八条学園怪異譚
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第七話 魚の目その十二
「今で充分可愛いけれど」
「どんな外見になれるの?」
「人間の子供の外見だよ」
そうした外見だとだ。キジムナーのうちの一人が言ってきた。
「おかっぱで猫の目をしたね」
「それで爪が長いんだよ」
もう一匹のキジムナーが言ってきた。
「そうした外見にもなれるよ」
「この姿以外にね」
「ううん、姿を変えられるのって」
どうかとだ。愛実が首を少し右に捻って言った。
「羨ましいわね」
「そうね。本当にね」
聖花も言う。
「私も変身できたらって」
「誰でも思うわよね、それって」
「羨ましいでしょ」
キジムナーの方も笑ってこう二人に言う。
「人間にはできないからね」
「仙人とかでもない限り」
「ええ、かなりね」
聖花は真剣な顔でキジムナー達に答える。
「羨ましいわ」
「そうだよね。まあそのことはいいとしてね」
「僕達と君達は友達になったからね」
それでだとだ。キジムナー達は二人のところに来てこんなことを言ってきた。
「一緒に楽しく遊ぼうよ」
「賑やかにね」
「遊ぶって?」
遊ぶと言われてだ。愛実が妖怪達にきょとんとした顔になって返した。
「これから?」
「うん、お酒でも飲んでね」
「お魚の目も食べてね」
「あっ、やっぱお魚の目食べるのね」
食堂のことだ。聖花の秋刀魚の片目がなかったことについて愛実は確証を得た。やはりキジムナー達の仕業だった。
「ここでも」
「片目だけだけれどね」
「もう片方の目は置いておくよ」
あくまで片目だけだというのだ。食べるのは。
「それだけだよ」
「だって。目は美味しいのにね」
「独り占めしたら駄目じゃない」
「もう片方はいつも人にあげてるんだ」
「そうしてるんだよ」
キジムナー達はこう二人に話す。日下部はその二人の横で今は無言で立っている。双方の会話を邪魔しないようにしているのだ。
その双方ははさらに話す。
「僕達欲張りなのは嫌いだから」
「それにみんなで食べてこそ本当に美味しいからね」
「だからお魚の目は片方だけ」
「片方だけしか食べないんだよ」
「後は人間の分」
「そういうことにしてるんだ」
「ふうん、そうなのね」
愛実はキジムナー達の話を聞いてまずは頷いた。
「欲張りさんじゃないのね」
「食べるものは他にも一杯あるしね」
「そういうことはしないんだ」
「そうなのね。それでだけれど」
「それで?」
「それでっていうと?」
「ええ。お酒よね」
愛実はキジムナー達が言った遊びについて尋ねた。この場合は酒盛りのことであろうと予想しながらそうしたのだ。
「それってどんなお酒なの?妖怪さん達のお酒?」
「あっ、泡盛だよ」
「それだよ」
こう答えるキジムナー達だった。
「沖縄のお酒ね」
「それだよ」
「ああ、あれね」
泡盛と聞いてだ。愛実は納得した顔になって頷いた。
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