SAO─戦士達の物語
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GGO編
百四話 閃く青光、撃ち抜く巨銃
前書き
はい!どうもですw
さて、今回は……まぁ、過程回ですね。
では、どうぞ!
「で……!?先ずはどうするの!!?」
「そうだ、なっと!先ずは死銃ってのが誰なのか特定しねえ事には何とも……にゃろ!」
リョウの言葉を掻き消そうとするかのように響く連続した銃声に、彼は答えるが如くついさっき拾い直したXM29を隣の小屋に向けてぶっ放す。
あの後すぐに、リョウとアイリが建物から出る瞬間に、音を聞きつけたのだろうプレイヤーに攻撃され慌てて建物の中に戻り……今に至る。
ガガガガガ!とフルオートの銃声が響き、顔を出していたクマ髭のオッサン面の男が慌てたように顔を伏せる。と、同時に、窓枠に弾丸が着弾し、木片が飛び散る。断続的な発射に切り替え、反動制御をしつつリョウはアイリに向けて怒鳴る。
「次のスキャンまであとどんくらいだ!?」
「えっと……」
隣で影に隠れたアイリが、手首の電子表示時計を確認する気配。
「あと五分!」
聞いて、リョウが少し頭を下げつつ舌打ちをする。と同時に窓の向こうから弾丸。敵がリロードを終えたのだ。あちらの武装はどうやら軽機関銃らしく、火力では適わない。今リョウが居る場所の壁の向こう側に二本並んだドラム缶が無ければ、今ごろは木の壁如きはぶち抜かれているだろう。
しかしかといってM2に今持ち替えるにはあれは取り回しが悪過ぎるし、ゴタゴタ動いている間に頭が出たりすれば間違いなく殺られる。
と、それはともかく……
「あんま時間ねぇな……!」
出来れば次のサテライトスキャンは落ち着いて確認したい。しかしこうなると、次は諦めるかあるいは……
「……アイリ」
「うん。分かってる」
そう言いながら、アイリは腰に付けていた円柱状の物体をくるりと一回転させると右手に収め、スイッチを入れる。ブゥンと電子音がすると同時に、蒼く細長い光の剣が現れる。
あるいは……さっさと此奴を片づけるか。
「援護お願い!」
蒼い光に照らされた彼女の顔が真剣身を帯びると、傍らに出現していた彼女のM8が此方に向かって床を滑る。
「あいよ!」
ニヤリと笑ってそう答えると、半分使い切ったXMの弾倉を満タンの物と入れ替え、ついでにモードを炸裂弾に切り替える。
「20㎜で牽制して、壁ごと崩してやる!金のかかる援護なんだから、さっさと斬っちまえ!!」
「うんっ!」
言うが早いが、アイリは先程出ようとした時に開きっぱなしにしていたドアの横に付く。
あちらの機関銃の射撃が……途切れた!
「オラよっ!」
ボンっ!と音を立てて、リョウは炸裂弾を銃身だけを出し、ブラインドショット。
「うわっ!?」
爆発と共に反撃仕掛けたのだろう相手の驚く声が聞こえたのを確認して、リョウは体を出すと、更に三発を小屋に向かってぶち込む。
次々に爆発が起き、外壁が吹き飛ぶと同時に一発は窓の奥で爆発を起こすが、はたして撃破出来ているかは分からない。と、弾丸を通常弾に切り替え、再びフルオートで射撃。相手がまだ生きていても顔を出せぬように牽制する。そこに……
「ふっ!」
アイリが低い姿勢で飛び出した。光剣を携えたまま、凄まじいスピードで相手の機関銃使いが居るであろう小屋に突っ込んでいく。それに気付いたのか、どうやらまだ生きていたらしい機関銃使いが一瞬そちらに顔を向けようと機関銃の先を出した……が、
「おっと!」
リョウがそこに、弾切れになったXMを投げて持ったM8の弾丸をぶち込み、動きを封じる。
援護を受けたアイリはそのまま一気に小屋まで距離を詰め、壊れた外壁から中へ飛び込む。
と、驚愕の表情で此方を見ている男と目が有った。
「ちょ、ま……」
そんな言葉を聞き入れるはずも無く。
「バラッけちゃえええぇぇぇっ!!!」
アイリは叫びながら、蒼いブレードを一閃した。
────
「それで……誰が死銃とかって目星は付いてるの?」
「あぁ……」
あの後全速力で移動し、取りあえず集落の端の小屋に飛び込んでスキャン用の端末を取り出したリョウに、アイリが始めに掛けた言葉はそれだった。リョウは少し唸った後答えた。
