ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第三十六話 白龍
闇慈は突如現れた白い鎧を纏った者に興味を抱いた。
(何だ?あの鎧は?何だかイッセーのバランス・ブレイカーの時に身に纏っている鎧に似ているような)
「コカビエルごときだが、手傷負わずに退けるその力は非常に興味深いな」
「貴様は一体何者だ?」
闇慈は白い者に尋ねたが変わりにゼノヴィアが答えた。
「・・・[白い龍]『バニシング・ドラゴン』」
「バニシング・ドラゴン?イッセーの[赤い龍]『ウェルシュ・ドラゴン』と何か関係があるのか?ゼノヴィア」
「『赤』と『白』・・・文字通りあの二体の龍は、太古から敵対関係と言われている」
ゼノヴィアは闇慈の質問に答えていたがコカビエルは顔をしかめ舌打ちをした。
「ロンギヌスのひとつ、[白龍皇の光翼]『ディバイン・ディバイディング』。鎧と化していると言う事は、既にその姿はバランス・ブレイカー状態である、[白龍皇の鎧]『ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル』か・・・[赤龍帝の篭手]『ブーステッド・ギア』同様、忌々しい限りだ」
既に禁手状態と聞いた闇慈は敵味方分からないバニシング・ドラゴンに警戒を始め、身構えた。
「赤に惹かれたか。『白い龍』よ。邪魔立ては・・・」
コカビエルが言い切る前にもう闇慈が切り落とした逆の片翼が宙を舞い、鮮血が飛び出た。やったのは闇慈のように思えたがやったのは、白い龍のようだ。
(・・・速い!!『真紅の魔眼』で見ていたのに目で追えるのが精一杯だった。これが・・・バニシング・ドラゴンの力!!)
「まるでカラスの羽だ。薄汚い色をしている。『アザゼル』の羽はもっと薄暗く、常闇の様だったぞ?」
龍が引きちぎったであろう黒い翼を持ちながらコカビエルに向かってそう言う。闇慈は『アザゼル』の名前が出たときは表情を出さなかったが驚愕の心を抱いていた。
(アザゼル!?確か・・・世界神話で登場した堕天使達の中で最強の力を持っていた堕天使だったような)
「き、貴様!俺の翼を!!」
「どうせ堕ちた印だ。地より下の世界へ堕ちた者に羽なんて必要ないだろう?まだ飛ぶつもりなのか?」
「白い龍!!俺に逆らうのか!」
コカビエルは白い龍に怒りを示すと空に光の槍を無数に出現させる。白い龍は特に動じる事もなかったが・・・
「はあっ!!」
それより素早く闇慈がデスサイズ・ヘルでコカビエルの上半身を斬り付け、吹き飛ばした。
「ぐわっ!!」
闇慈はコカビエルを吹き飛ばし、気絶したのを確認すると白い龍と向き合った。
「これは俺の戦いだ。邪魔はしないでくれないか?白い龍」
闇慈は戦っている時の表情を崩さなかったが心の中では白い龍の力の大きさに少しの焦りを感じていた。
「ほう。この力を前にして動じないとはな。そしてその姿・・・死神か?面白い!俺と戦ってみるか?」
それを聞いた闇慈はデスサイズ・ヘルを下げると白い龍と向き合った。
「今はまだ無理だ。今の俺の力じゃ勝てない・・・。セイクリッド・ギアの力もとてつもない力を感じるからな・・・」
「洞察も中々のものだな。褒美として教えてやろう。我がセイクリッド・ギア『白龍皇の光翼』の能力は触れた者の力を十秒毎に半分にさせていく。相手の力は我が糧となる」
「イッセーのブーステッド・ギアは十秒毎に力を『倍増』・・・しかしディバイン・ディバイディングはその逆・・・『半減』か。そしてその力を自分のものにする・・・恐ろしいな、龍たちの力は」
「コカビエルを無理矢理にでも連れて帰るようアザゼルに言われてたんだが・・・お前のお陰で手間が省けた。感謝する、死神よ」
「光栄だな。白龍皇から感謝の言葉が出るなんて思いもしなかった」
「ふっ・・・お前は本当に面白い奴だ。お前と戦える日が楽しみだ」
白龍皇は軽く笑みをこぼしたように闇慈にそう言うとコカビエルを肩に担いだ。
「フリードも回収しなければならないか。聞き出さないといけない事もある。始末はその後か」
白龍皇は倒れているフリードを腕に抱え、光の翼を展開して空へ飛び立とうとしたが・・・
『無視か、白いの』
イッセーの籠手の宝玉の部分が光りだし、声が聞こえる。すると、白龍皇の鎧の宝玉も輝きだした。
『起きていたか、赤いの』
『せっかく出会ったのにこの状況ではな』
『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういう事もある』
