ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第三十四話 人心
闇慈達はケルベロスを倒した後、ゼノヴィアと祐斗とも合流を果たし、校舎の方に向かっていた。イリナはコカビエルにやられたらしく今はイッセーの家で療養しているらしい。そして校舎の生徒昇降口の近くに来ると二つの人影が見えた。その姿を見た祐斗は二人の名前を叫んだ。
「フリード・セルゼン!!バルパー・ガリレイ!!」
「来たか・・・聖剣計画の生き残りよ」
「今度こそ、同志たちの敵を討たせて貰うぞ!!」
祐斗は剣を具現させるとバルパーに向かって飛び出ようとしたが闇慈がそれを咎めた。
「邪魔しないで貰えるかな?闇慈君」
「やるのは構わないけど一つ彼に確認したいことがある。それまで待ってもらえるかな?」
闇慈は真剣な表情で祐斗を見た。祐斗はしばらく黙った後、軽く頷いた。
「ありがとう、祐斗」
闇慈は祐斗に礼を言うとバルパーに向かって丸腰のまま少し前に出た。
「アンジ!!」
リアスは少し驚いたのか闇慈を咎めた。しかし闇慈は油断してはいないようだ・・・ここでバルパーとの会話が始まった。
「どうした?この期に及んで命乞いか?」
「違う。貴様に一つ確認したいことがある・・・」
「ああん?確認なんてしなくて良いんだよ。ここで俺っちに斬られればその疑問もなくなるぜぇ?」
フリードは剣を持つと闇慈に向かって斬りかかろうとしたがバルパーが止めた。
「良いだろう。せめてもの慈悲だ。その疑問が晴れて地獄に落ちるのなら貴様も本望だろう。それで・・・わしに何を問う?」
「・・・貴様がかつて祐斗の仲間達を皆殺しにした『聖剣計画』。この殺しの理由は情報が漏れないためと言っていたが・・・本当は違うんじゃないのか?」
「えっ!?」
「っ!?」
教会関係のゼノヴィアと生き残りの祐斗が驚きの表情と声を上げた。
「ほう・・・何故そう思う?」
「腑に落ちない点がある。聖剣の情報が漏れないようにするのなら『催眠』などの『脳内情報処理』みたいなことも貴様らは容易にでき、無闇殺す必要は無かったはず。まあ貴様みたいな『皆殺しの大司教』と呼ばれている奴はすぐに殺すと思うけどな」
「・・・」
「しかし真の目的は被験者・・・いや。『聖剣使い』の体に存在していた『何か』じゃなかったのか?」
その言葉を聴くと聖剣使いのゼノヴィアがハッと何かに気付いた顔つきになった。
「そうか。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受ける時体に入れられるものは・・・」
闇慈の推測を聞いたバルパーは静かに笑い声を上げた。
「フフフッ。人間の癖に頭がきれるじゃないか。そう。あの計画の真の目的は『聖なる因子を被験者から抽出し、結晶を作り上げる』ことだった。その成果がこれだ」
バルパーは懐から光っている水晶のようなものを取り出した。それを見た祐斗は声を張り上げた。
「同志たちを殺して、聖剣の適性因子だけを取り除いたのか!?」
「そうだ。この球体はその時のものだ。三つほどフリードたちに使ったがね。これは最後の一つだ」
バルパーは結晶をかざしながらそう言っていたが祐斗は特大の殺気を出しながら再び口を開いた。
「・・・バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命を弄んだんだ」
「ふん。それだけ言うのならば、この因子の結晶を貴様にくれてやる。環境が整えば、後で量産出来る段階まで研究はきている。まずはこの町をコカビエルと共に破壊しよう。後は世界の各地で保管されている伝説の聖剣をかき集めようか。そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争を仕掛けてくれる。私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せ付けてやるのだよ」
バルパーは持っていた因子の結晶を放り投げた。祐斗は足元に行き着きついた結晶を拾うと哀しそうに、愛しそうに、懐かしそうに撫でた。そして祐斗の目から涙が流れる。すると結晶が淡く光り始め、徐々に広がっていき、校庭を包み込んだ。地面から光が浮いてきて形を成していく。まるで祐斗を囲うように、光が人の形に形成されていった