「一応確実でなくて良いならな……昨日俺が家で全力で調べた限りでは……今回のBoB参加者四十人の内、俺と協力者一人を覗いた場合、BoB初参加のプレイヤーは三人。内、ネットで知れた実績が薄いのは二人」
呟くように言ったリョウの顔を覗きこむようにアイリは頷く。
「ふむふむ……誰?」
「ペイルライダー、銃士X、Sterben。で、後者はペイルライダー除いた二人。この中の誰かが多分死銃。内可能性が高いのは後者二人だ」
「……その根拠は?」
小首を傾げながら聞いたアイリにリョウは鼻を鳴らす。
「簡単に言うと、ほぼ間違いなく死銃はこれまで自分の本当のアバター名を隠してきた筈だから」
これは昨日夜にキリトと話し合ってほぼ確実だと確信している事の一つだった。
先ず、死銃が自身のアバター名を本当に“死銃”にしている可能性は殆ど無い。出来るならそうしたかったかもしれないが、もし彼がこれまでの二件の銃撃事件を初めから起こしてからBoBに参加するつもりだったとすると、それをしてしまった場合SPAMメール……俗に言う所の嫌がらせメールが大量に送り付けられたり、予選トーナメントでトラブルになるなどといった危険性が充分に考えられる。
かと言って、なら本当のアバター名が早々に流布してしまうとなると、犯人たる死銃が自身に対して作り出したかったであろう、“謎の暗殺者”的なイメージが薄れてしまう。
「……つまり、可能性的にはペイルライダーもほぼ除外してOKな訳だ」
ペイルライダーは最近名を上げてきた期待のルーキーとして、一部の掲示板等で騒がれていた。
死を運ぶ暗殺者が、そんなイメージを自身に望んだりはしない筈だ。
「てことは……私達が追うのは、銃士Xか、Sterben(スティーブン)……って事?」
訪ねたアイリに、リョウは更に少し考えると言った。
「もっと言うなら……一番可能性が高い奴は一人」
「えっ……!?どっち!?」
食いつくように聞いたアイリに、リョウは静かに返す。
「Sterben」
「理由は……?」
「名前が怪しい」
リョウの言葉に、アイリが再び首を傾げる。
「名前……ってこれ、Steven(スティーブン)のスペルを間違えただけじゃ……」
その言葉に、リョウは即座に首を横に振った。
「いんや。俺の記憶が正しかったら違う。元々そりゃ英語じゃねぇんだよ」
「え?じゃあ……」
「ドイツ語だ。“死”って意味のな……普通ドイツ語で死はtod(トート)なんだが……例えば医療現場とかだと、こっちの方がよく使われる単語らしいな……意味はわかんだろ」
「う、うん……」
コクリとアイリが小さく頷くと、リョウ一つ息を付いて続ける。
「スペルも同じ……先ず間違い無く意図的だろうな。普段ならどっかの厨二病で済ますとこだが……ちっとタイミングがなぁ……」
「…………」
黙り込んだアイリに、リョウはニヤリと笑う。
「っま、今はとりあえず確認に集中だ。ほれくるぞ」
「え、あ……!」
そんな事を話している間に、いつの間にか時間が立っていたようだった。
時刻が八時四十五分になったことで、アイリとリョウ、それぞれが持つ島の地図の端末に、無数の白と灰色の光点が出現する。
「俺は山からこの辺りまで、お前はそれ以外チェック頼む!」
「OK!」
即座に端末に表示されている光点を叩き、プレイヤー達の名前を次々に表示させていく。
『ん、シノンとキリト、一緒にいやがる……彼奴またフラグとかねぇだろうな……』
リョウがそんな事を考えていると、やがて、アイリが声を上げた。
「……いた!」
「おっ!誰だ?」
「銃士X!草原地帯の都市エリア近く!」
「おっし、その調子で他の二人も見つけっぞ……」
リョウがそう言うと同時に、二人は画面に目を戻す。だが……
「居ない……」
「どういうこった……」
しかし幾ら叩いても、残る二人が見つからない……絶対的におかしかった。それはそうだ。何故ならこの端末に写し出されるスキャン結果は、生存者脱落者の両方が表示される。仮に脱落したとしてもその人物の位置は画面上にはグレーの光点となって表示されるし、名前も確認出来る筈。つまり、仮に生きていようが脱落していようが、名前が“無い”と言うことは有り得ないのである。
が……
「っ!アイリ、出てる点は幾つだ!?」
「え?わわ……」
とは言っても光点は既に点滅を始めている。空を衛星が飛び去ろうとしているためでもう直ぐ表示が消える合図だ。もう一、二秒で全ての表示が消える。時間がない……!