『しかし、白いの。以前の様な敵意が伝わってこないが?』
『赤いの、そちらも敵意が段違いに低いじゃないか』
『お互い、戦い以外の興味対象があるという事か』
『そういう事だ。こちらは暫く独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』
『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』
その名前を聞いた闇慈は白龍皇に尋ねた。
「アルビオン・・・それが貴様の名前か?」
「正確には、この鎧に宿る龍の名前だ。・・・お前の名は?」
ここで闇慈は性格を元に戻し、名前を名乗った。
「・・・僕は黒神闇慈。なってまだ日も浅い、未熟の死神です」
「中々良い名だ。また会おう。赤龍帝。そして・・・『黒衣の死神』よ」
そして白龍皇は白き閃光となって飛び立とうとすると、ここでイッセーが声を上げた。
「どういうことだよ!?何者なんだよ!?お前は!?」
その言葉に白龍皇は一言だけ一誠に放った。
「全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ俺の宿敵君」
そう言うと白龍皇は翼を広げ飛び立った。コカビエルが居なくなったことにより彼の魔方陣もなくなったようだ。それを確認した闇慈はセイクリッド・ギアを解除したが今まで感じたことのない疲労に襲われた。
それに基づき闇慈はそのまま仰向けに倒れそうになったが、小猫が倒れてきた闇慈の肩を掴んで優しく地面に寝かせてくれた。
「・・・お疲れ様でした。闇慈先輩」
「小猫ちゃん。怪我はもう大丈夫なの?」
「・・・はい。闇慈先輩が戦ってくれている間に朱乃先輩が治してくれました」
「大事に至らなくて本当に良かったよ」
闇慈は仰向けのまま右腕を上げ、膝を地面につけて心配してくれる小猫の頭を優しく撫でた。
「・・・ん///」
「さてと・・・こうしていたいけど祐斗の元に行かないと・・・。手伝ってくれる?小猫ちゃん」
「・・・勿論です」
闇慈は小猫の手を借りてゆっくり立ち上がると祐斗の元にやってきた。
「木場さん・・・また一緒に部活出来ますよね?」
意識を取り戻したアーシアが心配そうに祐斗に尋ねた。神が居ないことを知ってショックなのは明白だがそれでもアーシアは祐斗の事を心配しているようだ。大丈夫と答えようとした祐斗をリアスが呼んだ。
「祐斗、よく帰ってきてくれたわ。それに禁手だなんて、私も誇れるわよ」
「・・・部長、僕は・・・部員の皆に。何よりも、一度命を救ってくれたあなたを裏切ってしまいました。お詫びする言葉が見つかりません・・・」
そこに闇慈が祐斗に言葉をかける。
「それはこれからゆっくりとその『失敗』と『恩』を返して行けば良いと思うよ?祐斗。部長もそれで帳消しにしてくれますよね?」
「勿論よ。貴方は私の『騎士』。これまでの失敗はこれからに期待するわ、祐斗」
「部長・・・。僕はここに改めて誓います。僕、木場祐斗はリアス・グレモリーの眷属『騎士』として、あなたと仲間達を終生お守りします」
「うふふ。ありがとう。でも、それをイッセーの前で言ってはダメよ?」
見てみると、一誠が祐斗を嫉妬の眼差しで睨んでいた。
「俺だって、『騎士』になって部長を守りたかったんだぞ!でも、お前以外に部長の『騎士』を務まる奴がいないんだよ!責任持って、任務を完遂しろ!」
「うん、分かっているよ。イッセーくん」
祐斗はイッセーに頷いた。それを確認した闇慈は祐斗に右手を差し出した。
「これからもよろしくね?祐斗」
「こちらこそよろしく、闇慈君」
祐斗はその右手をしっかりと自分の右手で掴み、握手をかわした。
「さて」
ブゥゥゥン
突然、リアスの手が紅いオーラに包まれた。それには祐斗も疑問を抱いたようだ。
「あ、あの、何事でしょうか?」
「勝手な事をした罰よ、祐斗。お尻叩き千回ね」
「えっ!?」
「祐斗。覚悟した方が良いよ・・・あれ。僕とイッセーも受けたけど・・・死んだよ」
「あはは・・・なら痛そうだけど僕も罰を受けないとね」
祐斗が尻叩きをされている間、一誠はその様子を見て爆笑していたが、闇慈は痛々しい目でその光景を見ていた。こうしてこの一件はオカルト研究部達と教会の手によって終幕を迎えた。
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