ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第三十五話 死闘
祐斗がフリードを倒してその場にしばらく沈黙が走った。そして祐斗が剣を構え、バルパーと向き合って沈黙を破った。
「バルパー・ガリレイ。覚悟を決めてもらう」
「・・・そうか!分かったぞ!聖と魔、それらをつかさどる存在のバランスが大きく崩れているとするなら説明がつく!つまり、魔王だけでなく神も・・・」
バルパーは聖魔剣の構造について考えを述べた瞬間・・・光の槍がバルパーの腹を貫いた。そして口から血を吐きだすとその場に倒れ付した。
「っ!?」
闇慈は光の槍が飛んで来た方を見ると五対十枚の羽を背中から生やしている堕天使がいた。
(この威圧感と魔力・・・間違いない。こいつが・・・堕天使コカビエル)
「お前は優秀だったよバルパー。だがな、俺はお前がいなくとも最初から一人でやれる」
そして宙に浮かぶコカビエルが嘲笑っていた。
「ハハハハ!カァーーーハッハッハッ!!」
哄笑を上げて地に降り立つ堕天使の幹部コカビエル。
「コカビエル!!」
一誠が怒声を上げる。恐らくイリナを倒したことを根に持っているのだろう。
「来たか・・・赤龍帝。どうした?怒声を上げている割には体が震えているぞ?」
無理も無い話だ。相手は先の大戦から生き残っている堕天使。悪魔になって日も浅い一誠にとっては震えるのも頷ける。そんな中彼はコカビエルに向かって怒声を発したことには敬意を表する所かもしれない。
「お、お前がイリナをやったんだろ!!?」
「あの教会の小娘か?俺に敵対した報いだ。それに力がないやつはああなって当然だ」
『Boost!!』
その事を聞いた一誠はブーステッド・ギアを身に付け、力を倍増させるとコカビエルに向かって『ドラゴン・ショット』を放った。しかしコカビエルは右手だけでそれを意図も簡単に払いのけるように弾き飛ばした。
「こんなものか・・・赤龍帝の力は」
「まだですわ!!雷よ!!」
朱乃が加勢するように天雷をコカビエルに向けて放った。しかし、彼女の雷はコカビエルの黒い翼の羽ばたき一つで消失した
「俺の邪魔をするか、バラキエルの力を宿すもの」
「私をあの者と一緒にするな!」
朱乃はらしくないように激しく反応し、再び雷の砲撃を放ったがすぐに二の舞にされてしまった。
(バラキエルって確か堕天使の名前。その力を宿す・・・まさか朱乃先輩って!?)
「ハハハ!全く愉快な眷属を持っているな?リアス・グレモリーよ!!赤龍帝、禁手に至った聖剣計画の成れ果て、どそしてバラキエルの力を宿す娘!お前も兄に負けず劣らずのゲテモノ好きのようだ!!」
闇慈は仲間をゲテモノ扱いしたコカビエルに苛立ちを覚えた。しかしリアスの怒りは闇慈の数倍はあった。
「兄の・・・我らが魔王への暴言は許さない!!何よりも私の下僕への侮辱は万死に値するわ!!」
「「はぁぁぁッ!!」」
今度はゼノヴィアがデュランダルで、祐斗が聖魔剣で斬りかかるが難なく防がれ拳を入れられ、二人は吹き飛ばされる。
「こんなものか。デュランダル。聖魔剣」
「・・・まだです」
今度は小猫がコカビエルに拳を打ち込もうとしたが羽が刃のように鋭くなると、容赦なく斬り付け、地面に叩き付けた。
「小猫ちゃん!!」
闇慈はすぐに駆け寄り、気を失った小猫の容態を確認したが傷は多く在ったが急所までには達していなかった。
(良かった。急所にまでには至ってないようだ)
「しかし仕えるべき主を亡くしてまで、お前達は神の信者と悪魔はよく戦う」
「・・・どういうこと?」
リアスが怪訝そうな口調で訊く。コカビエルは大笑いしながら話を続けた。
「フハハ、フハハハハハ!そうだったな!お前達下々まで真相は語られていなかった。ついでだ、教えてやるよ。先の三つ巴の戦争で四大魔王だけでなく神も死んだのさ」
「なん・・・ですって・・・」
「戦後残されたのは神を失った天使、魔王全員と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外のほとんどを失った堕天使。疲弊状態どころではなかった。どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができなくなったのだ」
「うそだ・・・うそだ」
真実を突き付けられたゼノヴィアは力が抜けて項垂れる。アーシアもショックを受けたのか気を失い、倒れそうになったがイッセーがギリギリの所で受け止めた。
「アーシア!しっかりしろ!アーシア!」
