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八条学園怪異譚

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第七話 魚の目その六


 だからだ。こう言うのだった。
「というか有り得ないっていうか」
「でしょ?最初からなかったみたいだし」
「最初からね」
「そう。こんなことってなかったから」
「ううん、どうしてなのかしら」
「若しかして」
 聖花はふと言った。
「これも何か怪談とかじゃないの?」
「怪談?」
「そう。だって普通お魚の目が自然になくなるとかないじゃない」
「そうよね。だったら」
「これも怪談じゃないかしら」
「自然にお魚の目がなくなる」
「キャトルミューティレーションみたいな」
 アメリカでよく起こっている牧場の牛が目や内臓を切り取られて死んでいる事件だ。もっともこれは宇宙人の仕業ではなく病気等で死んだ牛の目や内蔵を虫が食べてそうなっているという説が有力になっている。
「そんなのじゃないかしら」
「ううん、それって本当に」
「怪談みたいでしょ」
「うん、確かにね」
 愛実は聖花の言葉に頷く。尚二人はキャトルミューティレーションを怪奇現象の一種だと認識している。「それはね」
「そうでしょ?だったら」
「調べてみる?このこと」
 愛実から言った。
「日下部さんの時にみたいに」
「そうね。また夜に学校に忍び込む?」
「そうする?」
「それでその前にね」
 前に出ようとした愛実に聖花は少し考えてからこう提案した。
「図書館に入ってね」
「あっ、また調べるのね」
「ええ。日下部さんの時みたいに」
 本当にその時の様にだというのだ。
「そうしよう」
「うん、じゃあね」
 二人は今回もまずは図書館で調べることにした。そうして昼食の後で高等部の総合図書館、最も大きいそこに入って調べた。そしてだった。
 愛実が学校の歴史を調べていてこう聖花に言った。開いているのは校史である。
「ううん。お魚のことは全然載ってないけれど」
「こっちもよ」
 聖花も校史の本を開いているが彼女の方もだった。
「お魚の片目がなくなることはね」
「書いてないわよね。ただの偶然かしら」
「偶然にしては何か」
「ちょっとおかしい感じがするわね」
 愛実は少し考えて述べた。
「それにしては」
「そうでしょ?だからね」
「あれは何かあるわね」
 愛実は校史の本を開いたまま聖花に言った。
「やっぱり」
「でしょ?だったら」
「校史に載ってないけれど怪談としてあるのなら」
 それならばだというのだ。
「日下部さんってそういうの詳しいって言ってたわよね」
「あっ、そうね」
 聖花も愛実のその言葉に応えて頷く。
「そんなこと言ってたわよね」
「じゃああの人に聞いてみる?」
 愛実はあらためて聖花に提案した。
「今夜また学校に入って」
「そうしてみようかしら」
「これが胡瓜とかだとね」
 どうかだというのだ。
「河童になるけれど」
「そうよね。胡瓜だとね」
「この学校なら河童がいても不思議じゃないし」
「妖怪もいるみたいだし」
 日下部が言うにはそうだというのだ。 
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