「……!」
瞬間的に、リョウは脳が澄んだような感覚を覚える、そのまま一気に、リョウは画面に“集中”する……
『10……20……30……』
数え終えた瞬間に、光点が全て消えた。
「あー……ごめんリョウ、わかんなかった……」
「いんや、問題ねえ。こっちで全部数えた」
「えぇっ!?」
アイリが驚いたように目を見開く。各場所に散った点滅する光点を、あの数秒で全て数えたとすると……
「つっても、数えられたのが運が良かったって言えんのかはわかんねえけどな」
「え……」
歯噛みしながら言ったリョウをアイリは見返す。
「どういう……」
「……とりあえず、移動しようや。俺とお前、すぐ近くに居たんだ、戦闘してっと思われて、おこぼれ狙いに撃たれちゃまためんどくせえ事にならぁ」
「あ、うん……」
そう言うと、歩き出したリョウに続いて、アイリも踏み出した。
――――
「さて、結論から言うとな、光点は38個しか無かった」
「えっ……」
田園地帯の村から離れ、市街地帯へと続く谷間の坂を塞ぐように建つ如何にも町外れと言った様子で建つ五階立てビルの内部に隠れたリョウとアイリの内、先に話し出したのはリョウだった。
アイリが呆然とした様子で呟くように言った。
「それって……」
「……まず確認しときてえんだけどよ、知られてる限り、衛星からのスキャンを逃れられる場所は、砂岩地帯の洞窟と、島ん中幾つかを流れてる河ん中だけ。合ってるか?」
「う、うん。洞窟は確認したこと無いけど、河……水の中って説は間違いないよ」
アイリの答えに、リョウが首を傾げる。
「根拠は?」
と、アイリは何故か恥ずかしげにえへへ……と笑うと、
「初めてその方法使ったの、私だから」
「なーる……」
それならば間違い在るまい。話しを戻す。
「そんじゃどっかの変人をともかくとして、それらの隠れ場所に居た場合、自分の端末にも相手は表示されねえわけだ。わざわざんな事する奴……普通は居ねえわな?」
リョウがおどけたようにニヤリと笑うと、アイリは拗ねたように口を尖らせる。
「変人は酷いと思うのです……でも、うん。普通はそんな事しないと思うよ。相手の位置が知れる貴重なチャンスな訳だし……」
「だとすると……」
再び神妙な顔になったリョウは、アイリの顔を正面から見ると、はっきりとした声で言った。
「この二人は、ログアウトしてんのかもしれねぇな……」
「ログアウトって……」
アイリが緊張した面持ちで問い返す。と言っても、BoBの最中は、異常を感知したアミュスフィアが起こす強制回線切断以外の方法でログアウトする事は出来ないので、リョウの言う意味は決まっているのだが……
「この世界から……もしかすると、現実世界からもな」
「っ────……!」
考えるまでも無く言いたいことは分かる。理解した瞬間、息をのむかのようにアイリの顔が引きつり、唇を噛む。間に合わなかった……!?
