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八条学園怪異譚

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第七話 魚の目その八


「そのことについてです」
「ご存知かどうか」
「ああ、あれか」
 日下部は二人の話を聞いてこう言った。
「それはキジムナーだな」
「前にお話していたですか」
「沖縄の妖怪ですか?」
「そうだ。ガジュマルにいるな」
 二人が夜の学校に忍び込む際にいつも傍を通っているあの木だ。明らかに熱帯風のその木のことである。
「その妖怪だ」
「そのキジムナーがですか?」
「魚を片目を取ってるんですか」
「そうだ。魚の片目はキジムナーの好物なのだ」
 日下部は二人にこのことを話す。
「学園の食堂のものや給食の魚からだ」
「片目だけ取ってですか」
「食べてるんですね」
「そうなのだ。だから君の秋刀魚の片目はなかった」
 聖花を見てこう話す。
「そういうことなのだ」
「ううん、やっぱりそうなんですか」
「妖怪の仕業だったんですね」
「そうなのだ。これでわかったか」
「はい、有り難うございます」
「そういう事情だったんですね」
 二人で納得する。そしてだった。 
 二人は納得してだ。日下部にこう言った。
「じゃああのガジュマルのところに行けばですね」
「キジムナーがいるんですね」
「その魚の片目を食べる妖怪が」
「そうなんですね」
「そうだな。今の時間ならいるな」
 日下部も二人に応えて言う。
「キジムナーもな」
「じゃあどうする?行ってみる?」
「そうする?」
 二人でキジムナーを見ようか話しだした。
「どんな妖怪なのか」
「面白そうだしね」
「それじゃあ今からね」
「二人で」
 こう話してだ。二人で行くことにしたがここで日下部が言ってきた。
「待て、君達二人だけではキジムナーと初対面になるな」
「というか姿を見たことないです」
「一度も」
「どんな外見かさえも本当に」
「全然知らないです」
「そこまで知らないならだ」
 それならだった。
「悪い連中ではないが意志疎通に支障が出るな」
「あっ、悪い妖怪じゃないんですか」
「特に」
「不埒者は脅すがな」
 それでもだというのだ。
「悪い連中ではない。むしろ気のいい連中だ」
「妖怪っていっても怖いのばかりじゃないんですか」
 愛実は日下部の言葉からそのことをこれまでよりも強く感じてその上で言った。
「そうなんですね」
「人にも善人と悪人がいる様にだ」
 この場合は幽霊でもだ。
「やはり妖怪にもだ」
「いい妖怪と悪い妖怪がいるんですね」
「それでそのキジムナー達はだ」
「いい妖怪なんですね」
「この学園には妖怪も多いがな」
 このことは前に日下部自身が言ったことだ。妖怪もまたこの学園には多くいるということをである。それはもう二人に話している。
「悪い妖怪はいない」
「性格のいい妖怪ばかりですか」
「いるのは」
「そうだ。怨霊や地縛霊の類もいないがな」
 悪霊の類もいないというのだ。
「このことは幸いだ」
「確かに。よく言われる妖怪がいますと」 
 聖花もそうした妖怪についてはこう述べた。 
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