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髑髏天使

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第十七話 棺桶その九


「それでも甘い柿も普通に食うぞ」
「そうだな。どちらかというとな」
「やっぱりそっちの方が好きなのじゃよ」
 結局のところ猿も甘いものが好きだということであろう。
「それと同じじゃよ。妖怪達ものう」
「美味いものが好きか」
「甘いものもな」
「そういうことか。しかし」
 ここで牧村は羊羹をさらに食べながらまた述べてきた。
「この羊羹だが」
「美味いじゃろ」
「思った以上にな」
 ここでその羊羹を見た。
「美味いな」
「そうじゃろ。じゃからスーパーの羊羹もまたいいのじゃよ」
 顔を綻ばせてこのことをまた言うのだった。
「山月堂のもいいのじゃがな」
「あそこは品のある味だな」
「老舗じゃしな」
 老舗の和菓子屋には独特の意識がある。それを店の味に出すものだ。
「それは絶対に出るものじゃしな」
「だからか。その品が出るのか」
「あれで店の親父はざっくばらんじゃがな」
 それは店の人間の人柄に関係ないということだった。
「ケーキもやっておるしのう」
「ケーキもだったな。洋菓子も全体的にやっていたな」
「うむ。カラオケ屋にも出しておるぞ」
「スタープラチナだったな」
 牧村はこのことを話した。
「確かな」
「スタープラチナ!?」
 博士はそう言われても首を傾げるだけであった。
「何じゃそれは。変わった名前じゃのう」
「だからそのカラオケ屋の名前だ」
 牧村はそれだと言うのだった。
「山月堂がケーキを出しているカラオケショップだ」
「そこだったのか」
「店が何処かは知らなかったのか」
「わしはカラオケは行かんからのう」
 ここでは首を傾げるのではなく捻る博士だった。
「そこまではわからんかった」
「わからなかったか。それは」
「ああ、僕達はわかったよ」
「ちゃんとね」
 しかしここで妖怪達はいつもの陽気さで牧村と博士に話してきた。
「だってあのお店よく行くしね」
「そうそう」
「昨日も行ったしね」
 こう話す彼等だった。
「今日も行く?」
「そうしようか」
「妖怪がカラオケ屋に行くのか」
 牧村は彼等の言葉を聞きながら博士にまた問うてきた。
「というかばれないのか」
「これが案外ばれないのじゃよ」
 しかし博士は明るい声で彼に答えるのだった。
「普通にラーメン屋とか居酒屋とかに行ってもな。ばれないのじゃよ」
「化けているのか?」
 牧村はまずはそれは彼等が化けているからではと考えた。
「だからか?」
「うん、化けるよ」
「当然それはね」
 そして妖怪達の方もそうだと答えるのだった。
「このまま行ったら流石にやばいからね」
「そこはちゃんとしてるよ、僕達も」
「そうか。やはりな」
「いや、スタープラチナってさ」
 そしてそのうえでスタープラチナの話をはじめるのだった。
「いいよね、雰囲気が明るくて」
「お店の女の子も可愛いしね」
「あの娘だな」
 牧村は彼女のことも知っているようである。彼等の話からふと気付いたようにして述べるのがその証だった。 
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