「……なら、死銃は……銃士X……?」
傷心したように俯いたアイリはしかし、首を数回振ると、ゆっくりとリョウに聞く。が……
「ん~……俺の個人的な予想じゃ、それはねぇんだよな……」
「え……?」
リョウは腕を組むと、一瞬なにか唸るように言って、頭を掻いた。
「さっき俺ら、狙撃されたろ?俺、あれが死銃だと思っててよ……」
「な、なんで……」
「んー、信じてもらえるか分かんねぇんだけど……」
リョウは更に頭をがりがりと強く掻く。
「VR世界に、殺気が有るって言って、お前信じるか?」
「うん。信じる」
「だよなぁ。普通信じ……んのかよオイ」
別にノリつっこみがしたかった訳でもないのだが、半ばそれに近い流れになってしまった。
リョウの中ば呆れたような問いに、アイリはコクリと頷く。
「お前、普通もうちょい疑うもんじゃ……」
「そ、それは……疑う理由ないし……それで、じゃあ感じたの?殺気……」
明らかに話しを逸らされた気がしたリョウだったが、敢えて触れる事無く話を進める。
「まぁ、な。一応お前に斬りかかられた時も来たけど……それよか強烈な奴をな……」
「ふ~ん……」
納得したような、していないような「ふ~ん」を言いながら、しかし、アイリはどこか不満げた。
「って事は私はその殺気の主より弱い事になるのかな?」
「あ、あぁ?なんだよ行き成り……つかそれ別に今関係ねぇだろ」
腕を組んだリョウが戸惑ったように言うと、アイリは少し口をとがらせる。
「そうだけどさ…………それで、って事はその時あそこに死銃が居たってこと?」
「だと思うんだが……だとすっと、銃士Xの位置と合わねぇんだよな……」
「え?あ、そっか、七分ちょっとであんな所まで行ける訳ないもんね」
納得したように言ったアイリに、リョウは腕を組んだまま頷く。
「そう言う事だ。まぁ、論理的にって点で言って、確立高い順にさっきのスキャンから分かる可能性を纏めっと……」
1、死銃は銃士X。
2、リョウとキリトの予想が外れており、実は死銃は全く別の誰か。
3、死銃が殺したのは二人では無くまだ一人で、死銃本人は何らかの方法でスキャンから逃れた、ペイルライダーかSterbenのどちらか。
「うーん……」
アイリが唸る。どちらにせよすること自体は決まってくるのだが……
「ま、とりあえず、銃士Xに話し聞いてみねぇ事には動きようがねぇ。一番可能性の高いのが此奴な以上は、どう動くにしても此奴を当たるぞ」
「そうだね……それじゃこのまま……」
言いながら、アイリは外……具体的には、都市部の方を睨む。
「都市地帯超えて、草原地帯に直行だ」
「うん……!」
深く頷いたアイリに、リョウは璃槍と笑った。
────
「……ったく、こんなとこで待ち伏せたぁ、暇なこった」
「スナイパーの基本は待ちだもん。しょうがないよ」
「セオリー押さえてるってか?のわりには素人くせぇな……」
「あはは……」
リョウとアイリは、ビルの一角に背を預けて隠れていた。
というのも、このビルから出た所の先に有る、二つあるビルの片方からスナイパーが此方を狙っているようなのだ。何故わかったか?非常に単純かつ、少し笑える理由である。
スコープの反射光が見えたのだ。
「いくら一対一がメインっつったって、スナイパーが自分の位置ばらすような事したら終わりだろうがよ……」
「いやほら……うーん……」
アイリが相手の(対戦相手だが)フォローをしようとするが……なにも思いつかなかったのか唸る。
さて、このかなり有利とも言える状況なのだが、しかしリョウ達はここから動けずにいた。その理由は、問題が一つある事。
「けど……どうすっかね、こっちに気付いてないかどうかはわかんねぇけど、此処越えねぇと都市地帯にゃ行けねぇし、つっても、あちらさんまでどんくらい有る?」
「うーん、目算だけど……」
アイリが少し考えるように言う。と、結論が出たのかはっきり言いきった。
「1200m」
「だよなぁ……」
そう。遠い。というか完全にあちらの間合いなのである。
「お前、あちらさん射程に収められる武器ある?」
「無理だよ。M8でも900mちょっとで限界……」
消沈したように言うアイリを見て、リョウは苦笑する。
流石にこの見通しの良い場所で300メートルも前進しよう物なら、間違いなくばれるだろう。となると……
「此奴しかねぇか……」
「わ……」
リョウがアイテムストレージを操作し、他と比べると改めて理解できる。凄まじい大きさの銃を取り出す。
