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髑髏天使

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第五十八話 嘲笑その四


「私の真の姿をだ」
「盲目のスフィンクスですか」 
 百目が言った。
「その姿をですね」
「知っていたか」
「貴方は。これまで色々と蠢いてこられてましたから」
「それで知っているというのだな」
「その通りです。さて、その真のお姿ですが」
 百目の言葉が続く。
「見せてもらいましょう」
「私の姿か」
「はい、それをです」
 百目はこう男に言うのである。
「見せてもらいたいのですが」
「そうだな。見せはする」
 こう返す男だった。
「しかしだ」
「しかし?」
「しかしっていうと?」
 百目だけでなくクマゾッツも言葉を返した。
「何かあるのでしょうか」
「その前には」
「話がある」
 これがだ。男の言葉だった。
「面白い話がだ。ある」
「へえ、面白いな」
 狼男がその言葉に応えて言うのだった。
「俺は面白い話は好きなんだよ」
「そう言うのだな」
「そうさ」
 狼男は男に言葉を返した。
「その通りさ。俺は聞かせてもらいたいな」
「そうだな。混沌の話ならな」
「興味があるな」
「ここは是非な」
「聞かせてもらいたいな」
 こう返す魔神達だった。
「どういった話なのか」
「混沌の話か」
「それか」
「その通りだ。混沌とはだ」
 男は魔神達の言葉を受けてだった。そのうえでだ。
 彼はゆっくりと口を開いてだ。言うのであった。
「何だと思うか」
「何も形がない」
 髑髏天使が男の言葉に返した。
「そういうものだな」
「それが混沌だと思うか」
「俺はそう見ている」
 こう返す髑髏天使だった。
「混沌とはな」
「そうだな。確かにな」
「その通りというのだな」
「如何にも」
 男の言葉は変わらない。その通りだというのだ。
 しかしだ。ここでだった。男はこうも言うのだった。
「しかしだ」
「しかしか」
「それだけではない」
 形がないだけではないというのだ。
 こう話してだ。そのうえでの言葉だった。
「混沌には心もない」
「感情もか」
「そういったものはない」
 そうだというのだ。
「そして善悪もだ」
「それもないか」
「そうだ。全てない」
 それがだ。何かというとだった。
「それが混沌なのだ」
「そこには何もない」
「それが混沌」
「無だというのかしら」
「いや、無ではない」
 それでもないというのだ。 
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