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髑髏天使

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第十七話 棺桶その十


「明日夢ちゃんだったかな、確か」
「あれっ、名前も知ってるんだ」
「あの小柄でショートヘアの娘だけれど」
「あの店をやっている家の娘さんだ」
 やはり知っていた。それも結構だ。
「公立に通っている女の子だな。今は何年だったかな」
「詳しいねえ。っていうか女の子にも興味あったんだ」
「いつも仏頂面だったからてっきりそんなのには一切興味がないと思ってたのに」
「いやいや、これで結構のう」
 博士は今度は玄米茶を飲みながら妖怪達に述べていた。
「もてるようじゃ」
「もてるの!?」
「本当に!?」
「うむ、もてるのじゃよ」
 楽しそうに笑って彼等に話すのだった。
「彼女もおるしのう」
「意外!?っていうか」
「物好きな人もいるもんだね」
「そうだよね」
「そこまで言うか」
 牧村も今の妖怪達の言葉には少し言いたそうになる。
「俺に彼女がいることがそこまで不思議か」
「不思議だから言うんだよ」
「ねえ」
 これが妖怪達の反論だった。
「牧村さんに彼女なんて」
「っていうか人付き合いできたんだ」
「また随分と言ってくれるな」
 流石の牧村もいい加減口を尖らせてきていた。
「俺に彼女がいると聞いただけで」
「で、誰なのそれって」
「その変わった人は」
「これがのう。抜群に可愛い娘なのじゃよ」
 博士がここでまた笑って話すのだった。
「小柄で目が垂れていて色が白くてのう」
「ふうん、そうなんだ」
「可愛いんだ」
「そこいらのアイドルよりも余程上じゃな」
 博士も博士で若奈を絶賛していた。
「声もいいしのう。しかし一番いいのはじゃ」
「何なの?」
「それで何が一番いいの?」
「性格じゃよ」
 それが一番いいと言うのだった。これは若奈にとっては最大の褒め言葉であった。
「性格美人じゃな。あそこまでの美人はおらんぞ」
「ああ、だからなんだ」
「だからこんな人と付き合えるんだ」
「今度はこんな人か」
 子泣き爺と塗り壁の言葉にまたむっとした声になる。
「俺も随分と言われるな」
「どんな奇人変人かって思ったけれど仏様だったんだ」
「成程ね」
「博士、いいか」
 牧村は羊羹を食べ終えてそのうえで机の上のお茶を取りそれをすすりながら彼に声をかけてきた。
「ここで髑髏天使になってもな」
「魔物はおらんぞ」
「少し頭にきた」
 実際に立腹した声になっていた。
「一度斬っておいていいか」
「髑髏天使は魔物を倒す存在じゃよ」
 博士はわかってはいたがそれでもあえて言うのだった。
「魔物をのう。妖怪ではないぞ」
「いい加減頭にきた」
 表情は動いてはいない。しかしそれが余計に彼の怒りを見せていた。
「斬らないと気が済まない」
「おいおい、そりゃないよ」
「ほんの軽いジョークなのに」
「そうそう」
 妖怪達は自分達が斬られると言われて血相を変えて言うのだった。
「大体さ、こんなことで怒るなんて大人気ないよ」
「妖怪達の軽いジョークじゃない」
「ねえ」
「そうだよ、本当に」
「人間の世界にはある言葉がある」
 牧村は相変わらずにこりともしていない。 
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