「俺は戦争を始める!これを機に!!おまえたちの首を土産に!俺だけでもあの時の続きをしてやる!我らが堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも!!フフフッ・・・ハーッハハハハハ!!!」
コカビエルが一人で高笑い、自分の理想を語っていたが闇慈だけはその馬鹿げた理想に溜め息をついた。そしてダークネス・クロスをコカビエルに向かって飛ばしたが硬化された翼で弾き飛ばされた。
「そんな下らない理想を吐かないで貰おうか?耳が穢れる・・・」
「ほう。お前は何者だ?さっきから見ていたが貴様からは異様な力を感じる。そしてその鎌・・・」
コカビエルはデスサイズ・ヘルに興味を示していた。
「それは・・・デスサイズ・ヘルか?」
「ご名答。流石は古から生き残っている堕天使だな」
「フフフッ・・・まさかお前のような小僧が『万死ヲ刻ム』力を有していたとはな・・・だが!!貴様に俺は倒せん!!」
闇慈は翼を具現させ、デスサイズ・ヘルでコカビエルに斬りかかった。コカビエルは両手に光の剣を持ち、翼を硬化して闇慈を迎え撃った。闇慈は魔力を込めたデスサイズ・ヘルで光の剣を叩き斬り、コカビエルの体に一閃を叩き込もうとしたが鋼鉄の羽がそれを許さない。
「くっ・・・(長期戦になれば魔力切れを起こしてこっちが不利になる・・・一発で決めるしかない!!)」
闇慈は『真紅の魔眼』でそれを見切り、距離を取った。しかしコカビエルはそれをチャンスにさっきの剣とは比べ物にならないほどの巨大な光の剣を作り出した。
「消し飛ぶが良い!!」
(あれは流石に不味い!!)
コカビエルは叫びながら闇慈に向かって振り下ろした。闇慈は咄嗟に『憑依・死神』を発動させ、最大限に魔力をデスサイズ・ヘルに注ぎ込み光の剣とぶつけた。そしてデスサイズ・ヘルは剣を切り裂き、霧散させた。そしてそのままコカビエルと鍔迫り合いの状態になった。
「中々やる!!そこにいる出来損ない達よりは出来るようだな」
コカビエルの人を苛む言葉に闇慈は堪忍袋の尾が切れたのか怒声を張り上げた。
「いい加減にしろ!!貴様はそうやって、全ての他人を見下すのか!!」
「強者が弱者を見下して何が悪い?それが冥界の摂理だ!!そして絶対な力を持つ者が指導者に相応しい!!俺にはその資格があるんだよ!!」
「貴様が作ろうとしている世界は永遠に続く『絶望』と『混沌』に満ち溢れた世界だ!!歪んだ力で人々を支配し、作り上げた世界に一体何の価値がある!?寝言を言うなーーー!!!」
闇慈はそう叫ぶとコカビエルに魔力を込めた蹴りを横腹に叩き込み、弾き飛ばした。コカビエルは体勢を立て直し、翼を羽ばたかせたが顔は歪んでいた。恐らくさっきの蹴りが効いているのだろう。
「くっ・・・ならお前はそれ程の力を有しておきながら何故戦う!?」
「俺には守るべきもの守り、そして一方的な力で押さえつけられている者を救うために・・・俺は戦う」
闇慈の戦う理由を聞いたコカビエルは大声で笑いを飛ばした。
「フフフッ・・・ハーハハハハッ!!弱い者を守ってヒーロー気取りのつもりか!?この・・・偽善者が!!」
「偽善者で悪いか!!?貴様のような『命』と『心』を弄ぶような奴になるより遥かにマシだ!!」
コカビエルは光の剣を再び持ち闇慈に斬りかかった。今回はかなりのスピードがある。恐らく魔力で高めているのだろう。しかしこれが仇となった。闇慈はその斬撃を鎌で受けずに体を滑らせるようにかわし、コカビエルの背後を取った。そして勢いを付け過ぎたせいで一瞬の行動が限られてしまい、隙が出来た。この隙を闇慈は見逃さなかった。
「これ以上やると言うのなら俺が貴様に・・・『死』を見せてやる!!」
闇慈はそのままデスサイズ・ヘルでコカビエルの片翼を切り落とした。
「ぐわあああ!!!俺は、俺は、最強の堕天・・・」
「まだ分からないのかーーー!!!」
闇慈はデスサイズ・ヘルの先をコカビエルの背中に突き刺し、そのまま落下の勢いを乗せ、地面に叩きつけた。闇慈は一旦距離を取り、コカビエルから離れた。そして砂塵が晴れると体の至る所から血を流し、這い上がろうとしているコカビエルがいた。
「貴様!貴様!!よくも俺の翼を!!」
「何て汚い色をしているんだ貴様の翼は・・・黒羽のほうがよっぽど綺麗な『黒』だぞ」
そして闇慈は止めを刺そうとコカビエルに近づこうとしたが・・・
「・・・ふふふ。おもしろいな」
第三者らしき声が聞えると凄まじい重圧に襲われた。その場にいる全員がその方を向くと、背中には八枚の翼を羽ばたかせて、白い全身鎧を身に纏っている者がいた。
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