の日下部が首を傾げる二人に話す。
「鬼の外見を見てくれ」
「?鬼の?」
「鬼の外見?」
「そうだ。どう思う」
 鬼の大柄な身体と毛深さ、それに縮れた髪によく見れば彫のある顔を見てから二人はそれぞれ言った。
「日本人っていうよりはね」
「そうよね。どう見てもね」
「欧州系の顔よね」
「毛深いから」
「毛深いことも関係あるのか?」
 赤鬼がここで二人に突っ込みを入れる。
「わしのことを考えるのに」
「いや、日本人ってあまり毛深くないから」
「そうそう。毛深い人もいることにはいるけれど」
「けれど白人の人って毛深いからね」
「お髭も濃いから」
「髭はいつも剃っている。ヘアースタイルにも気を使っているし風呂にも毎日入っている」
 意外と奇麗好きな赤鬼である。
「確かに毛深いな」
「そういうの見たらね」
「あっちの人じゃないかなって思えるから」
「それでだが」
 日下部がまた二人に話す。
「鬼は元々シベリアの方から流れ着いた白人という説があるのだ」
「それでワイン飲んでて?」
「お肉食べていて?」
「ワインを人の血、普通の肉を人肉と見間違えられたという説がある」
 日下部は言う。
「赤ワインが特にな」
「ああ、成程」
「そうなんですね」
 頷く二人だった。そしてだった。 
 赤鬼をあらためて見る。そして言う言葉は。 
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