「これは・・・一体?」
闇慈が疑問に思っていると朱乃が分かったように口を開いた。
「きっと、この戦場に漂う様々な力が因子の球体から魂を解き放ったのです」
今この場には魔剣、聖剣、悪魔、堕天使、そして死神と言った強力な力が集合している。そして闇慈は形を成した光、あれは、聖剣計画の犠牲となった人達だと理解出来た。
「皆!僕は!僕は!!ずっと、ずっと思っていたんだ。僕が、僕だけが生きていて良いのかって。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きたかった子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごして良いのかって・・・」
霊魂の少年の1人が微笑みながら、祐斗に何かを伝えているようだった。闇慈や一誠達には、何を喋っているか分からない。しかし朱乃は理解することが出来たのか代わりに話してくれた。
「・・・『自分達の事はもういい。キミだけでも生きてくれ』。彼らはそう言っているのです」
霊魂の言葉が伝わったのか、祐斗の目から涙が溢れてくる。そして魂の少年少女達が口をリズミカルに同調させてきた。
「・・・聖歌」
アーシアは何を歌っていたのか分かり、そう呟く。祐斗も涙を溢れさせながら聖歌を口ずさみ出した。少年少女達の魂が青白く輝き、祐斗を中心に眩しくなっていく。本来ならば聖歌を聴けば悪魔は苦しむのだが、祐斗達は一切苦しみを感じていなかった。寧ろ友を、同志を想う温かさを感じた。闇慈も友を思うその心に何時の間にか、涙を流していた。
そして祐斗の周りにいた魂が天に上り、ひとつの大きな光となって祐斗を包み込み、次の瞬間、神々しい光が闇夜を裂いた。恐らく祐斗のセイクリット・ギア『ソード・バース』が『境地』至ったのだろう。
「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り、第二、第三の僕達が生を無視される」
「ふん。研究に犠牲は付き物だと昔から言うではないか。ただそれだけの事だぞ?」
「木場ぁぁぁ!!フリードの野郎とエクスカリバーをぶっ叩けぇぇぇ!」
一誠が祐斗に向かって激励を送る。それにリアスが続ける。
「祐斗!やりなさい!自分で決着をつけるの!エクスカリバーを超えなさい!あなたはこのリアス・グレモリーの眷属なのだから!私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けはしないわ!」
「祐斗くん!信じてますわよ!」
「・・・祐斗先輩!」
「ファイトです!」
朱乃、小猫、アーシアも続け最後に闇慈が声を唸らせる。
「祐斗!!仲間から受け継いだ力・・・彼らの思いで奴らを・・・『過去』を断ち切れ!!そして『未来』を切り開くんだ!!」
闇慈達の言葉に祐斗は頷く。
「ハハハ!何泣いてんだよ?幽霊ちゃん達と戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ。聞くだけで玉のお肌がガサついちゃう!もう嫌、もう限界!てめぇを切り刻んで気分を落ち着かせてもらいますよ!この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんで!!」
祐斗が一歩出て、同志逹の魂に手を添える
「僕は剣になる。部長、仲間達の剣となる!今こそ僕の想いに応えてくれ!ソード・バース!!」
祐斗のセイクリット・ギアと魂が混ざり合い、剣を創っていく。それは魔の力と聖なる力の融合だった。そして神々しい輝きと禍々しいオーラを放ちながら、『騎士』の手元に一本の剣が完成された
「・・・禁手(バランス・ブレイカー)、[双覇の聖魔剣]『ソード・オブ・ビトレイヤー』。聖と魔を有する剣の力、その身で受け止めるといい」
祐斗は『騎士』特有のスピードで走り出し、斬撃を放ったがその斬撃をフリードは受け止める。しかしエクスカリバーを覆うオーラは聖魔剣によってかき消された。
「ゲッ!本家本元の聖剣を凌駕すんのか!?その駄剣が!?」
「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。・・・でも、そのエクスカリバーでは、僕と同志逹の想いは絶てない!」
「チィ!伸びろォォォォォ!」
