八条学園怪異譚
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第七話 魚の目その九
「幽霊にしても」
「よくはないな」
「はい、とんでもないことになりますよね」
「よくあるな。自殺の名所等がな」
「そうした場所はですか」
「全ての場所がそうではないがあまり近付かない方がいい」
それが何故かもだ。日下部は二人に話した。
「そうした悪霊の類が集まっていることが多い」
「若しそこに近付けばなんですね」
「それで」
「引き込まれて仲間にされる」
しかし人から見れば自殺ということにされてしまう。こうした人の世界だけのことで考えれば不可解な自殺になるということはままにしてある。
「だから気をつけることだ」
「わかりました。じゃあそうした場所は」
「絶対に近付かないです」
「その方がいい。この学園の中にしてもだ」
「何か。日下部さんがいてくれないと」
「一緒にいて相手にお話してくれないとまずい相手がいるんですね」
「誰でも初対面の時は仲介役がいた方がいい」
日下部は社交の面から話した。
「そういうことだ」
「だからですか」
「日下部さんが今回はですか」
「今回だけではない」
キジムナーの件に限らないというのだ。
「仲介役をさせてもらう。この学園の中の幽霊や妖怪達とはあらかた顔馴染みだ」
「すいません、本当に」
「気を使ってもらって」
「構わない。こうしたことは当然のことだ」
毅然としておりかつ丁寧な口調での返事だった。
「君達も怪談に興味がある様だしな」
「それでここにいますし」
「そのことは否定しません」
二人もこう答える。
「キジムナーについても」
「興味があります」
「それなら喜んで共にいさせてもらう。それではだ」
「はい、今からですね」
「あのガジュマルの木のところにですね」
「行こう」
こうして二人は日下部についてきてもらってそのガジュマルの木のところに来た。そこは学校に忍び込んだ時から変わらない。だが、だった。
日下部はその木に対してこう声をかけた。
「いるだろうか」
「あっ、日下部さん?」
「日下部さんかな」
「そうだ、私だ」
その通りだとだ。日下部も返ってきた声に応える、木の中から来た声は人間の子供のものだった。少し沖縄の訛りがある。
「全員いるか」
「うん、いるよ」
「丁度お酒飲もうとしてたところなんだ」
「河童君達から胡瓜も貰ったしね」
「魚の目もあるしね」
「河童?」
日下部と相手のやり取りを聞いていた愛実は河童という言葉に首を少し捻った。それから聖花に顔を向けて彼女に尋ねた。
「今河童って言ったわよね」
「そうね。確かにね」
「じゃあこの学校には河童もいるのかしら」
「そうじゃないの?」
こう言うのだった。聖花も。
「やっぱりね」
「ううん、この学校て河童もいるのね」
「河童だけではない」
日下部は二人にも言ってきた。
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