「うわ、やっぱすごいね、それ……」
「まぁな。で、一応理論上此奴ならここからでも届く訳で……」
「え……」
さも当然そうにいったリョウに、アイリが唖然としたように呟く。
「って、M2(それ)で狙撃するの!?」
「あ?まぁ、射角はギリギリだけどなぁ……」
「いや其処じゃなくて……!」
あっけらかんとしたリョウとは対照的に、アイリは軽くパニック気味だ。
確かにM2の有効射程距離は2000m以上あると言われているので、理論上ここから狙撃して相手に当てる事は可能だが、しかしこの銃はあくまでも重機関銃である。元々狙撃用に作られてはいないし、確かに歴史上でM2によって2000m級の狙撃を成功させた人物は存在するが、それはあくまでアメリカでも凄腕のスナイパーの話しだ。狙撃のその字も知らない素人にできるとは思えない。
「スコープは?」
「目視で」
「手ぶれは?」
「まぁ、台はあるしな」
「…………」
どう質問しても特にさしたることも無げに答えるリョウに、最早アイリは絶句する。その眼はまるで、哀れな子供を見るようにも見える。
「なんだよその眼は」
「あのね、リョウ。チャレンジすることは悪い事じゃないと思うんだけど……」
「おーい、忠告する前から失敗前提かよ。問題ねぇって。狙撃なんざ狙って、撃って、当てるだけだろ?」
「それシノンに言ったら上半身吹き飛ばされるよ?」
「おぉ、怖えぇ」
言いながら、リョウはとりあえず。と言った様子でM2を立てて、伏射姿勢を取り、がれきを利用して射角を取る。
「え、え!?本当にやるの!?」
「本当にやる」
先程反射光が見えたのはここからかなり離れたビルの五階辺りだ。そこに向けて、リョウは狙いを付けて行く。
「あ、ああぁ!じゃ、じゃあせめて位置特定!これ使って!!」
「お?」
アイリが慌てたように円柱状の白い物を取り出し、リョウの視界を遮る。
「遠距離観察用の望遠鏡!」
「お、ありがてぇや……けど撃つとなると……あ、良いや、アイリちっと頼みがあんだけどよ」
「え?」
アイリが小首をかしげると、リョウは何でも無い事であるかのように言う。
「その望遠鏡、M2の上くらいで固定してくんね?お前が持っててくれりゃ良いからよ」
「えぇ!?」
「ほれ、早くしろ」
「え、あ、う、うん……」
急かされ、アイリは仕方なくM2の上部分にスコープを持っていく。
「っと、そこだと排夾の直撃コース。あーそうそう、そこ。そこで固定な。いくぞ~」
「うー……ゆれる……」
ぎくしゃくした様子で望遠鏡を動かすアイリに指示をだし、リョウは望遠鏡を覗きこむ。視線の先に、膝立ちの姿勢で周囲に獲物が居ないかを探す男の姿が見えた。スコープのカバーは下している。どうやら先程のはなにかの偶然のようだ。
リョウは胸を狙って、M2を微調整。この銃の口径になると、最早頭に当たろうが胸に当たろうが関係なく対象を撃ち抜ける。
『流石に揺れるか……』
アイリが持っているので当たり前なのだが、少々望遠鏡が揺れる。
ちなみに、アイリの方はリョウと距離が近いためびくびくしている。
「うし、大体あちらさんの位置は分かった。サンクス」
「う、うん」
そう言うと、アイリが望遠鏡を外す。現実世界ではまず間違いなく無理だが、この世界だと策敵スキルの恩恵を受けた視力によって、1200m程度の距離なら目視で見える。ついでに、聞き耳スキルを一方向に絞ることで位置を特定し、照準を微調整。
そうして、引き金に指を掛けると、視界に薄緑色の円が現れた。視界の中で、心音に合わせて収縮と膨張を繰り返している。
「吸ぅ……吐ぁ……」
円が収縮する。心臓の鼓動が収まり、消えて行く……
ドンッ
たった一つだけ、大きく、静かな銃声が響き……
「……うっし」
遥か遠くで、蒼いポリゴンが弾けた
………………
「……え!?当てたの!?」
小さくガッツポーズをしたリョウに、数秒遅れてアイリが反応する。そのラグのある反応にリョウは吹き出しつつ。立ちあがりつつM2を担ぐと、ニヤリと笑う。
「だから言ったじゃねぇか。狙撃なんざ、狙って、撃って、当てるだけだってな」
後書き
はい!いかがでしたか!?
うむむ……正直狙撃云々のゲーム設定がいまいちよくわからないので今回のラストは可能なのか分かりません。すみません……
さて、次回は原作どおりに進みますと……ちょっと一休みなシーンです。
ではっ!
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