フリードは舌打ちをして後方に下がるとエクスカリバーを無軌道にうねらせる。これは四本のエクスカリバー・・・イリナから奪った[擬態の聖剣]『エクスカリバー・ミミック』、コカビエルが盗んだ[天閃の聖剣]『エクスカリバー・ラピッドリィ』、[夢幻の聖剣]『エクスカリバー・ナイトメア』、『透明の聖剣』[エクスカリバー・トランスペアレンシー]を融合させた聖剣らしくそれぞれの能力を使用する事が出来るようだった。今フリードが使っているのは『擬態の聖剣』の能力更に先端から枝分かれし、神速で降り注いでいるため『天閃の聖剣』の能力もプラスしているのだろう。しかし祐斗は四方八方から迫ってくる突きを全て防ぐ。
「なんでさ!なんで当たらねぇぇぇぇぇぇぇッ!無敵の聖剣様なんだろぉぉ!?昔から最強伝説を語り継がれてきたじゃないのかよぉぉぉぉ!なら!こいつも追加でいってみようかねぇぇっ!」
聖剣の先端が消えた。恐らく『透明の聖剣』の能力も付与してきたようだ。しかし祐斗は焦ることなく透明の斬撃をいなした。ここでゼノヴィアが横やりをフリードに当てて吹き飛ばすと、左手に聖剣を持ち、右手を宙に広げた。
「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」
空間が歪みだし、その中心にゼノヴィアが手を入れる。そして、次元の狭間から一本の剣を引きずり出した。
「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」
「デュランダル・・・だって!?」
闇慈はその名前に驚きを隠せないようだった。デュランダルとはエクスカリバーに並ぶほど有名な伝説の聖剣。斬れ味だけなら最強と言われていた。
「貴様!エクスカリバーの使い手ではなかったのか!?」
驚きを隠せないのは闇慈だけでなくバルパーもだった。
「残念。私は元々聖剣デュランダルの使い手だ。エクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない」
「バカな!私の研究ではデュランダルを扱える領域まで達してはいないぞ!?」
「それはそうだろう。ヴァチカンでも、人工的なデュランダル使いは創れていない。イリナや他の奴らと違って、私は天然だ。そしてデュランダルは想像を遥かに超える暴君でね。触れた物質を全て斬り刻む。使用者の言う事もロクに聞かないから、異空間へ閉じ込めておかないと危険極まりない聖剣だ」
「そんなのアリですかぁぁぁ!?ここに来てまさかのチョー展開!クソッタレのクソビッチが!そんな設定いらねぇんだよォォォォ!」
フリードが殺気をゼノヴィアに向け、枝分かれした透明の剣を放つ。
ガギィィィィン!
ゼノヴィアの一撃で、透明となっていたエクスカリバーが砕かれた。
「やはり、所詮は折れた聖剣。デュランダル相手にもならない」
「ところがぎっちょん!!」
「なに!?」
しかしもう一つの斬撃がゼノヴィアの背後に迫っていた。間に合わないと判断したゼノヴィアは防ぐことにしたが・・・
バキン!!
届くことは無かった。今の斬撃を切り裂いたのはセイクリット・ギアを発動させマントを身に纏い、デスサイズ・ヘルを手に取っていた闇慈だった。
「油断したらやられるぞ?ゼノヴィア」
「す、すまない。助かった」
「何でぇぇぇ!?何でそんな鎌ちゃんが俺っちのエクスカリバーを叩ききれんの!?」
「今になってもまだ気付かないのか?これはただの鎌じゃない。ロンギヌス……『デスサイズ・ヘル』だ。そんな偽りの聖剣に『死』を導く鎌が遅れる訳がないだろう」
「マジかよマジかよマジですかよ!伝説のエクスカリバーちゃんが木っ端微塵の四散霧散ッ!?これは酷い!かぁーっ!折れた物を再利用しようなんて思うのがいけなかったのでしょうか!?」
フリードの疑問に闇慈が答えた。恐らく輪廻落ちる土産として教えているのだろう。
「貴様の敗北は自分自身の未熟さと・・・」
殺気の弱まったフリードに祐斗が一気に詰め寄る。祐斗の聖魔剣はエクスカリバーを砕き・・・
「見ていてくれたかい?僕らの力は、エクスカリバーを超えたよ」
「人の『心』を理解できないその傲慢さだ!!」
砕いた勢いでフリードを斬り払った。
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