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髑髏天使

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第五十八話 嘲笑その三


「その者達を始末してくる」
「そして我等は」
「それと共に目覚めるのだな」
「そうなる。力は既に蓄えているな」
「充分だけ」
「目覚め。そして」
 それからもあるのだとだ。声達は話していく。
「全てを混沌に覆うだけのものはだ」
「既にある」
 こう話していく声達だった。そうしてだ。
 男は出る。戦いにだ。
 戦いに向かうのだった。そして髑髏天使達の前に来た。
 その彼等にだ。男は言うのであった。
「ではだ」
「はじめるというのだな」
「いや、はじまるのだ」
 男は髑髏天使の言葉に対して述べた。
「これからだ。はじまるのだ」
「はじまる。混沌の世界がか」
「混沌がこの世の全てを覆うのだ」
 そうなると話す男だった。
「そうなるのだ」
「言うものだな。混沌がすべてを覆うか」
「覆う。そして貴様等はだ」
「貴様の前に敗れるのか」
「私は混沌の原初の中で生まれた」
 男は話していく。己のその生まれのことをだ。
「混沌そのものなのだ。しかしだ」
「貴様には知性があるな」
「そうだね」
 死神の身体からだ。死神と目玉の声がした。
「それは今までのやり取りでわかる」
「そこが他の混沌の神々とは違うね」
「混沌とは何か」
 男はそれを話していく。
「原初の中で蠢くものなのだ」
「だからこそ知性といったものはない」
「けれど君はあるね」
「これは私だけにあるものなのだ」
 男の話は続く。
「混沌の者達の中ではだ。私だけにあるものだ」
「そして感情もあるな」
「その通りだ。喜怒哀楽のうち怒りと哀しみは知らない」
「そうした感情はか」
「そうだ。知らない」
 このことを話していく。男に感情があるがそれでもだ。備わっていない感情もあるというのだ。そこがやはり混沌の勢力の者だった。
「だが喜びや楽しみは知っている」
「つまり嘲笑だな」
「私は常に嘲笑する者」
 そうだというのだ。
「それが私なのだ」
「顔には出ていないね」
 目玉がそれを指摘した。
「君はいつも無表情だからね」
「否定はしない」
 まさにそうだと話す男だった。
「顔には出さない。しかし感情ではだ」
「嘲笑しているね」
「それが私だ。私はナイアーラトホテップ」
 己の名前もここで話す。
「嘲笑する者なのだ」
「ではその嘲笑はここで終わりだ」
 髑髏天使がその彼に言った。
「この場でだ」
「私が滅びるからだというのだな」
「その通りだ。貴様は滅びる」
 髑髏天使はだ。男を見据えて告げるのである。
 その間だ。彼の全身から凄まじい気が放たれている。それは混沌を消し去らんばかりのものだ。それだけの気を放ちながらだった。
「確実にだ」
「そう言うか。ではだ」
「戦うな」
「これまで見せなかったものを見せよう」
 男は髑髏天使達に対して静かに言ってみせた。 
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